さらなる失業改善の余地は?|迷想日誌
総務省の「労働力調査」によりますと、6月の完全失業率は前月比0.1ポイント低下して2.3%と再び低水準に向かっています。
多くの産業では人手不足に見舞われ、東京商工リサーチの調査では、今年1~7月に従業員退職などによって起きた倒産は227件に達したとしています。
このような状況が続いているにもかかわらず、労働者の賃金水準が目に見えて上昇しない原因はどこにあるのでしょうか。
賃金が上昇しなければ、内需が拡大せず、内需が拡大しなければ、GDP(国内総生産)の拡大もありません。
GDPが拡大しなければ、日本の国力はさらに低下し、政治・経済両面における存在感や発言力が低下してしまいます。
つまり、日本国民のさらなる貧困化が進んでしまいます。国民の生死にかかわる安全保障面にもマイナスの影響が及ぶでしょう。
さきごろ厚生労働省がまとめた平成30年の「雇用動向調査」にも賃金上昇の鈍さが現れています。
転職により入職した労働者の賃金変動状況を詳しくみますと、転職によって賃金が減少した割合が34.2%で、前年比1.2ポイント上昇してしまいました。しかも、1割以上減少してしまった割合が大部分となっています。つまり、転職しても賃金アップに結び付かないケースが増えているということです。
考えられるのは、完全失業率がさらに低下する余地があるということです。「労働力調査」では、完全失業者が162万人滞留しています。
減少数は前月比6万人です。要するに、失業状態の就職待機者が未だ少なくない状態にあります。
2年前は200万人弱でしたから、傾向的には減少していますが、まだ減少の余地がありそうです。
「雇用動向調査」でも、平成30年中に入職した労働者のうちそれ以前に1年以上職に就いていなかった労働者が270万人もいます。
職に就いたことがない者、または長期間職に就いていなかった者が30年中に雇用市場に多く参入したことになります。
賃金上昇が鈍い最大の原因は、政府のマクロ経済政策が「逆向き」であることですが、雇用統計的にも、まだ失業改善の余地があるといえそうです。
日銀による異次元緩和が雇用情勢のV字改善を呼び込みましたが、ほとんどこれで終わっています。日本はいつまでGDP劣化を続けるのでしょうか。将来が不安です。
労働新聞編集長 箱田 尊文
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