バカみたいな台風の話

生まれ育ちは沖縄県の伊良部島。
日本でも屈指の台風とバトルできる土地なわけ。

ちなみに
台風にまつわる「バカみたいな」話
じゃなくて
「バカみたな台風」の話ね


当時の僕は高校生。
恋やスポーツを終え、勉強なんて無視して毎日友達と馬鹿騒ぎするだけの毎日。
学校には枕を持参し、プロレスの番組が見たいと帰宅し、学校以外では空手とトレーニングとゲームと馬鹿騒ぎ。本当にそれが当時の僕の生活の全てだった。

進学しないことが決まっていた僕の適当な夏休みが終わり、遊びの延長である9月が始まって間もない頃、こんな話が入ってきた。

「今度の台風でかいらしいよ」

はっきり言うと台風に慣れていた。
物心がついた頃には毎年台風を経験していたし、昔はインフラも弱かったので停電や断水なんてのは恒例行事。
ロウソクを使った簡易的なランタン作りや、断水を見越した貯水テクニック、非常用の食事や停電時の遊び方など、もはや「アトラクション」的にワクワク楽しんでいたのかもしれない。

なので
「今度の台風でかいらしいよ」
なんて言葉を聞き流すのは容易で、しっかり受け入れるほどの危機感と知能は足りてなかった。


そんな9月
結構引くレベルの台風がきた。


台風を見越してか、沖縄の家は鉄筋コンクリート構造が多い。
そんな頑丈なのに「この家飛ぶんじゃね?」と感じる。
停電や断水など久しぶりに感じる夏の風物詩は、このとき僕に初めて「自然の脅威」を感じさせてくれた。


携帯の充電もできず情報は途切れ途切れでしか入ってこないのが、より不安を掻き立てる。

日本観測史上第〜位の最大瞬間風速です!らしい。


一夜か二夜かは忘れたが台風は去り、外の景色は一変していた。

なぎ倒された木々や電柱、横たわる車、窓や屋根の吹き飛ばされた建物。
ロープの切れた船は外国の領域まで流され、対処に当たった友達の父親はヘリで救助された。

仕入れとインフラ、どっちの関係か忘れたが商品の並べられない店舗。
見晴らしの良くなった雑木林。
一目散にお墓の確認へ向かう人。
車のドアを探す人。
車を探す人。

そして電気や水道が復旧しない。
1日、2日、3日待っても復旧しない。
雨水を利用してお風呂に入り、夜はロウソクで過ごす。
幸いうちの家庭は独立してガスのラインを整備していたため調理はできた。

最初はサバイバル感覚で楽しかたが、もちろんすぐ飽きた。
当時「メル友」だった女の子と連絡を取るのも充電が減るのが心配で控えたし、夏なのにアイスも食べられない。

完全復旧は一週間以上かかったので結構しんどかった。
冬だったら危険だよ。
冬にそんな台風なんてこないけど。

島唯一のコンビニは窓が破壊されてもなお営業を続けていて驚いた。


余談だが

台風になるとうちの学校は休校になる。
理由は「船が出なくなるので、隣の島から通っている先生が出勤できない」し「ほとんどの先生が船で通勤している」からだ。

風が強くてもそうだ。
5メートル以上の波の高さだと船が出ないので、上記の理由で休校になる。
その場合は一度学校へ行き、数少ない島に住んでいる先生が「謎の出席確認」を取り、そのまま全員帰宅する。

なぜ「謎の」出席確認なのかというと
「出席確認を取ったのに、なぜか『休校だったから』という理由で、その日の振替登校日が設けられるから。
あれは何の出席確認なのか。
なので僕は風が強い日は学校に行かない。
「台風の日に出席確認取れてないけど、休んでた?」と言われたが
「休校扱いなんだろウルセー」と反論し普通に殴られたな。

さすがに、その台風の時は規模が桁違いでそんな謎の登校は無かったと思う。


ちなみに、台風後最初の学校も行ってすぐ逃げて帰った。
「今日は授業は無しで掃除します」
と言われたのでそのまま帰って、復活したテレビのGAORAチャンネルでプロレス見ていた。


2019年の9月
あれから15年たち今は関東で過ごしているが、昨夜の台風が関東では珍しい大規模な台風だったので思い出し書いてみた。
電車の運行状況に翻弄されている様を見て、被害のベクトルが違うだけでインフラなんて関係ないなと感じたよ。


2年前かな
8年ぶりに地元へ帰省すると、この10年で一番でかいと噂の台風にぶつかってしまい空路が断たれネット番組の生放送を見送ったこともあったが、それはまた別のお話。

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