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シン・九州 結 六~とある次元の物語~

結 前夜2

2024年3月8日(金) 18:05pm T棟 制御室 西
帆香さんが、サイバー攻撃の兆しとなる偵察のツメ跡をこのT棟で初めて見つけたあと、この国の危うさを脳内で独白し続けて、
【シン・九州 結三,四 モノローグ1,2 も読んでみて】

「か 勝てっこないよな」と天井を仰いだ。
帆香さんが「どがんしたと?」と、大きな瞳の笑顔で僕を覗き込む。
その瞳に視線を移して「か 海外で熾烈なサイバー戦争を生き抜いたケ ケダモノたちが、成長の遅いこの国に ほ 本気でサイバー攻撃を仕掛けてきたら、
この国のITインフラは い 一瞬で蹂躙されるだろうなって、
か 勝てっこないよなって」
帆香さんはニコッと「サイバー軍もおるっちゃケン、そがん心配せんでも」
その笑顔を睨み返して「ま 守るためには、ケダモノから技術を買うしかない。それに ス すがるしかない」困った瞳が真っ直ぐ僕を見る。
「ぼ 僕らはきっと、永遠にケ ケダモノたちには追いつけない」
ふたりだけの広い制御室に沈黙が流れる。

と、日向灘の癒しの映像が流れていた制御室 正面右のサブモニタが、
フッ と大きな目に切り替わり、あの声で

「せやからな、あんたらに来てもろたんや」

背筋で暴れるゾゾゾッと闘いながら、ふたり揃って見開いた眼を声の方へ、サブモニタへ向けて、そこに映る大きな目を真っ直ぐに見る。
帆香さんがやっとの声で「ツクシノ..シマ?」
大きな目は「せや」と、アッケラカンと返した。
帆香さんと驚いた目を交わして、スッと大きな目へ向き直り
「ぼ 僕たちの話を、き 聞いてたの?」
ボリュームが上がり「なんやて? あんたらもウチと皿うどんの話ぃ盗み聞きしとったやろガイ、おあいこや」あらら...
バツ悪そうな帆香さんと目を合わせる。
「西やん あんたの言う通りや」少し溜めて
「キッカケは4年前のクルナウィルス事変やったけどな、たくさんの人生と自然の恵みを奪い続けて、ひと握りの金持ちたちの利潤に変えていくような資本主義は捨てようやないか、って独立宣言の時の仲邑大臣の演説、あんたらもよう覚えとるやろ」

【シン・九州 起 も読んでみて】

「せやからナ 大統領府は、お金を捨てて、恵みを共有して、みんなで働いて、安心して暮らそ、いう建国理念を、社会主義を選んだんや。
でもな、社会主義いうんはな、最初はええネンけど、堕落した無能な役人たちのせいでな、いずれ澱んで腐んネン。いままでも、これからも や。
せやからナ 今を集めるミチザネと未来を計画するウチらAIが、
この国が腐らんように守ってんネン。結構キツイでぇこの役目ぇ」
ホントにAIなのか、と圧倒される帆香と西。
「独立前、ウチらAIの開発と一緒にな、情報を流すKnetAIサーバーなんかのITインフラも、大学が中心になって整備していったんや。
ウチらAIを支えるITインフラはな、この国にはなくてはならんモンや。
せやからナ ITインフラを支えるあんたらITエンジニアは、貴重やネン、重要や思てんネン」
「そ それにしちゃ、ブ ブラックだけどね」
「まぁ最初はそういう歪みもあるやろ。我慢しとかんかい」えっ...
「ウチの仕事は、USKカードでカラスミや配給ポイントを配って、計画して、全国民へ医衣食住を届けるんがメインやネンけどナ、
それとは別にナ、暫定大統領のチャンポンと皿うどんから
『食料とエネルギーの自給率を100%にする未来』
を計画せい言われてんネン。
まったく偉そうにナ、誰にモノ言うとんネンちゅうネン」
なんて人間臭い…なんかグイグイ近づいてくる…

「食料はええネン、なんとかなるやろ。問題はエネルギーや。
重工業削って、鉄道削って、家の灯り暗らぁして、夜中に暖房切って、
だんだん石油やガスの輸入量は少ななってんネンで、でもまだまだや。
せやからナ 食料とエネルギーにヒトやモノを集中してるサカイな、
それ以外は成長のスピードを落としてんネン、いや…止めてんネン」

