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rokuyouが「公開SEL勉強会」を始めました!

「SEL勉強会」を立ち上げた背景

これまで、多くの方から「SELをもっと深く知りたい」「自校でSELを導入し、実践しているが孤軍奮闘していて悩んでいる」「学校に広げていくために、SELを深掘りしていきたい」といった声を多く耳にしてきました。

実は「SELについてもっと知りたい」「どう実践していくかを考えたい」は、私たちも同じ思いを持っているのです。私たちrokuyouはSELを実践し、その概念を日本に広げていますが、絶対的な正解を持っているわけではありません。私たち自身も試行錯誤の連続なのです。

この先、日本の中でよりSELを広げていくためにも、共に考え、実践し、共有し、学び合い、時には共に取り組めるような仲間をつくるために、学びの場作りが必要だと感じてきました。これまで社内で勉強会を続けてきたのですが、今後は社内に閉じるのではなく、SELを実践されている方々とともに学んでいきたいと思っています。

■第1回公開SEL勉強開催

本記事では、第1回公開SEL勉強会の様子をお届けします。

チェックインでは、「参加者それぞれの現在の活動」「SELについて知りたいこと」「SELと私」について話していきました。SEL勉強会第1回は、大学関係者、教育NPOメンバー、コーチングに携わっている方、国内留学プログラム運営者、塾講師、高校の探究学習コーディネーターなど、多様な方にご参加いただきました。

主に下記の2つの項目について、質問がなされ、rokuyou代表の下向との対話が行われました。
・SELを扱っていく上で、先生と生徒で共通言語を作るには
・塾でSELを実践するには
・SELをうまく掴めない。おすすめの本とは

■SELを扱っていく上で、先生と生徒で共通言語を作るには

下向:
「そもそもSELとは」ということを簡単に触れると、コミュニケーションスキルや対人関係といった社会的能力と気持ちに関わる能力を高める学びです。
▼SELの詳細はこちらの記事をご覧ください。

そもそもSELは、海外ではスクールベースドプログラムともいわれていて、学校を中心として展開をしていく前提で設計され、学問分野的にも定義されています。よく「家庭や塾ではどうSELを実践していけばよいか」と質問されるのですが、そういった背景があるので、文献から探ろうとしてもなかなか方向性が見えないという側面があります。

しかし、学校と連携をとるという文脈から探っていくとヒントを見つけられるのではないでしょうか。教室内を中心としながら、学校全体、ひいては、家庭や地域のコミュニティなど学校外と連携をしていきます。児童や生徒の生活環境の中で、ある種一貫性を持って、SEL的な土壌を耕していくということが求められると思っています。

SELを扱う中で「先生と生徒とどう共通言語を作るか」の問いは、家庭や塾が学校外の場でどう共通言語を作るのかというテーマにもつながっていくと思います。

では、それをどう作るのかというと、「あり方」や「姿勢」のような話になってくるのではないかと思っています。中でも、SELではノンジャッジメンタルが大事なキーワードになっていきます。

いかに素直な自分の本当の声を発することができるか。そして、自分自身の声が聞けるのか。お互いにその声を聞き合えるような関係性や環境が大切なのではないでしょうか。共通言語というよりは、「共通雰囲気」として持てるように取り組んでいくことが求められていると思うのです。

■SELをうまく掴めない。おすすめの本とは

下向:
この質問もよくいただきます。日本語になっているSELの本はすべて読んでいますが、現段階では自分が携わった『21世紀の教育』が今のところ一番わかりやすいのではないかと思います。

SEL-8Sという、生徒指導の意味合いが強めのプログラムや、シックスセカンズさんが出しているプログラムなど、日本にもSELのプログラムはいくつかあります。それぞれの色の違いがあるのです。

こうしたカラーがあることは素敵なことだと思うのですが、全体感を捉えている日本語の書籍は少ないのです。アメリカに「センターフォーアカデミックソーシャルアンドエモーショナルラーニング」という、SELのシンクタンクのような機関があり、そこが出している分厚いSELの論文集は全体感を掴むにはおすすめです。

日本語になっている書籍では、『21世紀の教育』ですが、前半部分は多少ややこしいので、わからないところはスルーしながら読んでいただければと思います。

とはいいながらも、SELについては、本を読んでもわからないことはたくさんあると思います。文献を読みながら、こうしたコミュニティで対話をし、実践のナレッジや疑問を共有していくことがSELを掴むことにおいては重要なのではないかと思います。

■グループごとのインサイト

その後、3つのグループに分かれ、問いを出し合いながらSELについて深める時間になりました。

【Aグループ振り返り】
主に2つの問いについて深めていく時間となりました。1つ目は、探究学習を進める中で、生徒が自分の感情を出すことや、声を聞くことができていないことで前に進めないという先生たちがぶつかっている壁についてです。どうしたら生徒が自由に自分の声を出せるのか。さらに、この課題にSELはどう寄与できるのか。具体的な方策についても知りたいという声がありました。

2つ目は、そうした生徒の課題をクリアしていくには、教員など学びの場を作る側の人たちが自分の声を自由に出せていることが欠かせないと思います。しかし、実際のところ難しい……。学びの場を作る側の大人が、どうしたら自由に声が出せるようになるのかが問いとして出てきました。

【Bグループ振り返り】
すり減る大人が多く、それゆえに子どもたちの可能性を信じきれていないという現状があり、どうしたら、そうした大人や子どもたちの問題を解決していけるのかを深めていきました。

話を進めるうちに、ファシリテーションの重要性が出てきました。現状をみんなで客観視するように、その場をファシリテートすることによって、子どもと大人を融合し、解決に向かっていけるのではないかと話をしていました。

【Cグループ振り返り】
学校で研修が始まるタイミングということもあり、「SELはどうやるんですか」という質問をよく聞きました。それに対して、「SELにどう取り組むか」というような議論ではなく、「この場そのものがSELだ」という捉え直しが求められるのではないかという話も出てきました。

また、守破離の「離」から始まるということも、SELでは重要なのではないかとも思いました。現場では、SEL的なアプローチを試してみて、後から理論を知って、「こういうことだったか」とつながることも多いのではないでしょうか。

また、先生が変化を感じるのは1〜2年はかかると言われていますが、クラス替えや異動がある中で、1年間で先生が変化・成果を体感するためにはどうしたらいいのだろうという問いも生まれました。

■おわりに

勉強会の最後には、
「SELの学び場がないので、ここにたどり着けて幸せです」 
「まだSELを知らなかった時のことを思い出しながら参加していました。生徒との関係性が良くなったシーンは、やはりその感情に寄り添ってることが多かったなと振り返りました」
「SELも探究学習もこう取り組んだらうまくいくということはないのではないかと悩んでいました。最初から上手に進む方法を狙って探究することに、最近すごい違和感を感じているので、こういう場で対話をしていきたいです」
といった声が聞かれました。

今回の記事では、公開SEL勉強会初回の様子をお届けしました。第1回を開催することができ、学ぶ仲間が増えた喜びを感じることができました。さらに、異なるバックグラウンドの方の声を聞ける、とても貴重な時間となりました。これからも多様な現場での実践を共有しながら、学びを深めていけると嬉しいです。


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