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【おいで、おいで】内藤礼 生まれておいで 生きておいで &トークイベント 東京国立博物館

東京国立博物館で内藤礼さんの展示企画がある、と聞いて驚いたのはいつだったか。

しかも本館を使って。

昨年2023年の横尾忠則さんにしても、6年前の2018年デュシャン×日本美術の展示にしても東京国立博物館の発想の柔軟さには驚かされる。

国立西洋美術館は今年初めて現代美術を展示したが、上野周辺の展示施設でジャンルの垣根を超えるムーブメントは、実は東博からの影響もあるかもしれない。
そういえば、国立西洋美術館にも内藤礼さんは出品してましたね。

左、セザンヌ。右、内藤礼
国立西洋美術館での展示風景



さて非常にひそやかな作品を作る内藤礼さん。
昨年夏に豊島で見た作品は…いったいどれくらい滞在したのだろうか?と思う程度にぼーーっと作品をただ眺め時間が経過していた。

豊島美術館。内藤礼さんの作品オンリーの美術館。
敷地内。瀬戸内海を見渡す丘の上にある。


今回は、3箇所を巡る

平成館→本館特別室5→本館1階ラウンジ
という場所に展示されていて、本館の総合文化展の部屋を通過しながら回ることになる。
東博、とにかく広いので、他の展示室を通過する際、その部屋の展示品に気を取られてしまうと内藤さんの展示への集中力が切れる懸念が自分にはあったため、内藤さんの展示をまず見て、その後館内のほかの見学をした。

内藤さんの展覧会会場の撮影は禁止。
一般入場の総合文化展は撮影OKなのでそこを混同しないように。

第1会場 平成館の展示


プロローグ的な。なんかこの時点ではピンとこないのだ。
薄暗い空間に作品があるな、という感じ。
一つ一つ見ていたり、見落としそうになる品をしっかり見つけ出すことが大事だ。配られる作品リストを展示位置表示の番号を見合わせて、
「こんなところにあった」を見つけ出す作業。

第2会場 本館特別室5


ここに入るのは2022年の空也上人展以来。
あのときは部屋全体を暗くし、仏像を並べていたので、この特別室5が元々どんな部屋なのかは知らなかった。

2022年4月



まず入場してその広さ、自然光が降り注ぐ空間に驚いたのだ。

幕も囲いも無く、絨毯も敷かれていない、「素」の状態の特別展示室5を見れるのはとてもレアだ。

そこに陳列される内藤礼さんの作品。
平成館の展示室を見たあとだから飲み込めるような展示。
暗かった土の中から出てきたような感覚。土の中にずっとあった土器が掘り起こされた時ってこういう光だったのかな、と勝手に想像した。
古代と現代が巡り合うようなそんな場面。
私はこの順路立てをそのように解釈をした。

第3会場 本館1階ラウンジ


表面張力のおなじみの作品。こぼれないかいつも気になってしまう。
係の方が、ちょっとしたヒントをくれる時もあり、内藤さんの鑑賞の手助けになる。ぐっと作品を身近に思える。
静かに見るのも良いけれど、ちょっと難解に感じた時、ヘルプを投げてくれる人がいると助かるなぁと。
そしてこの部屋は壁のモザイク画が特徴なのだが(あと内線で使用している現役の黒電話)その壁にも。

これは2022年の写真。このラウンジの特徴である、黒電話が左側に少し写っている。


このような、鑑賞者と作品の小さなやり取りに心がフッと軽くなる。
作者のメッセージというか、鑑賞者の視点というか。見つける力とか。

これは神奈川近代の展示でも感じた。


内藤礼さんのトークイベント

東博のサイトの告知で知った、内藤礼さんのトークイベント。
あまり、メディアに出て話しているイメージがないので、一体どういう方なのかしら?と思って好奇心で応募、聴講してきた。

作品のイメージと作者のイメージに乖離のない、ささやかな、品のある方だった。途中途中でフフフ、っとご自身で笑っていた姿がとっても素敵だった。
面白かった話といえば、展示作品をみているお客さんが好きという発言もあって、なんか「作る、見せる、見てる人を見る」という視線の巡回のお話も面白かった。
うーん、うまく解説できないし、御本人も「うまく説明できないんですけど」といいつつ伝えたい感覚を一生懸命話してくれて、非常に有意義な時間だった。


しかし東博の本館で現代美術をみることになるとは。面白いことになっている。


今回は友人をガイドしながらの鑑賞


SNSをきっかけに5年以上交流がつづいている愛知県に住む友人に「ぜひ東京の美術館ガイドを!」と依頼をもらい、家族以外では珍しく誰かと一緒に鑑賞、という体験をした。
彼女は私が愛知に行った時にも市内を案内してもらい、円空に縁あるお寺まで同行してくれた方だ。


行き先の選定にも悩みつつ「この企画展よいかも!」と思っても数カ月後に名古屋に巡回予定だったりとか、そういうものをリストから外すと「美術館ではない」というレアな選択に至った。
「そもそも美術のジャンルとかもわかってないから何でもOKです!」というありがたい回答ももらっていたので、現代美術×博物館という私もあまり経験の無いジャンルがめちゃくちゃの展示に行くことに。
結局、私が見たい展覧会に付き合ってもらった形だったので感謝しかない。

西洋美術館の前を通り「世界遺産です」とベタなアテンドをしたり、谷中周辺を散歩し、東京の下町風情を感じる散歩コースとなった。
もちろん、甘いものを補給しつつ。
何と言っても「谷中岡埜栄泉」で豆大福が買えたことが大収穫だった。
お昼ごろ行って売り切れ、ということを何度かしていたせいか、この豆大福をいただくのは半年以上ぶりになっていた。

カヤバ珈琲でたまごサンドを頂き…
食後にあんみつをキメる。

暑さの和らいだ日だったので街のそぞろ歩きにはちょうど良く、大変楽しい一日となった。

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