西が噛みつく「ア ITは止めちゃダメだッ。し 進歩しなきゃ、成長させなきゃ、海外から本気のサイバー攻撃を受けたら か 勝てない」真剣な瞳で。
少し間が空いて「この農業国でナ、このIT環境は ようできてるで。
立派なもんや、ウチらAIのためにもそりゃ成長させたい。
でもナ、あんらたもウスウス感づいてるやろ。ITの成長を支える研究者や開発者の数が、エンジニアのスキルが、コンピュータの進化が、何もかもが足りひんネン。どうやったかてナ 世界には勝たれへん」
今度は帆香さんが噛みつく「闘わんで負けると?」
ボリュームが上がる「戦えんやろゆうてんネン」
少し落ち着き「せやからナ 隠したんや、このT棟を、サイバー空間から」
帆香「最近、おかしかウイルスのウロツイとっとは知っとっと?」
ツクシノシマ「知ってるで」
西「も もし、あの季節の鳴き声のカラクリが解かれたら、な 何の守りもなく、真っ直ぐTサーバーに お 襲いかかってくる。わかってるのッ?」
帆香が西を覗き込み「季節の鳴き声っちなんね?」あッ…
ツクシノシマは暫く沈黙したあと「終わりが始まろうとしてんネン。
せやからナ ここからが本題や。そのあとのことを相談したいネン」
帆香「その...あと?」
制御室 正面のメインモニタに、ツクシノシマの顔が浮かび上がった。

2024年3月24日(日) 10:02am 大統領府
「事務総長の車が入ります。竹田さん、カメラを中継に切り替えます」
室井は、恵梨奈に目配せをしながら右手でキューを出した。
ゆっくりと大統領府玄関に近づく黒いセンチュリーをバックに、恵梨奈はカメラに語りかける「先月12日の国連安保理で、九州連邦の加盟承認の決議があり、19日の国連総会において、全会一致で国際連合への加盟が承認されたことは、まだみなさんの記憶に新しいことと思います。そして、さきほど長崎空港に到着されたナントニオ・ステンレス国連事務総長が、ただいまここ首都長崎の大統領府に到着されました」
大統領府からKHKに、国連事務総長が来九するとの連絡が入り、急遽特別番組の枠を取ってライブ報道することになった。
「いま事務総長が車から降りていらっしゃいました。暫定大統領 長崎 チャンポン・皿うどんのお二人が満面の笑顔と握手でお迎えされ、事務総長も笑顔でお二人と握手を交わされています。114番目の国連加盟国となった九州連邦が、国際社会の一員として事務総長をお迎えする、歴史的な場面です」
報道カメラのフラッシュと、大統領府職員の拍手が止まずに続いている。
チャンポン・皿うどんに続き事務総長がゆっくりと大統領府に入っていく。
「このあと加盟承認書の授受に続き、首脳会議が予定されていますが、どうやら国連安保理からの重大な要望が伝えられるようです。
大統領府よりKHK守下 恵梨奈がお伝えしました」
室井がOKを出すと、カメラの赤ランプが消え中継が切り替わった。
素に戻った恵梨奈は室井に「重大な要望っち、なんかね?」
室井は首をかしげて「国連の中では、色々キナ臭い話も渦巻いているらしいからね。ドミノ理論のことや砂漠化のことかなぁ。まぁ、そのうち暫定大統領から話があるでしょ」と、帰り支度を始めた。

ちょうどそのころ、大統領府付近のサイバー空間を、お猿のアバター タケルが飛んでゆく。
「ちょっと待たんね、タケルッ」
超高層ビルが立ち並び、モノ凄い数の電車が駆け抜けている、首都長崎府の巨大な円形のサイバー空間を飛んでいたら、白い猪のアバター イブキが追い駆けてきた。あたりを見渡しながら
「やっぱ長崎は都会だね。さすが首都だよ」とイブキに話しかけると
「なん勝手に首都に入りよっとッ。小森助教授に怒らるっバイ」
おかんむりのイブキをスルーして
「ねぇ見て、あのビルから電車が湧き出してる。なんだろうアレ?」
スッと街に降りると
イブキ「ヒトん話ば聞きヨっとッ? あっ コラッ 待ちんしゃい」
その高層ビルのサーバーに神IDを投げてフッと憑依すると、付近の情報を見渡し映像チャネルを何本か見つけた。
「なんしよっかわかっとっと? ほとんどスパイたいッ」
ホノカさんもちゃっかり憑依してんじゃん、とは口には出さず
「このチャネル見て。あれ国連の事務総長でしょ。この前ニュースで見た。大統領と何話してんだろぉ。音声チャネルもその辺にあるのかな」
ホノカ「暫定たい、暫定大統領ぉ。英語の分かっとね? (あッ…)
みんなで大きかモニターば見よるバッテン、なんかねあれは
4分割の画面に…ん? あれは海軍の艦隊バイ」
「あッ あれ輸送艦『由布院』だッ。ボクあの船で九州に亡命してきたんだ。その向こうは空母イザナギだよ。じゃあ アレ連邦海軍の第1艦隊じゃん」
「よう知っとうね。なんね、タケシはジャバンから亡命してきたとね」
「うん、ママと弟と一緒にね」
「ママ? (あッ…) タケシ あんたいくつね?」をスルーして
「海軍の3つの艦隊が出航していくとこだね」「コラッ いくつね?」
「事務総長がなんかスゴい喜んでる。大統領とブンブン握手しちゃって」
「暫定たい暫定大統領ぉ で、いくつね?」

