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欧州通貨の今後を考える

欧州通貨の全面安が継続しているが、この傾向はいつまで続くのか、そしてこの状況で優位性のあるポジションはなにかを考える。

1、ポンド・ユーロの対ドルレート変遷

2、フラン・ポンドの対ドルレート変遷

3、ユーロ・ポンドの対スイスフランレート

ポンド、ユーロが連動して下落しているのに対し、スイスフランは概ね安定している。


何故欧州通貨が下落しているのか原因を考えると、一番は英国のBrexitだろう。英国の「合意なきEU離脱」の現実化が近づいており、リスクを回避する動きから、欧州通貨から別通貨へ移動していると考えられる。スイスフランだけが下落していない状況からも、Brexitが最も影響を与えていることを裏付けている。(スイスはEU非加盟国)

3、アメリカ・欧州主要国の株式時価総額推移

Brexit以後も上昇基調であったが、現在は下落傾向である

さて、ユーロ安となれば欧州株式市場にとっては追い風となるはずであり、特に輸出大国ドイツにとっては大幅なプラス材料となるはずだが、現在は下落傾向となっている。株式市場もBrexitが原因で下落しているとの論調も見受けられるが、自分はそうではないと考えている。

4、ユーロのレートと欧州株式市場の変遷

欧州株式はユーロ安と共に上昇してきた
EU離脱方針が決まった2016年の国民投票以降、英国の内需関連株は売られやすい状態が続いた。ボルトン氏によれば、英国が合意なし、または「悪い」形でEUを離脱する場合、こうした銘柄の株価はさらに3割下落し、利益が「大幅に」落ち込む恐れがある。

株式市場の下落はFRBやECB・BOEの量的緩和縮小による影響が大きく、世界的な量的緩和の終了を反映した結果であろう。また景気減速の兆候から、世界的に株安となっているのであり、決してBrexitが株式市場に多大に悪影響を与えているとは考えづらい。もしそうであれば欧州株式だけもっと顕著な下落をしているはずである。株式市場の下落はBrexitが大きな原因ではないのである。

ECBは14日、9月に量的緩和を縮小し、12月には終了すると発表。前日にはFRBが2015年以来で7度目の利上げを決めるとともに、追加利上げを続ける見通しを示した。ECBは利上げについては1年以上先になるとしたが、世界的な金融政策シフトの影響は既にあらわれ始めている。
欧州中央銀行(ECB)は13日の政策理事会において、主要政策金利を据え置くと同時に、4年近くに及んだ2兆6000億ユーロ規模の量的緩和(QE)を終了させることを正式に決定した。ECBも非常時の緩和策から平時の緩和策に戻す、いわゆる正常化に向けた一歩を進めた。

では、原因を割り出したところで、今後のシナリオとそれに基づくポジションの取り方を考察していく。

・Brexit 4つのシナリオ

4つのシナリオ                          1、英国に有利な形で離脱                      2、EUに有利な形で離脱                       3、合意なく離脱                          4、国民投票やり直し→EU残留

3に比べれば他のシナリオは全て欧州全体にはプラスであると考えられる。3が起きた場合物流や関税の状況が全く決定されていないため、欧州全体がパニックとなると予想される。もし合意なき離脱が現実になった場合、大幅なポンド安・ユーロ安となる。

英経済は2019年3月末の離脱から短期間で景気後退に陥るとの見通しを示した。通貨ポンドは25%、英住宅価格は30%それぞれ最大で下落するなどと予測し、経済の混乱を警告した。

 3のシナリオが現在現実味を帯びており、それを為替市場が反映しているので、3のシナリオを回避さえすれば大小あれど欧州通貨にはプラスに働くだろう。簡潔にまとめるなら、「合意なき離脱が起こればポンド・ユーロ安、回避すればポンド高・ユーロ高」となる。

こうした状況でポンド・ユーロを対ドルや対円で取引するのは非常にリスクが高いので取引するべきではないだろう。今のところどちらのシナリオも考えられ、予測がつかない難しい状況である。

