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貸借対照表で会社の経営姿勢がわかる

[要旨]

会社の貸借対照表の金額が大きい項目を見ると、その会社がどんな資産に多くの資金をつぎこみ、多くの運用益を得ようとしているのかという、経営姿勢を把握することができます。つまり、調達で得た「単なるお金」を資産に変えることで「収益を生むお金」になりますが、このように、お金の「調達」と「運用」を繰り返すことで、少しずつ資産を増やし、会社を発展させていくことが、事業活動といえます。

[本文]

今回も、前回に引き続き、嘉悦大学教授の高橋洋一さんのご著書、「明解会計学入門」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、複式簿記では、貸借対照表の右側には「お金の出どころ」、左側には「そのお金が形を変えたもの」が入り、例えば、会社を設立した時に出資したお金は純資産の部に、融資を受けたお金は負債の部に、そのお金で買った機械の価額は資産の部に記載されるということについて説明しました。

これに続いて、高橋さんは、貸借対照表の見方について述べておられます。「(貸借対照表には)項目ごとに数字がズラリと並んでいるが、とりあえず、『際立った数字=額が大きい項目』に注目してみよう。額が大きい項目を見ると、その企業がどんな資産に多くの資金をつぎこみ、多くの運用益を得ようとしているのかという、経営姿勢みたいなものが見えてくる。そこから、その企業の『本当の顔』が浮かび上がってくることも多いのだ。

企業は資金を得たら、必ず何かしらの資産に変えている。資産というのは、製品を作る機械であったり、不動産であったりと、さまざまだ。例えば、同じ5,000万円でも、現金で持たずに、設備という試算に変えれば、製品を作って売り、利益を得ることができる。もしくは、1億円の資金を不動産という資産に変えれば、賃料が入る。その不動産を1億1,000万円に上がったときに売れば、1,000万円を儲けることができる。

つまり、『単なるお金』が『収益を生むお金』になる。これが現金と資産の違いだ。こうして、お金の『調達』と『運用』を繰り返すことで、少しずつ資産を増やし、会社を発展させていくことが、企業活動というものなのである。BSには、そんなお金の『入りと出』、『調達と運用』の、ある時点での成果が記される。つまり、BSを見れば、その企業が調達した資金で、どんな資産を得ているのかがわかるのだ」(56ページ)

会社の特徴を見るには、高橋さんの述べておられるように、どの資産が多いのかということで把握することができます。業績が黒字という前提ですが、小売業で棚卸資産が多ければ、商品の豊富さが特徴ということがわかります。卸売業で売掛金が多ければ、販売先の小売店を金融面で支えている点が特徴ということがわかります。製造業で機械設備が多ければ、たくだんの製品を製造できる能力を持っているということが特徴ということがわかります。

ただし、細かなことを言えば、設備は自社所有せずに賃借(またはリース)によって調達していたり、貸借対照表に計上されている資産の価額は、必ずしも時価とは限らないということなどにも注意が必要ですが、こういった点を勘案するのは、会計について理解を深めていってからでもよいと思います。もう1つ、注意しなければならないことは、高橋さんは、調達した資金を資産に変えることで、「『単なるお金』が『収益を生むお金』になる」と述べておられ、これはその通りなのですが、その一方で、資産の選択を誤ると、収益を生むどころか、損失を発生させることにもなるということです。

例えば、たくさん売れると見込んで仕入れた商品が、見込みほど売れなければ、売れ残った商品は、値引きして販売したり、販売できずに処分しなければならないことになります。また、収益を生むからという理由で、闇雲に資産を増やせばよいということではなく、なるべく少ない金額で多くの収益を生む資産に変えなければならないという点も考慮しなければなりません。その判断の適切さも経営者の能力として問われるわけですが、そういった視点も、会計に関する理解を含めながら習得していっていただきたいと思います。

2024/6/13 No.2738

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