68年〜71年のスティービー・ワンダーが最高に良い(その1)
スティービー・ワンダーというと、70年代のニューソウル3部作『Talking Book』、『Innervisons』、『First Finale』、そしてその後にリリースされた超大作『Key of Life』がまず上げられると思います。もちろん、もしまだこれらを聴いたことがない方がいたら、まずそちらを先に聴いてもらいたいのですが、それ以前のスティービーのアルバムも良いものがあるのに意外と聴かれていないのではないか、と思い、今回は特に素晴らしい68〜71年のアルバムに絞って4回にわたってご紹介したいと思います。
68年〜71年のスティービー・ワンダーが最高に良い
スティービーは62年にリトル・スティービー・ワンダーの名でモータウンからデビューし、当時は天才ハーモニカ少年というキャッチフレーズで売り出されたようですが、次第に歌、演奏の才能が開花していきます。
当時のモータウンにはファンク・ブラザーズというバックバンドがいました。ベースのジェームズ・ジェマーソンを要とするファンキーでありながら親しみ易いサウンドと、同じくお抱えの作曲家、アレンジャーチームが作る楽曲を歌うスティービーは、モータウンを代表するスターへと登り詰めます。
一方、60年代後半より、アルバムで数曲、自作曲やプロデュースを行うようになっていましたが、72年発表のアルバム『心の詩』からは、完全セルフプロデュース、自作自演で、独自のサウンドを展開していきます。ほぼ一人で全ての楽器を演奏しシンセを多用した斬新なサウンド。それと同時に、それまでのモータウンとは完全に決別することとなります。
68〜71年のアルバムは、スティービーはすでに自我に目覚めながらも、まだモータウンサウンドの枠組みの中で自分を表現している様子が伺えます。スティービーの自作曲も多く、また、曲単位でプロデュースやアレンジも行ったり。
またこの時期はバックがファンク・ブラザーズであり、その後のスティービーサウンドとはまた違ったちょっと泥臭いグルーヴ感溢れる演奏が楽しめます。68〜71年の作品は、そんなスティービーのオリジナリティとモータウンサウンド、両方の要素を楽しめるおいしい時期だなと思っています。
それではアルバム毎に紹介したいと思います。
For Once In My Life(1968)
「For Once In My Life」から始まるこのアルバム。こちらの曲は説明不要の60年代の代表曲ですが、この曲に代表されるような良質なポップソングを最高にグルーヴィーな演奏で聴ける、そんな曲が満載のアルバムです。
作者クレジットにスティービーの名前も見られるものの、単独ではなくまだ共作という形。それでもスティービー節のようなものが既に感じられます。下に取り上げた曲も全てスティービーが共作者でクレジットされている曲。
このアルバムには、スティービーお得意のクラビネットを使ったファンキーなナンバーも含まれていますが、それ以上に素晴らしいのが、哀愁漂うメロディアスな楽曲。そんなタイプの曲をご紹介します。
「I’d Be A Fool Right Now」、目眩くコードが変わっていく展開はスティービーっぽさも感じられます。演奏は典型的なモータウンサウンドでありながら、スティービーが関わるとグッと洗練された雰囲気に。
このアルバムの中でも特に好きな「Ain’t No Lovin’」。フリーソウル的なコード進行といいましょうか。さりげなく入るコンガもとても効果的です。今の時代に聴いてもあまり古さを感じない曲。後半の歌の掛け合いが何度聴いてもグッときます。
そしてエレピから始まるイントロがなんとも切ない「Do I Love Her」。全体を漂う哀愁が何とも言えません。ジェームズ・ジェマーソンの歌うようなベースプレイも素晴らしい。
この頃のモータウン、全般に言えますが曲が短い、全て3分以内…。短くてもこの説得力、そして何度も聴きたくなります。
ここから先のアルバムも名曲揃いなのですが。続きは次回、取り上げたいと思います♪
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