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【読書】村田紗耶香を読む

『コンビニ人間』で芥川賞を受賞した村田紗耶香の作品は、どれも独特だ。

SF作品といえばそうだが、「面白い物を読者に読ませよう!」「あっと驚かせよう!」といった作家のスケベ心?は全く感じられない。作風はとてもクリーンで淡々としており、私には村田紗耶香が真顔で「私には世界がこう見えてるんですけど」と呟く姿が目に浮かぶ。

・村田紗耶香作品とは

さて、村田作品は世界への違和感と、違和感を持ちながらも順応したり抗う人々が描かれている。主人公は「輪の外の人間」であるために、世間の「当たり前」や「常識」は宗教理念のごとく「ある種の思想」に感じられ、それを盲目的に信じる姿は「信仰」と捉えられる。例えば、現行の家族制度とは「男女が結婚をして家庭を持ち、子供を作るのが当たり前」という思想のもと成り立っており、それを疑問も持たずに実現する様は、ある種の信仰と言えるだろう、というように。

そんな風に私が文章にして説明すると「斜に構えた感じ」がするかもしれない。しかし村田紗耶香は作中、宇宙人のような「輪の外にいる人」の視点で淡々と出来事を語る。家族というあり方も、性の捉え方も命も肉体も魂も全て…。そのため読者はその世界観に引き込まれ、自分もこの文化の外側にいるような心細さと不快感、それから「いっそ洗脳されてしまいたい」という焦燥感を味わう事だろう。あるいは既に「輪の外にいる人」たちにとってはある種の救いとなるかもしれない。

以下では、私が読んだ村田作品を紹介する。

・私が読んだ村田作品

『消滅世界』:千葉に実験都市ができた。その名も「エデン」。人は性行為なしに子を作り(男性も人工妊娠する)、家族制度はなく、産んだ子は全てエデンの「子供ちゃん」になり、大人はすべて「お母さん」となる。そんな新しい世界のお話。
地球星人』:子を産み育てる営みを「工場」と呼ぶ主人公と偽装結婚した夫、子供時代に苦しみを分け合った男との奇妙な関係が描かれている。お互いを糧としてむさぼりあい、最後は繭となり生まれ変わろうとしているのかと受け取った。
丸の内魔法少女ミラクリーナ』:短編がいくつか収められているが、特に「無性教室」は、私の脳内では漫画『宝石の国』風の耽美なビジュアルで再生されていた。性を表に出さないという独特な校則の学校が舞台となっている。
信仰』:こちらも短編が収められているが、特に気に入った作品は「信仰」であり、私は村田紗耶香の一番のテーマではないかと感じた。すなわち冒頭で語った、私たちが当たり前とする「社会の在り方」は、そういった「一つの思想」でしかないということ。現実主義もまた「現実への信仰」にすぎないということだ。
生命式』:これも短編集。人はなぜ人を食わないのか?それはそういう習慣だから(もちろん〇人は社会契約論的にNGだし、死因によっては死体からの感染も考えられる)。さて生命式とはこの世界の葬式で、死肉を参列者が食べて新しい命を生み出す営み。内容がグロテスクであり、読む人を選ぶかもしれない。

・『コンビニ人間』は読んでない(笑)

これだけ語っておいて、芥川賞を受賞した『コンビニ人間』はまだ読んでない(笑)図書館でなかなか順番が回らないから、もう買おうかなと思う。そもそも村田作品を知ったのは、図書館の返却コーナーにたまたま『信仰』が置いてあったからであり、あまりにも独特すぎて受賞作家って最初気づかなかったのだ/(^o^)\

皆さんも、ぜひこの独特な世界観を浴びまくって世界の外側を体験してみるのはいかがでしょうか。最後まで読んで頂きありがとうございます。よろしければスキも押していただけると嬉しいです☆


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