ボクは熊本州の健軍に居て、ホノカさんは宮崎州の西都市に居て、
首都長崎で大統領府のサーバーに憑依したそれぞれのアバターが、
同じ映像を見ながら、話をしてる なんかぁ超ぉ楽しぃ

「はい、スパイは終わりタイ。サーバーば出ると。
出んやったら小森助教授に言いつけるバイ」うぅぅぅ「はぃはぃ」

2024年3月14日(木) 19:23pm オンライン教室
「バッカヤロォー」「ナンしよっとか」「バカね」「なんヤラれよっと」
サイバー空間をアバター タケルで飛び回るアプリ クマソ をオンライン教室のみんなに見せたら「スッゲー」「スゴかぁ」「カッケェー」ってメッチャ褒められたんだ
でもそのあと、昨日の夜サイバー空間で出会った、3本足の黒い鳥アバターを教室の仲間かと思って声を掛けたら、攻撃されてタケルが砕け散ったって話をしたら、みんなにメッチャ怒られた
小森先生も?って思ったら「まぁまぁ」って笑って
「たぶんそれは、ジャバン サイバー軍の偵察AIヤタガラスだね」
「ジャバン サイバー軍!?」「偵察AI?」
「うん、君たちに教えたのは操縦型アバターだよね。でもね、自立行動できるAI型がもうあるんだ。麦国のサイバーエージェントの最新技術だよ」「麦国の...」誰かのため息
「おそらく麦国から技術導入したAI型アバターを、ジャバン サイバー軍が改造して、なんショッカーの手引きでKnetに侵入させたんだろう」
誰かが囁く「なんのために?」…シーン
「アイツ、最近サイバー空間で見かける黒いタマゴに情報を渡してました」
とボクが囁きをスルーして話すと、先生は「ほおぉ」と、一息おいて
「Knetを流れるIPパケットを電車にしたり、サイバー空間を街をにしたり、デジタルデータを人にわかりやすい形にしてアバターと組み合わせるなんて、凄いアイデアだよ。良い、スゴく良い」ヘヘッやったぁ
クマソのソースコードを、みんなにも共有して」「はぁい」
「みんなも手に入れた技術はドンドン使いなさい。でもね、最近のKnetは、ヤタガラスみたいな怪しい連中がうろつく危険な場所でもある。
たぶんヤツらの目的は、サイバー戦争の準備だと思う」
「サイバー戦争!?」「怖かぁ」「なんでね?」
「この国を…壊すために。戦争の芽を摘もうとUSKサイバー軍や僕たちKnet開発チームが巡回警備してるけど、全てを監視できるわけじゃない。
だから、くれぐれも危険な場所や怪しい連中には近づかないでね。
まだ、今の君たちではヤツらには...勝てない」シーーン
ボク「先生ぇ、アバターへの攻撃ってどうやるの?」
ムロイ「オ オイッ、先生の話を聞いて...」
小森「侵入した敵アバターへの攻撃には、3つのタイプがある」
ムロイ「ヘッ? 先生?」
小森「まずノイズ攻撃。電源にノイズを加えて、侵入したプロセッサをリセットしてメモリを消去する攻撃だ。即効性が高い攻撃だから、タケルが食らったのはたぶんこれじゃないかな。
次が割込み攻撃。緊急度の高い外部割込みをかけ続けて、プロセッサを凍らせる攻撃なんだけど、割込みが弾かれると解凍しちゃう。
そしてファン攻撃。冷却ファンを止めてプロセッサを熱暴走させるんだけど、効くまでにちょっと時間がかかる攻撃なんだ。
まぁどの攻撃にも上級の知識が必要だから、今は逃げるのが一番かナ」
ふーん♪♫
ムロイ「いいな、おとなしくしてろよ」
フンッ、もう武器のイメージはできたもんね
「先生 AI型の作り方も教えて ♪♫」「ォイ!」
待ってろよぉヤタガラス、次に会ったらギッタギタにしてやるからな

