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再び「職務基準」に脚光!|迷想日誌

日本企業の人事賃金制度はどこに向かっているのか、再び関心が高まっているようです。
というのも、ここ数年で「職務型」の人事賃金制度を導入する企業がめだってきていて、某コンサルタントでは過密スケジュールで企業指導を行っていると話しています。
先端技術開発を加速するには、やはり欧米並みの職務基準が必要なのでしょう。

バブル崩壊以前の日本経済絶好調時代では、職能資格制度を代表とする能力基準の人事賃金が主流を占めていました。
能力基準とは、社員の能力を客観的に測定して賃金などに結び付けるという考え方ですが、社員の能力を客観的に測定できるわけもなく、結果として勤続年数や年齢が基準となり、年功運用に行き着くことになります。

経済絶好調時代ならそんな非効率も許されていました。
長期安定雇用が保障され、しかも潤沢な研究開発費や接待費の下で社員も安心して仕事に取り組むことができ、その結果、日本や日本企業が世界ナンバーワンに躍り出たわけです。

しかし、経済政策の失策を要因とするバブル崩壊後は、アメリカをはじめとするハゲタカファンドが大手を含む日本企業に照準を合わせてきました。
企業価値大暴落により格安で日本企業を買収する動きが活発化したのです。
日本企業はこの動きに反応し、できるだけ早期に経営立て直しを図るための一環として、人事賃金制度の大幅改革に着手し、この時から能力基準からの離反が始まりました。

ただ、能力基準からの離反と職務基準への移行が急激過ぎたため、ある程度経済が回復した段階で一旦立ち止まらざるを得ませんでした。
職務基準による成果主義の急拡大、年俸制度の普及といった傾向にブレーキが掛かったのです。

そして、現在、また日本企業に危機が訪れています。先端技術革命に乗り遅れるかもしれないという危機感です。
ノーベル賞受賞などで、日本の素材産業はまだ戦闘能力を有していますが、重要な製品産業ではほとんど戦闘能力がなくなっています。
中国に比較すると2周りは遅れているとの声もあります。

このため、一定の資格や役職に就いた段階で職務基準の人事賃金制度を適用し、業務成果を厳格にチェックする仕組みとして効率化を図る必要性が高まっているのです。

労働新聞編集長 箱田 尊文

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