見出し画像

【4】価値

前回のストーリーはこちらから

武:幸福とは苦痛が無い状態のことではなく、自らが選んだ価値に向かって行動する生き様そのもの、と言っていましたね。価値とは何ですか。

松:価値とは、その人にとって心の深い部分で最も重要で、毎日の生活の中で継続して続けていきたい行動のことです。

武:? ああ、目標を持てということですか。

松:目標と価値は違います。例えるなら、価値はコンパスです。人生という旅路において、進むべき方向を示してくれるものです。一方で目標は、いつかは達成されてリストから消えていくものです。例えば、金持ちになりたいという目標だけを持っていたとして、それが達成されたとしたら、その瞬間に生きがいを失ってしまいますよね。さらに、もし目標に行くまでの道のりが楽しめなかったら、人生の大半を有意義に過ごすことはできない。つまり金持ちになるためだけに、全然面白いと思えない仕事をしていたとしたら幸福とは言えない。目標を持つことも大事ですが、それ以上に、人生における価値を持つことが大事です。

武:先生は苦痛を受け容れながらも価値に向かうことが幸福と言いましたよね。それって、辛くても努力しろってことじゃないんですか。

松:受け入れるべきは、生きていく上で不可避な苦しみ、価値に沿った行動に伴う苦しみです。例えば、明確に何をしたいわけでもないのに、親の期待に沿うためだけに辛い受験勉強をしている人。つまり価値という方向性が定まっていない人がいれば、「さっさと止めてしまえ」と言うでしょう。一方で、つらい受験勉強を乗り越えた後、獣医師になって動物の世話をしたい、という価値を持っているのであれば、受験勉強に伴う苦しみを受け入れることは重要なスキルになるでしょうし、ある意味その苦しみを受け入れながら勉学を行う瞬間瞬間が、幸福といえるのです。

武:…まだよくわかりませんが、どうすれば価値が分かるのですか?

松:価値という言葉はわかりづらくて、専門家であってお十分に理解できていないことも多いので、大丈夫ですよ。では、自分にとっての価値を明確にする”魔法の杖エクササイズ”をやってみましょうか。
『私が今から魔法の杖を振ると、つらい思考や感情があなたにとって何の影響も与えなくなります。要は”無敵状態”になって、悩みに対して一切動じなくなります。そうなったら、あなたは何をやめて、何を始めるでしょうか?』

武:無敵になるんですか。イケメンにはなりますか。

松:イケメンにはなりませんが、例えば”なんで俺はイケメンじゃないんだろう”というネガティブな思考には一切動じなくなります。

武:…そうなったら、今みたいに働いていないかもしれないですね。私、他の人よりも稼いでマウントとりたいという気持ちだけで生きてきているので。劣等感にも動じなくなったら、ボランティアでも始めるかもしれませんね。あと、上司との頻繁な飲み会はやめると思います。付き合い悪いやつと思われたくないって気持ちだけで行ってるので。その分、彼女との時間を取ろうと思うでしょうね。

松:良いですね。武さんにとっての価値が垣間見えました。このワークで出てきた答えこそ、価値と思われるものです。ボランティア活動をすること、彼女との時間をつくること。もう少し抽象度を上げるなら、「思いやること」「愛すること」が武さんにとっての価値でしょうか。
劣等感と日々格闘しながら目標に向かって進んでいく人生も、有って良いとは思います。でも、価値に沿った生き方はどんな状況であれ今すぐにでも始めることが出来ます幸福とは、過去や未来のどこかに存在しているものではありません。今この瞬間に存在しているのです。思いやることに価値を置いているならば、武さんは今からでもボランティア活動を始めて、有意義な人生を送ることができるでしょう。

武:思いやること、愛することが私にとっての価値というのは、何となくしっくりきました。でも、そうした価値に沿った行動ばかりすることが幸福なんですか?そうした行動が時に疎ましく思えたりすることもありますよね。

松:その通りです。価値に向かって進もうとすると、感情や思考が邪魔をしてきます。”お前が人を思いやることなんて出来やしない”、”そんなことより一服しようぜ”と言ったように。”価値に向かった行動=楽しい行動”ではありません。ただ、価値に向かって進むことは、あなたの人生を深い意味で充実させるものとなるでしょう。次からは、価値へ向かって行動していくためにどうすれば良いのか考えてみましょう。

次回のストーリーはこちらから



あなたの人生が少しでも良い方向に向いた時、 サポート頂けるとうれしいです。