 では優位性のあるポジションをどうとるか、という話になるのだが、対円や対ドルではなく、対欧州通貨でポジションをとればいいのである。例えば、スイスフランやポーランドズロチ・スウェーデンクローナ等である。とはいえ、スイス以外は独自通貨ではあるものの、EU加盟国でありユーロの影響を多大に受けることから、現実的なのはユーロの影響が(比較的)少ないスイスフランをポンド・ユーロクロスでポジションを持つことだろう。

結論で言えば、GBP/CHF・EUR/CHFの売りポジションを持つことである。仮に合意なき離脱が起こればスイスフランの下落は避けられないものの、それ以上にユーロ・ポンドの下落が大きくなるので、大きなプラスとなる。合意なき離脱が起きない場合でもユーロ・ポンドの巻き戻しからマイナスになるように思えるが、欧州全体のリスクが軽減されることから、スイスフランも上昇し大きなマイナスにはならないだろう。

 とはいえ、このポジションでは合意なき離脱が起きない場合、マイナスとなる公算がある。そこで為替市場から別の市場に目を向け、そのリスクをヘッジしておくべきである。次に目を向けるは株式市場である。

・株式市場 リスクヘッジのポジション

 先述した通り、GBP/CHF・EUR/CHFの売りポジションのみでは、合意なき離脱が起きない場合のリスクがある。それをヘッジするためにはどう欧州株のポジションをとるべきか。単純に考えれば欧州株を買えば良いと思ってしまうが、そうではない。何故欧州株が下落しているかを思い出したい。

株式市場の下落はFRBやECB・BOEの量的緩和縮小による影響が大きく、世界的な量的緩和の終了を反映した結果であろう。また景気減速の兆候から、世界的に株安となっているのであり、決してBrexitが株式市場に多大に悪影響を与えているとは考えづらい。もしそうであれば欧州株式だけもっと顕著な下落をしているはずである。株式市場の下落はBrexitが大きな原因ではないのである。

株式市場はBrexitの影響が小さいのである。こうした状況下で合意なき離脱が起きない場合の欧州株式市場は、恐らく超短期的には機械取引による上昇が見込まれるが、量的緩和縮小から世界的な株安状況下にあることから、すぐに下落し、さらに欧州通貨の買戻しからユーロ高・ポンド高の悪影響を受け、再び下落傾向になるだろう。

つまり、欧州株の空売りこそがヘッジであり、更に単体でも優位性のあるポジションなのである。

 では欧州株の空売りについて別の観点からリスクを考える。それは量的緩和が再度行われる可能性がある、というリスクである。

・量的緩和の停止・再開

さて、現在アメリカ、EUでは量的緩和を縮小・終了する動きを見せている。このため、株式市場では長年続けられてきた量的緩和による増えたマネーを元に戻す、いわゆる金融正常化により下落傾向である。この動きがいつ終わるのか。

既にアメリカ、FRBでは利上げが行き過ぎている、という意見もあり今月・もしくは来年の早い段階で金利の引き上げは終えるだろう、という見方が多く、私もそう見ている。

しかしながら、利上げを停止したとしても既に利上げを行い済みであり、高い金利を維持することには変わりがないので、量的緩和路線に再度踏み切る、という状況はまだまだ先であると予測できる。少なくとも、現段階ではこのリスクは軽微である。利上げを停止したとしても、株式市場は下落傾向だろう。また、バランスシート縮小も併せて行っていることから、下落傾向は長引くと考えられる。

(FOMC)参加者の想定では中立金利は「2・5~3・5%」。次回12月のFOMCで利上げを決めれば、この下限に到達する。FRBはひとまず中立金利を目指して段階的に利上げを進めている。FOMC参加者の間では、「中立金利で利上げを打ち止めに」との意見と「好景気が続けば中立金利を少し超える水準まで利上げすべきだ」との声に割れており、パウエル氏は集約を図っていく。(共同)

 現状では、緩和リスクを鑑みて何かの株を買っていく必要はない。しかしながら時間の経過とともにそのリスクは上がっていくことになるので、徐々にリスクに見合った株を買っていくことがリスクヘッジとなるだろう。

以上

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