悪人が入っても善人になって出ていく
[要旨]
岩田松雄さんによれば、スターバックスコーヒーのパートナーは、思いやりをもって働いているために、利用者にも影響を与え、混雑しているときは席を譲るようになっているそうです。このように、自社の独特の雰囲気を作ることで、自社が望むような顧客を得ることができ、差別化を図ることができるようになります。
[本文]
今回も、前回に引き続き、経営コンサルタントの岩田松雄さんのご著書、「今までの経営書には書いていない新しい経営の教科書」を読んで、私が気づいたことについて説明したいと思います。前回は、企業ミッションの浸透や、権限委譲の実施によって、従業員たちはマニュアルに縛られず、質の高いサービスを提供できるようになり、競争力が高くなるということについて説明しました。これに続いて、岩田さんは、スターバックスコーヒーの店の雰囲気の大切さについて述べておられます。
「スターバックスの社長時代、本当にお店のパートナーの皆さんの優秀さと、思いやりあふれた行動に、何度も驚かされていました。『悪人が入っても、善人になって出ていく』と、本気で言われるほど、お店のカルチャーは素晴らしいと思いました。(中略)リッツ・カールトンの高野元社長に教えていただいたことですが、『コーヒーショップのお店が混んでいて、目の前の積に自分の荷物を置いていて、他のお客様が来ても、普通のコーヒーショップなら、知らない顔をしている人が多いのに、スターバックスのお店では、サッと荷物をどけてくれる』そうです。
つまり、スターバックスのお店では、お客様も素敵なのです。そういえば、お客様の使用されているコンピューターは、アップルのコンピューターの比率がとても高いように感じます。(中略)ニューヨークのジュリアーニ元市長が実践したことで知られた、『割れ窓理論』があります。街が荒れ果て、割れ窓や落書きがあちこちにあったりしたら、それだけでさらに街は荒れていく。割れ窓があると、自分も割ってやろうと思う人間が出てくる。だから、割れ窓や落書きをどんどんきれいにしていくことが、治安を良くする方法になるという理論です」(227ページ)
店の雰囲気は、従業員だけでなく、利用者にまで影響を与えるというのは、ちょっと不思議な感じがします。でも、それは、スターバックスコーヒーが、コーヒーを提供する店ではなく、同社の中興の祖であるハワード・シュルツが提唱した、サードプレイスを提供しようとしているということによって実現しているのでしょう。だから、スターバックスコーヒーは、敢えて、注文を受けてからコーヒーを淹れることによって、短時間でコーヒーを飲んで帰ろうとする顧客を排除しているようです。
したがって、自社が「よい顧客」を増やそうとする場合は、スターバックスコーヒーのように、自社の提供する「商品・サービス」を明確にし、それに合致した「雰囲気」を作ることで、それを実現できるようになるでしょう。ただ、これも一朝一夕では実現できない手法なので、一日でも早く着手することが大切です。
2023/6/12 No.2371
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