第41話 兄:プレイステーションか?セガサターンか?

 小学3年生のときにやっとこさ買ってもらったスーパーファミコン。
 でもすぐに世代交代が時期を迎えることになる。
 それがプレイステーションとセガサターンだった。
 また、スーパーファミコンの後継機となるニンテンドー64の発売される声も聞こえてきた。

 新聞も読まず、ニュースも見ず。
 世の中の出来事にてんで興味がないのに、ゲームの最新情報は常にアンテナを立てている。
 ボクはそんな小学生であった。
 そんなボクもゲームの世代交代を前にして、世の中の子供たちと同じように悩んだのだ。

 ゲーム情報を仕入れるにあたり、今のようなインターネットという選択肢はなかった。
 テレビを見たり、友達から教えてもらったり。
 何より、ゲーム雑誌が情報源だった。
 今の子供たちからしてみれば、すいぶん不便に感じるかもしれない。
 でもそれがボクらの普通だった。

 ボクは当時、このゲームの情報を仕入れるためにⅤジャンプを愛読していた。
 ゴリッゴリのゲーム情報誌じゃない。
 そこそこ主要ゲームの情報が載っていて、ゲームの情報以外にはマンガが連載されていた。
 ボクはこの絶妙なバランスがとても好きだった。
 もちろん兄に上手く誘導され、ボクのお金でボクが買いに行くのが使命だった。

 Ⅴジャンプに載っているゲーム情報。
 時が経つにつれ、次第にスーパーファミコンの情報が少なくなっていく。
 次世代ゲーム機の話題ばかり。
 ボクは焦った。
 置いていかれると!!
 危機感を持った。

 ボクは兄と相談した。
 次はどのゲーム機を買うべきなのか?
 もちろん全部手にすることができたらそれが一番いい話なのだが、我が家はそんな裕福な家庭ではない。
 手にすることができたとしても1つだけだ。
 間違いは絶対に許されない。
 もし選択をミスしたら、その後数年間は不遇の時代を迎えることになるのだがら。

 とりあえず、ニンテンドー64の選択はなかった。
 なぜなら、プレイステーションやセガサターンより発売されるのが遅かったからだ。
「こういうゲーム機が出るらしい」
 そんな情報しか掴んでいなかったのでとりあえず選択肢から外れることになった。

 ボクと兄は、最初セガサターンを推していた。
「セガサターンの方が面白いカセット多くねぇ?」
 と兄が言っていた。
 それにボクも友達の家でセガサターンをプレイして、心はセガサターンに動いていた。
 これはもうセガサターン決定だなと思っていた矢先!!緊急情報が入って来た。
「ファイナルファンタジーⅦ、プレイステーションで発売決定!!」
 まるで雷に打たれたような出来事だった。

 ボクと兄は、前作である「ファイナルファンタジーⅥ」をプレイしていた。
 めちゃくちゃ面白かった。名作だと子供ながら思ったものだ。
 だからこそ思った。
「絶対に次の作品もプレイするんだ!!」
 心の中でそう決めていた。

 ボクはすぐにその情報を兄へと伝えた。
 完璧な報連相だ。
「お兄ちゃん!!ファイナルファンタジーⅦがプレステで発売するって!!」
「マジ!?」
「ホントホント!!ねぇ、もうプレステで決定だよねぇ?」
「おう、まぁそうやなあ」
 こんな感じの会話だったと思う。
 これにより、プレイステーションは見事逆転勝ちを収めた。

 後に、ボクらはプレイステーションを手にする。
 ボクは大いに喜んだ。
 兄はというと…高校生になり、なんとなくゲームから遠のいていたので、正直ボクほど喜んでいなかった。
 これも時代の流れというやつだ。
 でも2人とも、プレイステーションを選んで大正解だったと思った。
 賢い選択だったと思う。

 こうして振り返ってみると、どのゲーム機を買うか悩んでいたときが一番楽しかったような気がする。
 今のボクの心には、プレイしたゲームより兄と悩んだ時間の方が印象的に残っている。
 もうこうして兄と悩む機会はない気がする。
 少しだけ寂しく感じる。

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