ドビーのようにベッドの上で飛び跳ねて壁に頭を打ち付けたくなる病気に年数回かかる
年に数回「私は悪い子!」「私は悪い子!」「私は悪い子!」と叫んで頭を掻きむしって荒れ狂いたくなる。
今ちょっとそんな感じだ。
もうそのスイッチが入ってしまうとすべてにおいて自分の無能さを感じさせられる。そのスイッチが入ったうえでの島暮らしは未来への不安でしかない。
もともと性格が大雑把で、物事を進めるときはガツガツとりあえず手を付けてから慎重になるのだけど、もう島に来てガツガツしかしてない。だからときどき豪快にミスってご迷惑をおかけすることがあるのだけど、恐ろしいことに島の人はみんな優しい。優しすぎる。私がどんなアホで間抜けな失敗をしても「大丈夫よ~」なんて言いながらサポートしてくれる。多分みんな前世でよっぽど悪いことをしたんだろう。現世できっと良いことしかできない呪いをかけられてるんだ。そのくらい優しい。もう本当に好きすぎる。好きすぎて思わず甘えてしまう。
そういう人しかいないから人に対する警戒心も無くなってくる。満員電車でリュックを背負ったまま押し詰めてくる目の前の人に心の中で悪態をついていた記憶が薄れる。街ですれ違う人をよけて歩く必要もない。なんなら自分から声掛けちゃう。今までにないほどに壁を取り壊して。
そんな生活をしていると、スイッチが入ったときにハッとする。
このままだとダメになる。
島での生活は快適そのものだけどこの先の自分が不安になる。
もっとしっかりちゃんとしないといけない!みたいな気持ちになれない。素の自分になりすぎて、今まで身に着けていったスキルが無くなっていく感覚におちいる。これはヤバいぞと思って手を動かしても全然続かない。たまらなく不安になる。つい最近までできてたことができなくなっているんじゃないか。さらに言えば、もし誰か自分を傷つけてくるような人に出会ったら、耐性が無さ過ぎて大いに傷ついてしまうかもしれない。
なのに人は青い海を見た瞬間「そんなに頑張らなくてもいいんじゃん?」となってしまう。海は恐ろしい。人の焦りを全て吸収しておおらかな気持ちにさせてくる。手を動かそうなんて考えているならば、目の前に落ちている漂流ごみひとつ拾って帰ろうと思わせてくる。
多分「今できることをやりゃあいいんよ」っていう海からのメッセージなのかもしれない。
そう勝手に解釈して、今日も私はスイッチを切り替える。
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