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[要旨]

スポーツ界では、選手として優秀な成績を残した人は、優秀でない人の悩みや課題を理解できないため、指導者としては、凡人の育成ができないこともあります。これはビジネス界にもあてはまり、ビジネスパーソンとして優秀であっても、経営者としては力量を発揮できないことがあるということに注意する必要があります。

[本文]

青山学院大学陸上競技部監督の原晋さんのご著書、「フツーの会社員だった僕が、青山学院大学を箱根駅伝優勝に導いた47の言葉」を拝読しました。原さんは、同書で、指導者として意識していることについて述べておられます。「指導者として意識しているのが、『目線の位置』です。学生のレベルに合わせて目線を下げられるかどうかが、その子の能力を引き出せるかどうかの鍵になります。

スポーツの世界でよくいわれるのが、『名選手、名監督にあらず」、これは、現役時代に活躍した選手が、必ずしも、優れた指導者になるとは限らないことを表す言葉です。どうしてそういうことが起こるのかというと、監督が選手時代、天才だったことが、逆に、選手との間に壁をつくるためと考えられます。天才は、10のうち4ぐらいまではなにも考えずにできてしまいます。しかし、凡人は、その4まで到達するのが難しい、つまり、天才だった人には、1から4までを導くことができないのです。

天才からすると、『なんでできないのかがわからない』ということです。しかし、チームにいるのは、私のような凡人がほとんどです。だからこそ、天才だった監督は、目線を下げられるかどうかが重要ですし、私のような凡人監督は、虚勢を張らずに、1から教えれれているかどうかを、常に頭に入れておく必要があります」(122ページ)この原さんのご指摘も、ほとんどの方が理解されると思います。しかし、これまで私が事業改善をお手伝いしてきた会社の中には、経営者の方が、部下の育成に苦心している会社が少なくありませんでした。

というのは、原さんの言う「天才」、すなわち、営業のスキルや、製品づくりのスキルが高い人が起業したものの、その人には部下育成のスキルが低いために、それがボトルネックとなって、事業が滞ってしまうようです。経営者として功績を残すには、自分のスキルが高いだけでは足らないということは、理解ができていそうで、意外と見逃されているスキルであると、私は感じています。

2022/8/4 No.2059

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