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純資産の大きい会社は投資に適切

[要旨]

株式投資をするときは、上場している会社の決算書(有価証券報告書)をインターネット(EDINET)で閲覧できるので、純資産の大きい会社の株式を選ぶことが妥当といえます。また、このような方法は、銀行が行う融資審査においても行われています。

[本文]

今回も、前回に引き続き、嘉悦大学教授の高橋洋一さんのご著書、「明解会計学入門」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、会社が資金を調達する方法は、融資契約、社債発行、株式発行があり、融資は借用証書を差し入れてお金を借りる契約、社債は会社が発行した債券を投資家に引き受けてもらう方法、株式は株券を発行し株主に購入してもらう方法という違いがあるということについて説明しました。

これに続いて、高橋さんは、上場企業の株式投資をするときに、どのように投資先を選べばよいかということについて述べておられます。「上場企業の決算書は、もれなくオープンになっている金融庁の『エディネット』というサイトで企業名を検索すれば、たちどころに有価証券報告書を閲覧できる。あの企業に投資しようか、この企業に投資しようか……なんて悩んだとしても、決算書が閲覧できるとなれば心強い。

会計がわかっていれば、候補にあがっている企業、すべての有価証券報告書を見比べたうえで、投資先を判断できる。この判断穂応報は、銀行融資担当者の仕事に匹敵するといってもいい。融資担当者が、企業の何を見て融資判断を下すかといえば、やはりメインは決算書なのだ。では、投資すべきかどうかは、どこを見て判断したらいいか。ここまでくれば、もうわかる人も多いのではないか。結論からいえば、BSの『純資産』である。

前に、『グロス』と『ネット』の話をしただろう。どれだけ負債があるか、どうれだけ資産があるかを見ても、その企業の本当の財務状況はわからない。資産から負債を引いた純資産が多ければ、その企業は、より安全に投資できる優良企業ということだ。つまり、純資産が大きいということは、資産(=負債+純資産)が負債よりかなり大きいとなる。その企業の社債にすれば、資産が目減りしても、負債の金額を上回っていれば、社債の償還には支障がない。純資産が大きいということは、その可能性が大きいということになるので、社債への投資も安全というわけだ。

株式への投資はどうだろうか。純資産に対応する資産が株式の価値に対応する。ざっくりいうと、純資産を発行株式数で割れば、1株あたりの純資産額になるが、それが理論的な株価ともいえる。純資産が大きいのは、株価が高いということでもある。株式の場合には、1株あたりの純資産が低いものを買って、その後の純資産額の増加を期待するという手法が一般的なので、純資産が現時点で大きいというのは、必ずしも株式投資に適切とはいえない。しかし、この場合でも、純資産の今後の予想がどうなるかという点で、やはり純資産額は注目される」(94ページ)

投資をしたり、融資をしたりする会社を選ぶ際は、高橋さんの述べておられるように、純資産の大きい会社の方が、回収の確実性が高いので、安心できるという側面があります。ところで、本旨からずれますが、銀行が上場会社に融資をする場合、信用面、すなわち、回収できるかどうかという面では、あまり厳格な審査は不要と考えられます。なぜなら、証券取引所に上場していることで、すでに高い信用を得られているからです。もう1点、注意が必要なのは、貸借対照表の資産の額は、必ずしも時価であるとは限らないということです。例えば、土地は、取得後に地価が上昇しても、特殊な例を除き、その上昇後の価額は貸借対照表に反映されません。

逆に、地価が下降したときも、一定の条件を満たしたときに、下降後の価額を反映することになっており、タイムリーに反映してはいません。このようなルールは、子会社株式など、長期保有目的の有価証券についても同様です。さらに、減価償却が終わり、貸借対照表には価額が計上されていない機械でも、物理的に使用されているということもあります。逆に、固定資産に計上されている固定資産であっても、時価よりも高いという場合もあります。とはいえ、M&Aを行う場合を除き、一般的には、貸借対照表の資産の額が、その会社の保有する資産の額と、ほぼ、同額ととらえて財務分析を行うことに問題はないでしょう。

ただ、希に、意図的に資産が多く計上されていることがあります。これは、いわゆる、粉飾決算が行われているということです。銀行の融資審査では、高橋さんの述べておられるように、資産の部の金額、純資産の部の金額も見ますが、さらに、それらが粉飾されずに、正しい会計のルールに従って経常されているものであるかどうかも、確認しながら分析していきます。ただし、粉飾されているかどうかを確認することは、会計について学び始めた方には難易度が高いので、当面は、自己資本比率や、流動比率、固定比率、固定長期適合率などの財務分析のみの分析で問題ないと考えます。

2024/6/21 No.2746

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