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イギリスの大学に、公立の高校生が入学するまで〜IELTSからビザ取得の方法①〜

 この一連の記事が対象にしている読者の方は、今の日本ではかなり限定的なのではないかと思います。大学進学を前提にした9割の高校生は、卒業後は日本の大学に進学するでしょう。(私の高校の同期もそうでした)日本では、いわゆるトップ校とされている進学校でも、卒業後に海外にそのまま進学するという生徒は少ない、という話を実際に教鞭を取られている先生方からもお聞きしています。これは、実際に海外大学に進学を決めた私のような人間にとっても厄介な問題です。というのも、国内で海外に進学する高校生が少ないこともあり、書籍や機関はおろか、ネットにさえも「どうやって入学するのか」という具体的なアプローチがあまり掲載されていません。ネットの海に転がる情報もいくつかはあるのですが、どれも断片的ですし、実際に国内の大学に進むか、あるいは海外に挑むかという瀬戸際で決断を迫られている高校生やその家族からすると判断材料に乏しい、という現状があります。
私も半ば見切り発車の状態で決断をしました。

また、留学にあたっては、昨今の急激な国際情況の変化も考慮に入れねばなりません。外交上の問題で一般的な留学生が苦労することは少ないと思われますが、経済の問題は深刻です。日本人にとってはこの急激な円安傾向は、大きな枷になります。

そういった中で「海外か日本か」という分かれ道を進む僅かな人たちに向けて、この記事を書いています。私は記事の執筆時点ではまだビザは受け取ったものの、海外大に渡航すらしていません。せめて卒業後にでも書いておけば少しは説得力があるかもしれませんが、今このタイミングで書くことには、前述のような現在の劇的な国際情況の変化と個人的な記憶の維持が関係していることをご承知いただければと思います。この記事を通して、海外大に進学するまでのステップを読者の皆さんにイメージしていただければ幸いです。

決断の時

 私が海外大学に進学することを決心したのは、高校三年生の7月初めでした。それまでは国内の国立大学(神戸大)に進学しようかと思っていましたが、まあ色々あって海外に出てみようという決心がつき、決断の翌日には担任の先生に「海外に行こうと思っているのですが……」と相談をしに行ったのを覚えています。
当然のことかもしれませんが、担任の先生の口はあんぐり。「何を言っているのかね君は」とまではいきませんが、それなりに怪訝な顔をされていました。「いや〜でももう決断しちゃったのでねえ、、、」という適当な言い訳をしつつ、その日の昼休みに先生と面談。

「なぜあなたは海外に行こうと思ったのです?」
「前から海外大には興味があって、海外で自分の知性をさらに磨きたいと思ったからです。」
「どこの国に行くの?」
「イギリスです。」
「どうやって?」
「さあ……?」
「お金は?」
「さあ……?」
「何を勉強するの?」
「多分哲学です。」
「そう、、、頑張ってね。」

こんな感じですから、ほぼ面談というか人生相談みたいな状態でした。あとで先生にお聞きしたことですが、先生も急に海外に行くと言い始めた生徒に対して、どうしたらいいかわからなかったとおっしゃっていました。

補足しておけば、私が通学していた高校は普通の都立高校です。およそ都立の中堅校といった立ち位置で、卒業後は生徒の9割が大学進学を選ぶ、学力的には普通(よりちょっと上)の高校。ですから、海外に進学する生徒など稀の稀で、私もかなり特異な決断をしたものだと思います。

担任の先生との面談後、今度は放課後に英語科の先生に報告に行きました。幸い、高校には海外大に留学をしていた優秀な先生がおられたため、話を聞きに行こうと思っていました。

「海外の大学に行ってきます。」
「具体的なプロセスを調べましたか?」
「まだです。先生、海外大というのは、そもそも普通の高校生が行けるようなものなのでしょうか?」
「わかりません。それぞれ国によっても行き方は違うし、熊倉君(筆者)がまだ具体的な方法を調べられていないというのであれば、ハッキリしたことは言えません。」

英語科の先生から現実的なアドバイスを頂戴した私は、早速ネットで「どうやって行くのか」ということを調べ始めました。

しかし、これが困難の始まりでした。

誰も知らない

 休み時間、友達に「俺海外に行くことにしたんだ」などと、まだ行けるかどうかもわかっていないのに大口を叩いて余計なことを言っていた私は、大言壮語を現実にするために、帰りの電車の中でiPhoneを片手に「イギリス 大学 行き方」などという検索ワードで具体的なステップを探り始めました。

検索を始めてから数時間後、一切進展なし。

というのも、ネット上に情報がほとんどなかったのです。
厳密に言えば、「情報がない」のではなく「情報にアクセスできない」という表現が正しい。

まず、イギリスと日本の大学進学のステップは大きく異なります。
現地の学生やバカロレア(海外大への入学資格を取ることができる課程)をとった海外の学生は、(特にトップ校では)A-Levelなどと呼ばれる試験を経て、UCASなどの大学受験出願サイトから応募して入学することが多いのですが、私の場合はバカロレアの存在は知っていても持っているわけでもなく、今まで日本の大学に進学することだけを考えていたため、まず検索の仕方がわかりませんでした。

また、そもそも情報ソースが古いものも多く、2020年より以前の情報は当てにならない(法改正や円安等の影響)こともあり、情報整理は困難を極めました。

それでもあきらめずに検索を続け、その日の夜遅く「どうやら『ファウンデーションコース』なるものに入れば学部に入学できるらしい」ということが判明。

ファウンデーションコースとは、イギリスやオーストラリアなどの一部大学で、バカロレアを持たない留学生が、学部に進学する前に基礎的な英語力・アカデミックスキルを習得するために設けられたコースです。このコースで必要な成績を獲得することで、学部に入学することが可能になります。

私の例では、
イギリスの大学で、9月から9ヶ月のファウンデーションコース受講→翌年に学部進学(3年間)
という計4年(イギリスの大学は基本3年で学部が終わります。)イギリスに滞在することになります。

ですから、まず必要な情報は、

・ファウンデーションコースの入学要件
・4年間の費用総額
・ビザの取得方法

の3点。これらに関して確実な情報を取得することを次に目指しました。

ざっくり結論から言えば、こんな感じ。

ファウンデーションコースの入学要件

・IELTS overall5.5以上(各スコアで4.5以上)
・高校を卒業している
・内申書で3.0以上の成績

費用

1年間でおよそ750万円〜×4=3000万円

ビザの取得方法

  1. 必要書類を準備する。(以下で詳述)

  2. 大学からCASレターをもらう(入学証明書のようなもの)

  3. オンラインでビザの申請をする+申請料を払う

  4. ビザ到着を待つ

So what?

というような感じで、ざっくりしたことはわかったのですが、ここから先がまた大変でした。
だんだんややこしい話に入っていくので、ここら辺で一度筆をおいて、次の記事から具体的な体験を記載していこうと思います。

次回は「奮闘!緊張!初体験のIELTS!」です。


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