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林海象「罠 THE TRAP」

横浜ブルク13で、林海象「罠 THE TRAP」 脚本は天願大介との共同。

連続美女殺人事件の現場から私立探偵・濱マイク(永瀬正敏)の指紋が検出された。正義漢溢れる若手刑事(杉本哲太)の助けを得て、警察から逃亡しながら真犯人を探すマイク。孤児院育ちの女(山口智子)とすずらんの香水と花言葉が事件解決の鍵を握る、濱マイクシリーズの完結編はまさかの本格サイコホラーの力作。

在りし日の横浜日劇が、濱マイクの乗る愛車ごとバシッと画になるその風景の中に、道を挟んで並び立つ横浜名画座は今も変わらぬ佇まいのままの現ジャック&ベティで、何度もカメラに抜かれるのは姉妹館を意識してのこと。横浜日劇の劇場内も最後のオチに使われ映画館愛が半端無い!

「我が人生最悪の時」「遥かな時代の階段を」前2作に通底したスタイリッシュな活劇は影を潜め、代わりに手に汗握るようなサスペンスホラーのどんよりしたダウナーな雰囲気がスクリーンに充満する。猟奇的な殺人事件の結末は哀しいものだけど、最後はハッピーエンドだからいいさ!

特筆すべき点として濱マイクに彼女が出来てしまう!これ、永瀬正敏の熱狂的な女性ファンにはショックだったんじゃないかなあ。でもね、ろうあ者だけど養護施設の保母さんでしっかり者で、休日は教会で祈りを捧げボランティア、濱マイクに勿体ないと思うw良く出来た女性なのだ。

濱マイクの恋人を演じるのは夏川結衣。他の作品で思い切って脱ぎました大胆ヌードとか話題になったけど本作では清楚な女子で全編通します。その代わり、山口智子ですよ、これがイイ人そうな顔してとんでも無い悪魔!バブル時代のトレンディドラマの役柄からは想像もつかないw

私的には濱マイクシリーズを観る時の快楽、画面から体感するスタイリッシュなカッコよさが本作に関しては伝わっては来ないのよね。殺人事件の犯人は誰?殺害された時に被害者が赤いワンピースを着せられていたのはなぜ?みたいに観客も映画と一緒に謎解きに参加する趣の世界観。

でもね、濱マイクが孤児で少年院の出だったという業の深さというか、本来背負っていたものを赤裸々に描き出すことでキャラ設定に一層の深みが増すことは間違いない。で、ネタバレしちゃうけど、永瀬正敏が濱マイクと並行して演じる知的障碍者青年のミッキーが影の主役なのだ。

黄金町の映画館の二階に事務所を構え、街の人から愛される探偵濱マイクの裏には、母親に捨てられ孤児院に預けられ分裂症の少女と一体化させられ、凶行に及んだミッキーという歪んだ人格があった。二人のようで実は一人かも知れない。それは本作の持つ最大のテーマだと思われるのだ。

麿赤児演じる不良刑事が相変わらずマイクを目の敵にする一方で、杉本哲太が本作では打って変わっての東大出のエリート刑事として横浜に赴任。恋人を守るため殺人鬼探しするマイクと助け、アリバイの存在から指紋だけでマイクを犯人にするな、と組織に抗う杉本刑事はカッコいい!

ずっとずっとサイコサスペンスの重い雰囲気に包まれた中で、最後の最後に本シリーズ恒例の続編の予告編・・・ってあるの?と思ったら「情報屋星野シリーズ」開幕とかで白タク運転手ナンチャンがノリノリで次の主役は俺だとはっちゃけるけど、マイクが登場しフィルム上映を止めたw

すずらんの花言葉は「しあわせのさいらい」「聖母マリア様のベール」そして「天国への階段」横浜のショップで売られたすずらんが原材料の香水には毒があり、殺人に使われていた。ショップで山口智子が香水を購入したことが分かり、鶴見区の下町の鉄工所で働く智子に捜査が及ぶ。

本作で黄金町など横浜の旧中心街があまりフィーチャーされない中で、なんと私が住んでる鶴見区が何度も登場するじゃないですか!山側じゃなく海側、平安町の鶴見ゴム通り看板ごと映し出されてびっくり!結衣が熱心に通う浅田教会って川崎じゃないかなあ、鶴見のすぐ隣の川崎区だけど。

美女連続殺人の段取りが超怖くて、まず赤いワンピースを無理やり着せられ、鏡の前に立たされ、意識もうろうとして正気じゃないミッキー永瀬を抱きしめ「待たせてごめんね」でも「ママじゃない」殺害されるナイトメアの連続。この凶行にマイクの大事な結衣が巻き込まれてしまう!

