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[要旨]

投資を失敗してしまったときなどは、その後に、経営者がどのような意思決定をしても、その投資は回収できませんが、その回収できない費用のことを埋没原価といい、それにもかかわらず、それを回収しようという誤った判断で事業を継続し、損失を増やしてしまうことを、コンコルド効果といいます。


[本文]

前回は、機会原価について説明しましたが、今回は、埋没原価について説明します。この埋没原価を説明するときは、よく、コンコルド効果と合わせて説明されます。コンコルドとは、1969年に商業飛行を開始した超音速旅客機のことです。この旅客機には、約4,000億円の研究開発費がかけられたそうですが、いくつかの理由から、商業飛行を開始しても採算がとれないことが、開発の段階で分かっていたそうです。

その理由とは、(1)飛行機に乗れる旅客数が100人と少ない、(2)燃費が低いことから運賃が高額になり、かつ、長距離飛行ができないため、途中給油なしでは、欧州と米国の間しか就航できない、(3)騒音が大きく、かつ、滑走距離が長いなどの条件から、就航先が限定される、というものです。しかし、同機の開発を行ってきた英仏両国は、それが分かっていても後に引けなくなり、商業飛行を開始しました。

でも、結局のところ、研究開発費を回収することはできず、さらに回収不能の金額が膨らんでしまいました。そうであれば、商業飛行は行わず、研究開発費の損失だけにしておくことが、最も賢明な判断であったということになります。このときの、研究開発費4,000億円を埋没原価といい、経営者(管理者)がどのような意思決定をしても回収できない費用のことを指します。

ところが、回収できない費用を支出したという誤りを受け入れたくないために、経営者(管理者)が非合理的な判断をしてしまうことを、コンコルド効果といいます。私もそうですが、自分の失敗を受け入れたくないために、誤った判断をしてしまいがちですが、冷静になって、回収できない費用は回収できないものとして、ゼロベースから考え直すことが、経営者としては最善の判断です。

このような事例は、中小企業でも、しばしば見られます。例えば、事業多角化を行ったものの、当初の見込みと違い、新事業からの利益が得られなかったとき、その事業をなかなか撤退する判断ができず、初期投資額以上に損失を増やしてしまうということがあります。そのようなとき、経営者の方は、コンコルド効果を思い出し、冷静な判断をすることが必要です。

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