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2022J1第34節 ヴィッセル神戸vs横浜F・マリノス プレビュー ~Terminal Port~

大学院生の赤松先輩と20歳の青人は同じフットサルサークルの先輩後輩。マリサポの同志である2人は、会うといつもマリノスの話をする。

【プロローグ】


青人:
今シーズンも残すところあと1試合になってしまいました、、

赤松:
早いよなぁ。

青人:
まあそもそもいつもより1ヶ月短いんですけどね。

赤松:
たしかに。ダウンを下ろさずにシーズンを終えるのは初めてだ。

青人:
ですよねw
まずは浦和戦、勝てて良かった!

赤松:
ほんとにな。

青人:
ケチャップドバドバでしたもんね。

赤松:
まあ出るときは出るw

青人:
過去2戦と比べて前から出てきてくれて助かったって感じがしました。

赤松:
そうね。

青人:
浦和はスペースを与えてくれてましたね。

赤松:
これが必ずしも悪手とは言えないのが難しいとこ。やっぱりマリノス相手に押し込まれ続けるってのは相手からするとすごく嫌なんだよね。

青人:
それ、プレビューでも言ってましたよね。

赤松:
そう。自陣から脱出できず、何もさせてもらえない状況ってのはキツい。まあ結局途中で5-4-1(後半から5-3-2)の撤退守備に切り替えたわけだけども。

青人:
とにかくここで勝てたのは大きくて、残すところ神戸だけになりました。

赤松:
彼らは今何位だっけ?

青人:
12位です!

赤松:
だいぶ上がってきたなw

青人:
前節川崎に負けるまで5連勝中で、後半戦首位だったらしいですよw

赤松:
そうみたい。ようやくチームが噛み合ってきた感じだね。

青人:
ACLの借りもあるし、絶対に勝ちたいです。

赤松:
そうだな。




【最近のヴィッセル神戸】


青人:
最近の神戸はどうですか?
一時余るくらいに外国人選手ばかりだったのに、今やスタメンがオール日本人みたいですね。

赤松:
うん。そこは残留争いに身を置いて戦うなかで、やはり強度が求められるサッカーになったからだよ。

青人:
かつての"バルサ化"は一体どこへ、、

赤松:
そうも言ってられない状況になっちゃったからしょうがない。

青人:
なるほど。

赤松:
基本的には非保持ベース。ミドルブロックを構えたところから、スイッチを入れて奪いに行く。

青人:
4-4-2ですよね?

赤松:
そうね。2トップの大迫と小林祐希がアンカーを消して、左サイドハーフの汰木が外切りでプレッシャーをかける。

青人:
外切りってことは中に誘導するのか、、

赤松:
そう!ボランチがスーパーだから奪いどころを中に設定するのは至極真っ当だよね。

青人:
山口蛍と大崎玲央ですね。

赤松:
この2人がとにかく神戸にとってなくてはならない存在。

青人:
ほう、、それはどのようにですか?

赤松:
攻守両面で広いスペースをカバーするから。ゾーン2非保持では前線が入れるプレスのスイッチに呼応して彼らがボールハンターとなるし、攻めるときは前に出て行って攻撃の厚みをもたらす。

青人:
まさにダイナモって感じ。

赤松:
ほんとそんな感じだよ。サイドハーフが前に出て奪いに出られるのは、山口と大崎のカバー範囲が広大だから。例えば川崎戦だったら、マルシーニョにドリブルで仕掛けられた場面でも山口がサイドバックのサポートをするために全速力でサイドに出張したりもするし。

青人:
とにかくボランチによって支えられているチームだということはよくわかりました。残留争いに身を置くなかで、このダブルボランチの組み合わせが定着したのは非常に大きそうですね。

赤松:
まさにそうだと思う。

青人:
他にこのチームの特徴ってあります?

赤松:
そうだね。あとは前進手段かな。
まず前提をお話しすると、神戸が難しいのは、ボールを安定して握れる試合と握れない試合があるということ。その状況下で、一戦必勝を達成するには、あらゆる相手に勝てるチームである必要がある。

青人:
どんなチームにも勝てるってことですよね?

