第56話 母:東京フレンドパーク

 東京フレンドパーク。
 今はもう特番でしか放送されなくなってしまったが、昔は毎週のように放送されていた。
 芸能人の方々が金貨獲得を目指していろんなゲームにチャレンジする番組だ。
 毎回、面白そうなゲームにチャレンジするのを楽しんで見ていた。

 そんなたくさんのゲームの中で母は最初にやるウォールクラッシュというゲームが1番好きだった。
 名前を聞いてもピンと来ないだろう。
 助走をつけてトランポリンで弾み、壁にピタッと貼り付くゲームのことである。
 名前はボクも今知ったところだ。
 母はこのウォールクラッシュをプレイする芸能人をいつも羨ましそうに見ており、
「ええなぁ。これ一度やってみたいなぁ」
 と言っていた。
 トランポリンでぴょ〜んと飛んでみたいのだろう。
 正直ボクもやってみたい。

 そんなやってみたいと言う母に、
「あんたがやっても多分壁まで届かんと思うよ」
 とボクはいつも辛辣なことを言っていた。
 しかし母は負けじと
「分からんがねぇ〜、やってみんと」
 と言い返していた。
 確かにその通りだと思った。

「どこかにこういうのやれる場所ないんかな〜?あっ、この人下手くそ!!」
 母は下手くそな芸能人に厳しかった。
 どの口が言うと思った。
 母にはこれから一流芸能人になってもらい、無様な姿をテレビで晒してもらいたいものである。

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