会議では正しい結論はでないが…
[要旨]
米国の作家のベッカー氏らの研究によれば、「グループの議論を通じて定量的予測はより正確になる」ものの、「最終的な判断を下す際は、方向を誤りかねないこ」そうです。したがって、「マネジャーはグループディスカッションを判断の場ではなく、事実を共有する場に限定」しなければなりません。
[本文]
米国の作家のジョシュア・ベッカー氏らのハーバードビジネスレビューへの寄稿を読見ました。ベッカー氏らは、「グループで問題を議論すれば、集合知が働き、すぐに解決策を見出せると思われがちだが、我々の研究よれば、最終的な判断を下す際は、方向を誤りかねないことが明らかになっている」と述べています。
その理由は、「社会力学が働くことにより、議論を通じて定量的予測はより正確になるものの、その同じ社会力学が、しばしば、誤った少数意見を多数意見に変えたり、不確かで疑いの余地がある、過半数をぎりぎり超えた多数意見を圧倒的なコンセンサスへと変えたりするから」ということです。ビジネスパーソンの中には、「会議」や「ミーティング」に否定的な評価をしている人を、しばしば、見かけます.また、「会議はむだ」というような内容の書籍も少なくありません。
しかし、私は、会議やミーティングは、すべてを否定されるべきものではないと考えています。なぜなら、「組織の三要素は、共通目的、貢献意欲、コミュニケーション」と言われますが、組織活動にはコミュニケーションは欠かせません。そして、会議やミーティングは、コミュニケ―ションの形態のひとつだからです。一方で、私も、「社会力学で、少数意見が多数意見に変わる」という、ベッカー氏らの指摘は正しいと思います。
ただし、同時に、ベッカー氏らは、「議論を通じて定量的予測はより正確になる」とも述べており、「マネジャーはグループディスカッションを判断の場ではなく、事実を共有する場に限定するべき」と述べています。したがって、「会議やミーティングは、正しい結論を導くことができない」ものの、それだけの理由で、否定的に評価されるべきではないと、私は考えています。
繰り返しになりますが、会議やミーティングは万能ではないものの、組織活動には欠かせないものなので、経営者や管理者は、その特徴をよく理解して、うまく組織を運営しなければならないということです。ちなみに、取締役会や株主総会など、法律に基づいて意思決定を行う会議は、この記事の指す、会議やミーティングの対象ではないことは、念のため付言しておきます。
2021/10/22 No.1773