見出し画像

25.京都亀岡のスタジアムを熊本に…

1.はじめに

2022.11.13 プレーオフ決定戦(京都サンガF.C.ーロアッソ熊本)が京都府亀岡市のサンガスタジアムbyKYOCERAにて行われました。この試合には熊本から約2,500人ものサポーターが現地に駆けつけ熱い声援を送りました。

残念ながら、J1昇格には僅かに届きませんでしたが、それでもロアッソ史上、最もJ1に近づいた試合であったと思います。そんな最高の舞台となったのが、京都府亀岡市の最新サッカースタジアム。

スタジアムの臨場感や交通アクセス面などに、好印象を持った熊本サポーターも多かったのでは無いでしょうか。私はスタジアムに入場し、ピッチが目に入った瞬間「すげぇ...」と心の声が漏れてしまいました。

試合の事については、様々な感情が蘇ってしまいますが、この経験を今後の新スタジアムへの機運に繋げていって欲しいと思いました。

今回は私の主観的な部分も含みますが、熊本の事情などとも照らし合わせて考えてみました。

サンガスタジアム...
熊本にそのまま持って帰りたかった…🫣w

赤く染められたビジタースタンド

2.サンガスタジアbyKYOSERA

①概要

□竣工は2020年。
□所有は京都府、運営は合同会社ビバ&サンガ。
□収容人数21,670人
□建設費は156億
□用地取得費20億(亀岡市)

建設費の内訳で詳細なものを探せ無かったのですが、固定資産税を免除するといった理由などもあり、やはり自治体所有とはなりますが、運営は民間となっています(PFI事業)。

京都らしさ溢れるデザインのスタジアム。
亀岡市のシンボルの一つに。

②立地

約9万人の都市。街なかの中心地(京都駅)から直線距離で約16km。熊本の場合、熊本市の中心地からだと大津町、宇城市辺りの距離感でしょうか。最寄駅のJR亀岡駅から西側には商業や居住地域が広がっていますが、スタジアムから北や東側には田園風景も見られました。

北九州や、建設中の長崎や広島、構想のある鹿児島や相模原など、近年は集客力向上や波及効果を狙って街なかスタジアムを目指す動きが増えています。

京都の場合は、長いスタジアム建設の議論の中で、紆余曲折があったようです。最終的には京都市内の候補地と競合する形でしたが、駅から近いという事などが優先され亀岡市に決定した流れの様です。

駅前にはスタジアム建設と同時期にマンションや広場も整備され、この日は広場でマルシェも行われていました。スタジアム観戦者だけで無く、地域の人も脚を運べる形は良い試みだなぁと感心しました。私もまずここで景気付けのビールをゲットしました🍺

かめきたサンガ広場

スタジアムを建設する上で、その土地を確保する事は重要で、街なかだとそれで精一杯。亀岡の様に周辺の土地を活用して、一体的な開発を進めるというスタジアムを通した街づくりも、街なかスタジアムでは中々できない取り組み方だと思います。街なかか、郊外かという2択ではなく、その間をとった立地であり、これは熊本でも可能性を残す案では無いでしょうか。

③観光名所

亀山城址の明智光秀公像。
"下克上の神様"として勝手に崇めて来ました。

明智光秀が築城した丹波亀山城址をはじめ、多くの史跡が残る街のようです。足利尊氏が鎌倉幕府討幕の旗揚げの地とした篠村八幡宮も亀岡市。観光も楽しみたいアウェイサポーターには喜ばれるのでは無いでしょうか。川下りの乗船場もスタジアムの側にありました。

川下りの乗船場

③アクセス

京都駅から快速で20分、普通で30分。街なかからは距離があるとはいえ、20分で京都駅へ行けるのは大きいですね。熊本の場合は快速が無いので、熊本駅から約20分の距離感となると、宇土や菊陽辺りになるでしょうか。

私の場合は、せっかくでしたので嵯峨嵐山駅でトロッコ列車に乗り換え、美しい紅葉の景色を楽しんだ後、スタジアム入りしました。アクセスのバリエーションが多い事も魅力的ですね。

トロッコ列車
トロッコ列車からの風景

ただ当日は18,000人を越える客入りであった事もあり、試合後の駅前は大混雑。これはやむなしとは思います。しかしそれでも、車両の多さや運行本数の多さなどもあってか、それ程待たず電車に乗り込む事ができました(20分程度)。駅やホームの規模、歩道や階段の幅なども混雑回避に重要であった点かも知れません。