赤松:
そう。

青人:
それと前進手段ってどうつながるんですか?

赤松:
ボールを持たされたときの攻め方とボールを持てないときの攻め方の両方を用意しておくってことだね。

青人:
引いた相手も崩せるし、プレスかけられても剥がせるしってことでしょうかね?

赤松:
ざっくり言うとそういうこと!例えば外誘導のブロックを組まれたときは、左サイドからショートパス主体で前進する。キーポイントは汰木のカットインで時間を作れること。

青人:
マリノスで言うところのエウベルみたいな感じですか!

赤松:
まあそんな感じ。逆に前から奪いに来る相手に対しては、右サイドで前進する。GKもしくはDFラインからのロングボールで武藤や山川に競らせる。

青人:
左サイドと全然違いますね、、

赤松:
時と場合に応じてこれを使い分けられるのが神戸の強み。それができる選手の質もあるしね。

青人:
なんだか強そう、、

赤松:
ざっくりまとめると、選手の個の質や強みから逆算した構築であって、これはここ数年神戸が取り組んできたことの延長線上にあるもの。だけど、今はそこに強度が備わったことで、より戦えるチームになった。

青人:
相手の戦い方に応じた複数の攻め方があるって強いですよね。

赤松:
んね。しかも国内なら大抵の相手にはそれで優位に立てるから。武藤を空中戦で易々と凌駕できるサイドバックはなかなかいないし、、とかね。

青人:
なんだか怖くなってきました。




【試合展開の予想】


青人:
さて、この試合はどうなるでしょうか?

赤松:
前提として、マリノスに対して終始押し込まれる展開は望んでいないというのはある。

青人:
浦和と同様に、ですね。

赤松:
そう。そこをどう考えてくるか。マリノスのセンターバックがボールを持ったときに大迫と小林の2トップがボランチへのパスコースを切りながら前に出てくる頻度が平時より増えるかもしれない。

青人:
それってマリノス的にはどうですか?

赤松:
剥がせれば、間延びを強いて、マリノスが得意な構図に持っていくことができるよね。

青人:
その反面、奪われたらピンチですよね?

赤松:
もちろん。ノエスタのピッチはローション撒いたんかってくらいよく滑るし、いつもみんな苦労しているね。

青人:
たしかにw
直近の試合見ても、敵味方問わずツルッツルしてます、、

赤松:
まあそこは上手くやってくれると信じたい。
多少盤面的な話をすると、外切りで前に出てくる神戸のサイドハーフ周辺でズレを作ることはできると思うから、そこでなんとか前進の糸口をつかみたいかな。

青人:
ズレですか?

赤松:
例えば汰木がマリノスのセンターバックにアプローチしてくるということは、サイドバックが空いているということ。そこから芋づる式に剥がしていく絵は浮かぶ。

青人:
良い絵ですねw

赤松:
立ち上がりからプレスをかけてくるとしたらこんな構図になるのかなと。

青人:
他にも可能性が?

赤松:
うん。前半はいつも通りのじっくり4-4-2セット守備で構えてくる場合。

青人:
ほう、、

赤松:
そこから後半15分(60分)めどにキャラ変をしてくる。

青人:
それはマリノスもよくやるやつですねw

赤松:
そう!神戸の直近の試合見ていると、後半やけにオープンになることが多くてね。これは狙って作り出しているみたい。

青人:
なるほど。でもリスク承知でなんでオープンにするんですかね?

赤松:
オープンスペースで強みを発揮する選手が揃っていて、尚且つそれで点が取れる自信があるからだと思う。

青人:
武藤や大迫だけじゃ飽き足らず、途中からイニエスタが入るわけですからね。

赤松:
彼らを狭いスペースに閉じ込めるよりも広いスペースを与えた方がこのチームの最大火力になる。変に緻密でコンパクトな戦術で縛るよりよほど強いって判断だろうね。ただし、、

青人:
ただし?