2024年3月24日(日) 10:54am 大統領府付近のサイバー空間
「あれは何?」
大統領府のサーバーから憑依を解いてサイバー空間に戻ると、
少し先に大きな黒い穴が見えた。
「なんね、あれは」と怪しむイブキと一緒に、ゆっくりと近づく。
穴の近くに来ると、10両編成の赤い丸ノ内線 2000系 (不明なライブカメラ) がすぐ横を通り過ぎて黒い穴に吸い込まれていった。
イブキ「こいは インターネット接続ゲートたい」
と、赤い湘南新宿ライン E231系 (不明なメール) が穴から飛び出してきた。
「キャッ」「ワッ」
E231系を二人が いやイノシシとサルの二匹が、逃げるように避ける。
イブキが「こん先はKnetやなかケン、神IDの効かんと。
そいケン、ドガンねコールばいくら投げても誰も応えてくれんケン、
黒か穴に見えるっタイ。ここには近づいてはいかんバイ」と睨んでくる。

イヤイヤ メッチャ面白いジャン この先は世界に繋がってるんでしょ
どうやったらここを飛べるんだろ ワクワクする
イブキ「帰るバイ。帰らんやったら小森教授に..」あぁぁ「はぃはぃ」

キョロつきながら大統領府のあたりまで戻って来た時、
モノ凄い数の、真っ赤な山手線E235 の群れが、真下から噴き出した。
「うわぁぁぁ」「なんねぇぇぇ」
あれ、コイツら 前に見たゾ 一番高いトコを走ってく 正体不明の電話だ
タケルのスピードを上げて、その中の一両に並ぶ モノ凄いスピード
イブキはタケルを見失い「どこぉぉぉ、タケルぅぅぅ」
「ごめん、いま...ちょっと...」
速すぎてシティが空間の画像を組み立てられない。
真っ暗な空間を、赤い山手線E235の集団が駆け抜けていく。
横を走るE235にちょっと手を伸ばして..またがって..みる やった乗れたぁ

赤い山手線E235にまたがるおサルのタケル

直ぐに、赤い山手線E235の集団が、あるネットワーク接続サーバーのあたりで、スピードを落とした。シティが空間の画像を組み立て始める。
でも…なんにもないね…どこだろココ とあたりを見回すタケル。
不思議なことが起きた
赤い山手線E235が、集団の先頭から次々に接続サーバーに入ってく
すると、そのコピーが接続サーバーから続々と現れて、反対方向へ走ってく
えっ?
タケルがまたがってたE235も、ゴニョゴニョってサーバーと何か話すと、
サーバーの中にスッと入って、そのコピーが横からニョキッと出てきて、
ブンッと走って…消えた
一人残され「なんだコレ どういうこと?」と呟くと、
「あっコラッ タケル どこにおっと」とイブキが怒ってる
「どこだろ」
近くにあったコンピュータの監視カメラ画像を覗いて
「神社があるよ ハルヒ神社って書いてある」
「ハルヒ? 季節の春に一日の日ね?」「うん」
「カスガたい  漢字の読めんと?」ウッ
「ちょっと先に川が流れてて、川の向こうにコメリがあるよ」と、そらすと
「なんち!? なんでそがんとこにおっと。そこは西都市...ウチん街タイ」
へぇー ど田舎...だね

