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意味のある非効率こそが商品の魅力に

[要旨]

相模屋食料の社長の鳥越淳司さんは、業績が振るわない同業他社を、多く買収して来ましたが、買収する会社の業績は、数字だけでなく、一見すると非効率に見える強みも評価するようにしてきたそうです。すなわち、会社の評価は定量評価に偏りがちですが、定性評価も加味する必要もあります。

[本文]

日経ビジネス編集部の山中浩之さんのご著書、「妻の実家のとうふ店を400億円企業にした元営業マンの話」を拝読しました。同書は、山中さんが、相模屋食料の社長の鳥越淳司さんへのインタビューを書籍にしたものです。鳥越さんは、雪印乳業の営業マンから、相模屋食料の役員に転じてから、ザクとうふなどのヒット商品を開発し、書籍のタイトルのように、同社の売上を400億円に押し上げた方です。

現在、同社は、業績が不振なとうふ製造会社を買収し、グループ売上を伸ばしてきましたが、これについて、鳥越さんは、次のようにお話しておられます。「(相模屋食料が買収した会社は)技術力はあって、おいしいおとうふを作っていた。でも、本業以外の何かのつまずきで、赤字になってしまうこともあるわけです。例えば、海外進出で失敗したり、世代交代で先代のやってきたことを全否定したら、お客さまにそっぽを向かれたり。

そこで、外部の方、金融機関さんやコンサルティングの方とかがアドバイスしたり、方針に介入したりする。大抵の場合、そういう方たちは、おとうふの作り方は知りませんし、自分でやってみようともしません。だから、数字しか見ない。すすると、『ここがだめですね、あそこがだめですね、これをちゃんとしましょう』が始まる。(中略)もちろん、ただのムダは排除すべきですが、『数字だけ見ていても、意味がわからないコスト』もある。その会社が守ってきた、意味のある非効率こそが、商品の華だった、魅力につながっていたということが、ものすごく多いんです。

非効率だからと美学を捨てて、数字の世界へ突入していくと、商品が魅力を失って、会社がさらに苦しくなっていく。(中略)工場の人は、内心、『これはまずい、お客さまが離れてしまう』と感じつつも、数字の圧力に屈して何も言えずに、心を殺して白い塊を作っている。ただ、一方で、この美学って、数字で測れない、見えないものなので、捨て切ることもできないんですね。『これは間違っている』という声が、現場の人の心の中で、いつまでもくすぶっているというか」(24ページ)

この鳥越さんのご指摘は、ひとことで言えば、会社の評価は定量評価だけでなく、定性評価もしなければならないということだと思います。私も、この鳥越さんのご指摘は正しいと思います。ただ、よく誤解して(時には、意図的に曲解していることもありますが)、「何でも数字だけで評価してはいけない」と主張することで、業績が低迷していることを正当化しようとする経営者の方もいます。しかし、営利事業は利潤を追求することが最大の目的なので、定性評価は、最終的に利潤につながるかどうかで判断されなければなりません。これを言い換えれば、定性評価は、非効率を肯定する方便ではないということです。

しかし、事業の改善のための活動を拒むために、「我々は、お金のためだけに事業をしているのではない」と、言い逃れをする経営者の方もいますが、それは明らかに間違った主張です。話しを戻して、鳥越さんのご主張は、数字だけに注意を取られ過ぎると、真に利益に貢献している要素を見逃してしまうので、数字以外の面からも事業を分析しないと、正しい改善活動を導くことができないというご意見だと思います。これは、コンサルタントとして。私自身も気をつけなければならないことであり、木を見て森を見ないというようなアプローチは、避けなければならないと思います。

2023/11/29 No.2541

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