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私とアルゼンチンの朝

こんにちは、いとさんです。

毎朝遅刻すれすれで起床して、まるでゾンビのように意識もないままルーティンになっている身支度を終え、自分の為に随分前に焼かれた冷えたトーストをかじって、僅か15分足らずで家を出る。駅のホームに到着すると同時にやってきた電車に乗り込み、何食わぬ顔をして会社へ出勤する。女子としていかがなものかしらと思える日常を送っておりましたが、これが学生の頃から全く変わりません。母には散々叱られ「はよ寝えへんからや」「やる気の問題や」とよく言われました。しかし困ったことに早く床に着いたとしても結果は同じでした。私はめっぽう朝が弱いのです。

アルゼンチンで暮らし始めた頃、それまで順応していたつもりはありませんでしたが、六時半に起きる生活に身体が慣れていた為か、決まった時間にぱちっと目が覚めました。冬で日が昇るのが遅く、私が目覚める頃は辺りはまだ真っ暗でしたけれど、やる気と好奇心に満ち溢れていたので得意の二度寝は暫く封印していました。薄暗い中、コーヒーを入れたりしている間にだんだん空が明るくなっていきます。時々霧がかかってもやっとした中にじわじわ光が滲んでくる幻想的な朝もありました。

ふわふわと心地の良い世界から、いきなり物凄い剣幕で鳴り響くアラームの音で現実に引きずり戻される朝。お日様が照らし出す幸せを見つけることの楽しさを知ってはいますけれど、その世界へ強制的に戻されるあの瞬間だけはどうしてもお日様を恨めしく思ってしまいます。まだこっちの世界にいたいのに。もう少しここで解放されていたいのに。そんな自分を説得しきれずに、大体いつも起床時間が遅くなり、残されたほんの少しの時間で命を削られるような思いをしながら慌ただしく駆け出していく、そんな日々と少しの間距離を置けることに私はほっとしていました。

アルゼンチンでは生活改善も少し心がけたいと思っていたので、朝ごはんを食べるようになりました。学生の頃から食べていないですから、実のところあまり身体が欲しがりませんでした。それを無理に食べる必要はないですから、ほんの少し何か齧る程度です。東京に世界の朝ごはんが食べられるお店がありますけれど、友達に連れられて行ってから気に入って、その後も何度か訪れました。ここのお料理を見ていますと、世界中の人は朝から沢山準備してしっかり朝ごはん食べてはるんやなぁと思いますけど、このお店でアルゼンチンの朝ごはんが登場することはなさそうですね。残念ですけどみんなが目を輝かせて喜ぶメニューがありません。こちらの方々はあまり大そうなものを召し上がられないようです。

アルゼンチンの一般的な朝食はmedia lunaと呼ばれる柔らかいしっとりしたミルクパンを思い出させるクロワッサンとジャム、コーヒーのセットが挙げられます。喫茶店のモーニングのようですね。南米らしさと言えば、コーヒーの代わりにマテ茶を飲むところくらいでしょうか。私も朝マテ茶を飲むことがあります。マテ茶と一緒にフルーツやトーストを食べる人が多いようです。

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media luna にjamón(ハム)とqueso(チーズ)を挟んだ食べ方も親しまれています。

facuturaと呼ばれる菓子パンのようなものやマフィンなど、私がおやつの時間に食べると思っていたものを朝食代わりに食べることがあります。菓子パンとマテ茶、この組み合わせは悪くないのですけれど、私はやっぱりお茶の時間に頂きたいなと思います。元々アルゼンチンの食卓には野菜があまり上がらないようですけれど、朝ごはんも同様のようでよく考えてみれば糖分か炭水化物しか摂取していないような気がします。

もちろん朝ごはんは人それぞれですから、アルゼンチンのお友達の中には手作りのヨーグルトやオートミールを食べている人もいます。特に若い世代は健康に気を使っている人が多いように思います。怠け癖がある私から見れば、せっせと働きながら朝食の為の準備も怠らない彼らの生活は感心させられるばかりです。自分の質素な朝ごはんと比べて見ると、ところ変われど「やる奴はやるし、やらん奴はやらん」もんやなと改めて自分に気付かされました。

いとさん

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