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前回に続き、映画ニューヨーク公共図書館について。まずはミーハーネタから。

NYといえば実はPUNK ROCKの震源地なのだが70年代半ば、その中心にいた“パンク・クイーン”と呼ばれるあのパティ・スミスが、またニューウェーブ系パンクの祖エルヴィス・コステロが、いきなり画面に出てきた時は興奮した。2人ともいい感じで歳を重ねており、相変らずカッコ良かった。特にパティは73歳だがカリスマは健在。自由で知的で、程よく角も残っていて。

そして当時NYサブカルの大御所的役割だったアンディ・ウォーホールの話題も。この図書館はアート系の蔵書も自慢で、彼も通い詰めていたそうだ。そして何冊も絵画コレクションを盗んだ足跡まで残っている。今となってはそれも逸話だ。現在も映画監督のスパイク・リーやウディ・アレンがアート関連資料を求めて頻繁に訪れるそうだ。。

 
本作の特徴の1つとして図書館の運営だけでなく、経営の裏舞台にも何度もカメラが入っていった点があげられる。年間400億円超の予算は、NY市と寄付でほぼ半々で成り立っているそうだが、官だけでなく民の要素がしっかりある点で、これは間違いなく“ソーシャルビジネス”と言えると思った。館長やコミッティーメンバーで行われていた予算獲得に関する議論は真剣そのもので、民の側面を強く感じた。

市長が変わっただけで市からの支援は大きく左右されるそうだ。いくら公共図書館とはいえ赤字を垂れ流しであれば、また市民からの評価が芳しくなければ当然予算は削られるであろうし、民間からの寄付額にも影響を及ぼすであろう。その緊張感がこの図書館を利用者にとり魅力的存在であらしめているのだな、と非常に印象に残った。ビジネスの要素がサステナビリティに不可欠なのだと。

 
コミッティーの議論でもう1つ興味深かったのはネット社会との共存姿勢である。21世紀に入り、インターネットが爆発的に普及しグーグルやヤフーといった検索エンジンが世界を席巻し、図書館はもはや無用の長物と言われたそうだ。これは映画館とレンタルビデオ、ネット配信と似た相関図だ。

ところがこの図書館は自らのミッションを「生涯の学びの場」と再定義し、積極的にデジタルコンテンツを自ら作成し利用者が図書館に来なくても良い努力をしたり、ネット環境のない人には機器の貸し出しをしたり、高齢者などにはネットの使いこなし方までサポートする。しかもそれらは全て無料で!

 
その発想の柔軟さには本当に感心した。単なる「本貸しの館」という従来概念では無く、普通の人々のための「生涯学習の場」と捉え直し、新しい時代の環境に合わせる形で自ら変化し、どのような形であれ知や情報の提供を約束するという方向を選んだのだ。これはダーウィンの言うところの進化だ。コロナでさらにライフスタイルが変化し、公共の場のあり方も変化するのだろうが、利用者の顕在、潜在のニーズに応えると言う姿勢がある限り、きっとこの図書館はサバイブすると思う。
 

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