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価値観の話

結婚して早1年半以上になる。
結婚してからも初めは別々で部屋を借りていたので同棲期間としては1年ほど。文化の違う二人が突然一緒に暮らし始めるのだから理解できないこともあれば、諦めることもある。
そんな生活の中で感じる価値観について振り返ってみたい。

僕は周りに比べ実家を出たのが遅かった。
大学生の頃は片道2時間かかる学校だったが、家賃より交通費の方が安いという理由で親に一人暮らしを許してもらえなかった。

当時、商売も不景気で女手一人で僕と祖母の面倒を見ていた母。
そんな中、予備校、浪人の挙句、学費の高い私立の美術大学に入れてもらったのだから何も言えない。

ただそんな諦めも束の間。
入学後は学校のすぐそばに一人暮らしだった彼女の家に入り浸り、学年が上がればアトリエが無いと制作ができないと友人共に寝泊まりできる場所を借りたりしていた。
そう、一人暮らしができないので誰かと生活することで100%の実家暮らしから逃れていたのだ。ただ、と同時に、常に実家という逃げ場も持ち合わせるハイブリッド生活をしていた。

大学卒業後まともに就職をしなかった僕は当然実家暮らし。
そんな状態にも関わらず独立欲だけは強かったのでどうにかして家を出れないかと考えていた矢先のことだった。
後輩二人が一緒に住むというだ。そのうちの一番狭い一部屋を借りてまたハイブリッド生活を送ろうと考えた。

住めば都。
新宿まですぐの都内に住んでしまったら実家にはなかなか帰らなくなり三人の同居が正式にはじまった。

一人暮らしの経験がなかったので、生活スペックが一段と低い。
料理は元々できたものの洗濯機を回したのはこの時が初めてだった。
他人とのコミュニケーションは得意な方だったが、生活を共にするとなるとそうも言ってられない。

その時事件は起きた。
貧乏性というか倹約というか、小さな頃から何をするにも「もったいない」と教わっていた僕は、水道の水やティッシュペーパーなどに敏感であった。
同居人が毎日箱ティッシュをゴミ箱がパンパンになるほど使うのだ。
はじめは気にしない様にしていたが、さすがに注意しようと思い声をあげた。

すると、自分で買って自分で使ってるから問題ないという。
いやいや、環境的にも、、
ティッシュや割り箸は森林を守るために一部伐採された木を使っているから使った方がよいと、、
環境問題の難しい話はよくわからんが、とにかくもったいない!
あなたのタバコの方がよっぽどもったいないですよ、と。

お互いが正義だと思っているので埒があかず家には不穏空気が流れた。

わからない。
わからなすぎたので、そんな躾をした親にも聞いた。
俺が間違っているのか?

何の解決もしないまま、モヤッとした日々が続いたが、相手も同じだったようで、少しずつ理解しあうようになっていった。
人生今まで当たり前だと思っていた価値観を否定されたことで、そんな価値観もあるのかと気付かされた。一歩大人になった瞬間だった。

よく考えてみれば当たり前なことだ。
育った場所も環境も違う、受けた教育も違うのに全く同じ価値観を持ち合わせるはずがない。
例えば外国人に日本語で話しても通じないように、話をするなら相手の言葉で話す必要がある。
自分と相手の違いを認め相手の言語を使いこなす必要がある。
自分の当たり前は相手にとっては当たり前ではない。
そもそも価値観は多様に存在するものなのだ。

現在の夫婦生活でもそうだ。
文化の違う二人が生活をするとその価値観の違いに驚くことがあるが、最近ではなるべく一度受け止めるように心がけている。

また、僕のことも受け止め理解してくれる妻に心から感謝していると共に、今後、価値観の違う妻の奇行を綴ってみたいと思う。