赤松:
問題はマリノス相手にもそれやってくるのかってこと。

青人:
ほう。

赤松:
マリノス相手にスペースを与えると、殴った以上に殴り返されるリスクがある。そこの収支をどう捉えているのかは気になるね。

青人:
たしかに。ガンバや磐田はそれを避けたくてコンパクトなブロックを組んできたわけですもんね。

赤松:
そういうこと。この点、神戸の交代策に注目かな。
オープン許容でとにかく速く攻めようってなると、汰木に替えて小田や佐々木を投入してくるはず。

青人:
なるほど。そこが一つ転換点になるかもしれないと、、?

赤松:
うん。いつも言っていることだけど、交代には意味があるから、そこを読み解くだけでもかなり監督の意図を汲み取ることができるよ。

青人:
そうですよね。とにかくこの試合では小田、佐々木をどこでどう使うかがキーポイントってことですかね?

赤松:
そうそう。

青人:
逆にマリノス視点ではどうですか?

赤松:
さっきも言ったように、神戸のサイドハーフが出てくる特徴を逆手にとってズレを作りながら前進していきたいってのは前提として、、

青人:
ええ。

赤松:
神戸のボランチを動かしてスペースメイクをしたいよね。

青人:
山口と大崎を引き出して、空いたスペースを使うってことでしょうか?

赤松:
まあそんなとこ。例えば浦和戦の前半に西村がしきりにサイドに流れてボールを受けるシーンがあったけど、、

青人:
はいはい。

赤松:
神戸戦でもその動きは大事になりそう。そうやってサイドに流れる西村に喰いついてくれたら、今度は他の選手が空くし。

青人:
なるほど、芋づる式だ。

赤松:
どんなに守備範囲の広いボランチだって、カバーできるスペースには限度があるわけで。そこはマリノス持ち前のスピード感で同時性を突き付けたい!

青人:
同時性、、?

赤松:
例えば、もぐらたたきで一度に5体もぐらが顔を出すみたいなこと。

青人:
それは無理ゲーだ、、w

赤松:
そういう構図を作り出せたら最高だね。

青人:
たしかにそうですね!

赤松:
正直、今の神戸はかなり強いと思う。伊達に前節終了時点で後半戦の成績で首位に立っていたチームではない。色んな手を出せるからね。
だけど、決して倒せない相手ではないとも思うんだよ。答えは、マリノスが積み上げてきたものの中にある。

青人:
うんうん。

赤松:
自分の中で、今の神戸に勝てる公算はちゃんと立っている。けど、それだけにとどまらないのがサッカーの難しさ。優勝のプレッシャーやピッチコンディションとか、そういう難しさにもどう打ち勝っていくかっていう要素もある。

青人:
色々な意味での強さが試されますね。

赤松:
だから特に現地に行く人は、そういう難しさに向き合う選手の背中を押すような応援だったり雰囲気作りをできたらいいよね。

青人:
スタンドも含めて戦う試合ですね、、!
胸が熱くなってきました。

赤松:
ほんとに。
今シーズンはすごく充実したシーズンだったし、最後笑って終わりたいな!

青人:
みんなで持って帰りましょう、横浜にシャーレを!



END


【エピローグ:皆様への感謝を込めて】


今回も読んでいただきありがとうございました。

この神戸戦をもって、2022シーズンのプレビューは完結です。
約8か月半前、もしも11/5の神戸戦が優勝が決まる試合で、そのプレビューを書けたら、自分はこの上ない幸せ者だと思っていました。
そしてその夢は、やがて現実のものとなりました。

ちなみに私がプレビューを書くに至ったきっかけであり、尊敬してやまない書き手は、過去にこんなことを書いていました。

プレビューを始めた頃にひとつの想像をした。
33節分を書き終えた時に見えるのは、頂上から見える景色という想像。
それが、現実のものになろうとしている。

勘のいい方ならいつの話をしているかわかったはず。
そう、我々は、3年前に味わった歓喜をもう一度味わうのにあと一歩のところまで来ました。

プレビューを書く者に与えられた特権は、他のみんなよりちょっとだけ早くその試合を楽しめること。

当日の両チームの戦術はどうぶつかるのだろう?スタメンはどうなるのだろう?
それだけにとどまらず、スタジアムの雰囲気やその場にいる自分の高揚感までを頭の中で想起させたりもします。