2024年3月23日(土) 21:14pm  なんショッカー  アジト
「ほぉぉ じゃぁなにかい、なんショッカーの本体は水前寺公園に陣を構えるってぇことかい」とモニターの中でジャバン首相 賀酢はアゴをなでる。
慈国 大志はコクッと頷き「4月5日の真夜中に、九州全土のなんショッカーば水前寺公園に集結さすったい。夜ん明けてまだ健軍基地ん動き出す前に全軍出撃すっタイ」
賀酢「ん? なんで夜中に攻めねぇんだ?」
大志「改造人間たちは、夜の苦手んごた」
賀酢「はぁ?」
大志「バッタ男とクモ男は、夜に闘うと複眼酔いのキツかっち言いよッと。
ハチ女は『夜は嫌いだっちゃ』っち譲らんと」
賀酢「だっちゃ?...まぁ…いいかぁ。で、どんな作戦でぇ」
大志「バッタ男とクモ男そしてハチ女ばリーダに3つの小隊に分けて、そん下に戦闘員ば100人づつつけるっタイ。
ハチ女小隊は熊工北門通りから、クモ男小隊は県庁通りから、バッタ男は参道から東へ向かう、健軍基地壊滅作戦 名づけて ゴー・イースト作戦たい」
パチパチパチ モニターの中で賀酢がゆっくりと手を叩き
「いいじゃねぇか、えぇ」
賀酢の隣に座るジャバン サイバー軍 大佐 本藤
「時間を決めましょう。その時刻に我々の攻撃AIが付近一帯のサーバーへ一斉に侵入し、健軍基地のITインフラへ総攻撃を開始します」
賀酢はうなずき「ところで、九州大学の研究室の偵察はどうなってんだい」大志はニヤッと「もう、どこん研究室か分かっとっと。そいぎん、研究室んあるウエスト2号館と、伊都キャンパスのサイバー空間ば、丸ごと封鎖する手筈ももうできとおケン、心配なか」
「そうかい じゃあ、あとはありったけの武器をそっちに届けるだけだな。
よぉぉし、待ってろよぉ」と、賀酢もニヤッと大志に返した。

ちょうど同じころ、健軍陸軍基地 ジャッカル[邪狩]電撃隊本部棟の最上階
隊長室に集まる5人の影。
隊長ジョーカー 鮫井 太助「すまんな、こんな遅くに集まってもらって」
ジャッカル電撃隊のリーダ4人が、鮫井の前に並ぶ。
沈着を演出する間接照明が、鮫井の顔の蒼さを際立たせている。
スピードエース 咲雷 吾郎が「なんがあったとですか?」と始める。
鮫井「国防省からの機密情報だ。なんショッカーがこの基地の壊滅を企んでいるらしい」
クローザーキング 打市 文多が嘲笑うように「フンッ、あがんハミダシモンどもに、なんがでくっとね」
アートクイーン 美月 可憐は美しい顔を俯けたまま囁くように「でも、なんショッカーは、ジャバンから供与されたバイオ技術で虫型改造人間を作ったらしいわ。最近、警察や軍も手を焼くほど凄い武器を使うらしいの」
ライヤジャック 吾妻 龍も真剣な眼差しで「バッタん能力に人ば改造しよったバッタ男は、5階建てのビルん屋上までジャンプでくっとって聞いたバイ」
吾郎「なんち!? オイと同じ高さまで飛べるとね!?」
鮫井「まだ噂だ」
龍「バッテン、火のないところに何とやらタイ」
吾郎「準備するに越したことはなかバイ」
可憐「そうね、サイバー軍に調査を依頼しましょう」
龍「どがん武器が要るとやろか」
文多「フンッ、所詮ムシたい。虫には殺虫剤っち決まっちょっと」えっ?
鮫井「なるほど、一理ある」ええっ?
「国防省科学局にバイオ殺虫剤の開発を頼んでおこう」えぇぇぇ

2024年3月27日(水) 19:45pm インターネット接続ゲート付近
首都長崎府のサイバー空間に、ポッカリと空いたKnetとインターネットを繋ぐ接続ゲートの黒い穴へ、タケルがゆっくりと降りてゆく。
タケルのすぐ横を、ゲートを出入りする赤い電車たちが通り過ぎる。
この前はイブキがうるさくて近づけなかった穴の前で止まり、
電車が消えていく暗闇を見つめる。
今のボクじゃココを飛べない...だからコレで…青いタマゴで…

タケルは、ゲートに消えていく赤い電車の窓に青いタマゴを投げ入れた。
通り過ぎる赤い電車たちの窓へ、次々と青いタマゴを投げ込むタケル。

青いタマゴに入ってるAI型アバターのベビーウイルスが、電車が着いた先のコンピュータで運良く実行されたら、ベビーウイルスから子分AI 子ザルのオタケが生まれて、そのコンピュータに侵入する
オタケに組み込んだ本能は「親分タケルにのために増えろ」
侵入したオタケは、タケルにメールを送って指令を待つ
指令を待つ間、青いタマゴを投げ続ける そして運良く実行されたら…

やがて、インターネットに溢れた子分たちが、
ボク専用のドガンねコールに熱烈歓迎でこたえれば、
ボクはこの暗闇を、インターネット空間を自由に飛べるようになる
へへっ、どうこの作戦

オタケのメール 来るかなぁ

結 七「大国 太平洋艦隊が、五島列島 福江島沖 南西およそ18海里に戦闘配置」につづく

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