冒頭からして前2作と全然違う雰囲気、デスマスクにシルクハット、コートを羽織った不気味な怪人がマイク探偵事務所を訪れ「私を探してごらん」意味深な一言を残して立ち去った。マイクは最愛の妹が大学の推薦入学が決まり、この世の春を謳歌した、次の瞬間に訪れる悪夢。

黒沢あすか、杉本彩、喜多嶋舞(3人とも写真のみ)錚々たる長身美女が次々と拉致られ赤いワンピースを着た死体で発見された。この世の春を謳歌するマイクの大事な人は妹だけじゃない。今日子ちゃんという恋人が出来たのだ。ろうあ障害を持ちながら保母さんとして働く健気な気立ての良い娘。

でもね、今日子ちゃんも長髪の美人で連続殺人犯にはビンゴ。だから心配なマイクは教会に送迎したりこまめに電話したり大忙しだったんだけど、犯人を張りこむ途中で杉本哲太刑事と遭遇。この杉本ってのが強欲で俗物の麿赤児刑事とは正反対の正義漢で凄く頭の回転も速い奴なんだ。

杉本刑事は、マイクのことを見込んで携帯電話を渡し連絡を密に取ろうとする。最初はうざかったマイクだが、一緒に車で深夜の張り込みしてる時に、次なる殺人事件が起こってしまうんだよね。ここから何とマイクの指紋が検出され、指名手配されたマイクはもう、逃げるしかないのだ。

一方、鶴見区の零細鉄工所で働く山口智子は弟?のミッキーと二人暮らししている。風呂で優しくミッキーの身体を洗ってあげる智子の胸元がチラリズムでドキッ(*´Д`)智子は怪しげな注射針を持っていて、表面上はイイ人を繕うがサイコパス。ミッキーとは一心同体の関係なのだ。

ナンチャンの白タクに乗ったマイクは麿刑事に追い詰められ、ここでナンチャン漢気の「一度こんなの、やってみたかったんだ」モデルガンで銃撃戦の構えを見せ「マイク、お前は逃げろ」でも警官に撃たれダウン、マイクも麿刑事に逮捕され、これで一巻の終わりなのかと思われた。

「俺はやっちゃいねえ」絶叫するマイクをぶん殴る杉本刑事。でもこれは麿刑事に見せたブラフで、屋外に出ると着替えを渡して「逃げろ!」マイクは宍戸錠先輩と相談して横浜を代表する探偵たちが大集合。山口智子&ミッキー姉弟、残されたすずらんの香水、その花言葉の謎を解く。

探偵たちは優秀でw智子がショップですずらんの香水を購入していたこと、すずらんには致死量の毒が入っていること、一番大事なのはすずらんの花言葉は幸せを再生することも天国への階段を上ることも出来る、それが何を意味するか?マイクは智子&ミッキーの生い立ちに迫った。

マイクは智子とミッキーが入っていた養護施設で起きた昔の事件、精神分裂病の朋子は養護施設の寮母(馬淵晴子)を車に向けて突き飛ばし車いす生活にして笑っている悪魔、そして寮父には性的いたずらをされたとウソをつき寮父は自殺、智子の凶行の裏には常に弟分のミッキーがいた。

マイクは「そうか!」(そうか、じゃねーよw)これで謎が解けた。智子がミッキーと組んで二人してミッキーを捨てた母親の格好をさせた女性を次々と殺めていたことを。ミッキーは後天性の精神薄弱者でまともに会話も出来ない姿であったが、マイクに顔が瓜二つだったのだ!

そしてマイクの恋人・今日子に危機迫る。智子に拉致られミッキーの目の前で赤いワンピースに着替えさせられ、天の声に導かれるままにミッキーに抱き着き「待たせてごめんね」いつもはここでミッキーが「でも、ママじゃない」呟き智子が毒入りすずらん香水を注射の段取りだった。

マイクが「やめろー!」飛び込んだ目の前で、ミッキーは智子にすずらん毒入り注射し、智子は「なぜなの?」呟きながら息絶えた。智子が犯人だったんだ!マイクの疑いは晴れ、杉本刑事は犯人逮捕の表彰され「あげます」麿刑事に渡し「俺は探偵になります」うーん、カッコイイ!

でもマイクには一つだけ解せないことがあった「ホントの犯人はあいつじゃねーか!」深い深い闇の中、下水道にミッキーを追い詰めるマイク、何度も何度もミッキーの顔を殴りつけ、愛する今日子の見ている前で自分の分身のようなミッキーは、水の底へとブクブク沈んで行った。

ぐったりとして動けない水面の上に浮かぶミッキーの顔と、水面に映るマイクの顔がツーショットになった一瞬にゾクッ!マイクの妹は無事に入試で横浜国大に合格。マイクは今日子と二人っきりで旅行に出かけてもう9ヶ月になる。お兄ちゃん、今頃、どうしているのかしら?

妹がマイク探偵事務所の「外出中」の札をひっくり返し「THE FAKE THE END」の後に、びっくりしたよ、もう!ナンチャンが白タク快走して「情報屋・星野シリーズ」予告編なんだもん。上映中の横浜日劇、フィルムがカランカランとストップして、映写技師の椅子に濱マイクがエアで降臨!

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