そしてこの神戸戦を迎えるヒリヒリ感は、今までにないものです。
まるで生きた心地がしません。
だからこそ書いていてすごく楽しかった。いつもより乱文になっているのは、そのテンションで書いているからです。

自己満足の域を出ないのですが、自己満足ができているだけ自分は幸せだと思います。


あと少しだけ、自分語りをさせてください。

私は2019年からマリノスを軸としたアウトプットの活動を行なっていて、今シーズンは、4年目でした。

プレビューにトライすることは早々に決めていたのですが、とにかく迷ったのはその形式でした。
プレビューやレビューは、一括りにしようと思えばできるのですが、様々な形式があります。

物語仕立てにしたもの、論説文調にしたもの、箇条書きにしたもの・・・

そんな中で私が選択したのは、対話形式でした。

完全な思い付きで始めたものでしたが、サポーターが抱える疑問を解きほぐすことができて、さらに自分の思考回路をそのまま文字として表現できるので、非常に書きやすく、各所で好評もいただきました。

ただ、最も苦悩したのが、登場人物のキャラ設定

赤松と青人という年の差大学生コンビは、どんな繋がりがあって、それぞれどんなバックグラウンドがあるのか。これは、対話の中で節々に出てくる登場人物のクセ(思考回路や言葉遣いなど)に直結するため、非常に重要です。
あとは小ネタ・例え話などを織り交ぜる際にも有用ですしね。

せっかくなので、少々種明かしをしようと思います。

①なぜ大学生という設定にしたのか

これは、私が大学生のノリや会話のトーンに親近感があって書きやすかったこともありますが、一番は特に大学生のマリサポに響いてほしかったからです。彼らは、自由で前向きな取り組みに時間と労力を使える特権階級だと思っているので。
たまにはサッカーの奥深い部分に興味を持ち、それが転じてプレビューを書いてみようと一念発起でもしてくれた日には、泣いて喜ぶ所存でした。

もちろん大学生に限らず、私が作成したコンテンツに感化されて何かアウトプットしてみようと思ってくれるのは純粋にめちゃめちゃ嬉しいです。それこそが私の活動指針なので。


②赤松と青人の人となり

赤松は、大学院生という設定以外の人となりは、そのまま私を投影したつもりです。20年来のマリサポで、サッカーの試合を一つのストーリーとして組み立て、語りたがるめんどくせえ性分です。

一方の青人は、普段授業中にスマホアプリのサッカーゲームで遊んじゃうような20歳の大学生マリサポという設定です。マリサポ歴は10年ほど。思考の傾向として、「べき論」で語りたがるという特徴を持たせたりしました。
(※本当はもう少し細かい設定を付けていますが、ここでは割愛します)


③書いていくなかで難しかったこと

二人の成長を描ききるのは、非常に難しかったです。
なにせ筋書きのない連載もののような作品で、あくまでも主目的は筆者が目の前の試合を楽しむために思考回路を文字化したもの。
特に赤松との対話を重ねる中で、青人を成長させるというのも面白いかなと思い、取り組んではみました。しかし、実際どのタイミングで青人が何に気づいて、そこからどう変わっていくかを表現することができませんでした。

正直、ここは優先順位として下げざるを得なかったというのが真相です。

なので、「青人が成長しすぎだ」とご指摘を受けたりしましたが、そこは受け入れていますし、本当はもう少し自分の中でこだわりたかったなぁと悔いが残るところであります。


以上、対話形式プレビューの振り返りでした。

最後になりますが、1シーズン通じて拙稿に目を通してくださった皆様に心から感謝したいです。
特に、過密日程にもかかわらず毎回読んで、さらには拡散までしてくださる方々には頭が上がりません。

このプレビューを通じて、読者の皆様がマリノスの試合を楽しむのに一役買えていれば本当に嬉しいです。

来季も基本的には毎試合のプレビューを書く所存ですが、まだ形式は決めていません。
今のところは、対話形式ではない形でお届けできればと考えております。もっと短く簡潔にしたいなぁと思ったり、、

引き続き、ロッドが出すあれやこれやをご愛顧いただけると幸いです。

次は、2022シーズンレビューでお会いしましょう。


ロッド

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