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リーダーシップより調整能力

[要旨]

利害関係者の利害を調整することは、事業の拡大の妨げになると考えている経営者の方もいるようです。しかし、あらゆる利害関係者は事業の拡大を望んでいるので、その考えは誤りであり、組織的な活動である事業活動にとって、利害の調整は重要なプロセスです。


[本文]

前回の記事で、経営者の役割は、利害関係者の利害を調整し、バランスをとることであると書きました。これに対して、「本当に、経営者はバランスをとるだけでいいのか?」と疑問を持つ方もいると思います。これは、裏を返せば、「事業を拡大させるには、利害関係者すべてに配慮していては、身動きがとれなくなるので、もっと、売上を獲得する活動に注力すべきだ」ということだと思います。

しかし、事業を拡大させたいと考えているのは、経営者だけではありません。従業員も、勤務している会社の事業が拡大して欲しいと考えているでしょう。仕入先の会社も、その会社から見た顧客の事業が拡大すれば、自社の売上も増えるので、やはり、事業拡大を望んでいると言えます。

銀行や株主から見ても、資金を提供している会社の事業が拡大ることは、安心できる要因になるので、事業拡大を望んでいることになります。こう考えれば、事業の拡大を望んでいない利害関係者はいないので、顧客以外の利害関係者に配慮することは、事業の拡大の妨げにはなりません。それでも、利害関係者の意見に耳を傾けることに抵抗を感じるのは、独善的に活動をしたいと考えているからではないでしょうか?

でも、会社は組織であり、事業活動は組織的な活動なので、経営者が独善的であれば、それでは組織的な活動ではできなくなります。事業活動は組織的活動であるとすれば、経営者は、まず、組織的な活動をうまく機能させること、すなわち、利害関係者の利害の調整が最も重要な役割であるということになります。ただ、この「組織の論理」を理解している経営者の方は、特に中小企業では、まだ少ないのではないかと、私は感じています。

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