マガジンのカバー画像

体験談

21
イマジネーションの源泉である、自分自身の体験談を綴ります。
運営しているクリエイター

#怪談

陰火

陰火

平成24年1月15日。

僕の住んでいる地域は関東でもかなり寒い場所で、雪も積もるのです。その日は朝から雪でしたが、夜には小康状態となりました。

外を見ると、雪は明るい月光を反射して美しく輝いています。

周囲の景色に見惚れていると、北西の方角から、透明な袋が飛んでくるのが見えました。コンビニ袋ではなく、なんという名称かわからないのですが、スーパーで肉や豆腐を入れるためにロールにして置いてある薄

もっとみる
幽霊が見えない理由

幽霊が見えない理由

ある日の夜、僕は残業を終えて家に続く坂道を登っていました。そして、いつも通る車線のない小さな交差点にさしかかります。
交差点の右は駐車場で、左はニコンの寮があり、コンクリートの塀があります。塀がある関係で見通しが悪く、ニコンの寮側にカーブミラーが設置されています。

時間は21時。そう遅い時間ではありませんし、都内の夜は街灯が多いため、そんな暗くもありません。

ふとカーブミラーの黄色い支柱を見る

もっとみる
登山道の『通りゃんせ』

登山道の『通りゃんせ』

「あそこでキャンプですか…… そんな場所ありましたっけ?」

 男にとって、何気ない私の質問は、とりとめなく、あたりさわり無い会話に、グサリとメスを入れたような、そんなものだったのだろう。
 リラックスして弛んだ目尻が少し上がり、教育者らしいジッと観察するような瞳を私に向けて、言った。

「その場所を知ってるのか。今は観光客が多いからキャンプは無理だよ。まぁ、キャンプ場でも無いしね。でも昔は閑散と

もっとみる