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【いいね!より先にあったセザールの親指】清春芸術村


2022/12/29

前日に2022年の訪問した美術館を集計していて、全108展覧会に足を運んだことが判明し

煩悩の数とおなじだな…

と思ったのも束の間。
結局は109の展覧会を見た2022年でした。

清春芸術村。
40年ほど前に画商でもあった吉井長三氏が旧清春小学校跡地に立てた私設の美術施設。
自身の画家への夢、白樺派との出会い…
戦災で焼失してしまったゴッホのひまわりの話…等逸話は色々。
基本情報はぜひ本家のサイトをご覧頂き、実際に見に行ったらまぁ素晴らしかった…

【白樺美術館】

谷口吉生氏設計の白樺美術館本館。


白樺派の名品や写真や年表などを展示する第1室を民藝の下地がわかるからわかるんだよなぁと、過去の民藝の集大成展示に感謝しつつ。

高村光太郎の彫刻や、タンスの上に置かれたロダンを「タンスの上のロダンなんか素朴というか現実的というか」とちょっとしたユーモアを感じて笑っていた。

【第二室へ】

次男が「かーさん!多分ミヤジマさんとカワラオンさん」と呼びに来て(施設全体に私たちしか人がおらず、展示室に係員の方もいない)えっ!マジ?!とそそくさと見に行ったら確かにこれは彼らの作品だな、というものが展示されていた。
キャプションはない。タイトルも記載なし。

ふと見ると恐らく杉本博司氏の写真だろう、という展示も。しかしキャプションは、ない。

もう一枚、松林の写真なのか絵画なのかわからない、パノラマ的作品。
薄暗い静かな画面がかっこいい。
のだが、これもキャプションはない。

あ、この展示室、全ての作品にキャプション無い。

ひとしきり、作品を見て私がちょっと席を外して再び第二展示室へ戻って来たら、子どもが係員さんと談笑しながら作品の説明を聞いていた。(??どこから連れて来たの?)と思いつつ便乗して話を聞いていたらものすごく深い解説とあっと驚く展示品の作者名の数々。
さっきの松林の作品は写真で作者は杉本博司氏の写真だったのだ。こんなの初めて見た。

係の人曰く、「この美術館を作った吉井が『あまり説明や解説、情報を少なくまず作品と向き合って欲しい』という意向を反映した展示になっています」とのこと。
もちろん情報無しでも誰の作品かわかるものもあるけれど、あくまで作品と向き合う。
タイトルさえ想像でよいのだ。
…納得。

2022年年末、最後の最後に凄い美術館を引き当てたな…

そして、先程の「タンスの上のロダン」の話はやはり白樺派だから、と笑いながら話していたらさらに驚く逸話が。
そのロダンが置かれていたタンス、白井晟一さんの持ち物だったらしい。
えー!あの!松濤美術館設計者の?!と。
恐らく、白井さんが自ら作った物なのではないか、と言われているとても不思議な作りのタンス。なぜここにあるのか、もはっきりとはしないらしいが、でも面白い巡り合わせだなぁと。
そして非常に丁寧に、様々なお話をしてくれた係員の方に感謝しかない。
超贅沢なマンツーマンギャラリートークだった。

連れて来てくれた長男、グッジョブ!
しかしなんで、出て来てくれたの?と尋ねたら「なんか、古いポスターが小部屋?ところにあってさ、なんて書いてあるか見たくて覗き込んでたら中に人がいて出て来てくれて、お話してくれて」
そうかー…面白いな!

【セザールの親指】

この美術館が設立された頃に夫は一度来ているらしく、うっすら幼少期の記憶を思い出しながら施設内を巡っていた。その際、「ここに親指があったんだよなぁ…」と言われた野外のとある場所はもぬけの殻で。(?っていうか親指って何じゃい?)って思っていたら白樺美術館の中にクリスタルで出来た親指が鎮座していた。
大き過ぎて親指というのも分かりにくいのだが、これは現在諸事情で取り下げている野外彫刻のセザールの親指のかわりらしい。
「いいね!って感じだねー」と次男が笑ってたけどそうね、今親指だけ見ようとしたら自然とそういうポーズになるわな。



と、こんな感じで2022の展覧会鑑賞は
山梨県の清春芸術で幕を閉じました。

施設内にある建築をご紹介


藤森照信氏の茶室。赤瀬川さんも関わり縄文建築団が作成
エッフェル氏の設計をトレース
安藤忠雄氏の作品
その内部
永山祐子
吉田五十八設計、梅原龍三郎アトリエ


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