試合後に観戦者で溢れる駅前

熊本の場合には、亀岡駅の規模の駅は多くはありません。また、京都の公共交通機関に比べ、熊本のJRでは輸送量に大きな期待はできないのではないでしょうか。これだけの人が押し寄せて、果たして安全に対処できるか…という視点も重要な気がします。ただでさえ、脆弱な交通網。JRが何かのきっかけで運休となれば、スタジアムに行けない・帰れないという事も出てくると思います。

なので熊本の場合に、新たなスタジアムがもし駅近であっても、完全にJRに依存する形は難しいと思います。駅近という立地に加えて、大型駐車場も周辺に整備するような、電車でも、自動車でも通えるハイブリッド型のアクセスが望ましいのでは、と個人には思います。ただ、それも街なかとなると駐車場のスペースの確保は十分にはできず、また渋滞に繋がる恐れもある為それも難しい…。

 また駅近のスタジアムですと、試合後に混雑する事を想定した構造の駅である必要もあると感じます。特にスタジアム利用者と、それ以外の利用者と改札口を分けるなど、動線の工夫が必要では無いかと感じます。その為既存の駅の場合は、そこを改修するぐらいの事が必要になると思います。あとは、以前から勝手に提案していますが、『菊陽町新駅周辺』の新スタジアムが望ましいのではと、亀岡のスタジアムを訪れて改めて感じました。この地であれば前述したように駐車場の設置も可能ではと感じます。スタジアムを想定した駅の建設も可能かと思います。またもし、現スタジアムのある運動公園からパークアンドバスライドが実現できれば、今の立地に不満がない人にとっても少なからず理解をえられると思いますし、その輸送適した距離感だとも思います。

ただ立地については、街なかだろうが、郊外だろうが活かすも殺すも工夫次第だと思います。実現できるかどうかは、自治体の本気度にもよると思います。熊本市内から車や電車で20〜30分圏内であれば許容範囲ではと思いますし、早期に実現できる形で様々な候補地が検討されて欲しいと思います。

④スタジアムの構造

迫り出した屋根。手が届きそうなピッチ。

サンガスタジアムは、ピッチまでなんと7.5m!(えがお健康スタジアムは30〜40m)。選手達の激しい攻防の迫力がより伝わりますし、自分の声援が選手に届く気がして、応援にもより熱が入りました

また屋根は迫り出していて、ほとんどの席はポンチョを使用せずに雨の中観戦できていたと思います。何より応援の声、ハリセンの音が爆音に変わり響き渡る感覚は今でも耳に残っています。

そして、鳥栖や北九州、福岡のサッカースタジアムといったスタンドが分離するような形状とは異なり、外の世界と仕切られた箱型スタジアム。観客席ではほとんど風を感じなかったので、それ程寒さを感じず快適に観戦する事ができました。芝の養生の為に通気性や日当たりは重要ですが、この構造の場合は通気性を保つためのシステムには工夫が必要となります。もし芝の生育が悪ければ、5,000万円とも言われる張り替えが数年に一度必要となるなど、構造設計も含めコスト面には注意が必要となります。

ただ、視界に入るのは目の前のサッカーのみ。という劇場のような空間は、これまで見てきたサッカースタジアムとはまた異なり、臨場感をより感じる事ができました。

コンコースにはモニター。
座席からすぐに飲食店へ行ける。

ただ、あえて1つだけサンガスタジアムの仕様で気になった部分は、ビジター側の3階席(南側ホーム指定)。この試合ではビジター席が短時間で完売するような状況でした。逆にチケットの販売状況からはこのビジター側の3階席が埋まるのが最も遅かったと思います。例えば、関西圏などビジターサポーターの動員が期待できる場合は、この3階席もビジター側として解放されるのかも知れませんが、2階席、3階席が全て埋まる試合は、J1であろうとそれ程多くは無いのではないでしょうか。

4面が対称的な形状は、構造的な強さや美しさはあると思いますが、空席に繋がってはもったいない気もします。もちろん土地の活用方法にもよるとは思います。ただもし熊本でスタジアムが建設される場合は、長野Uスタジアムのように、ゴール裏のホーム側とビジター側の座席数の配分は検討されて欲しいと思います。

⑤複合施設

サンガスタジアムでは、保育園やボルダリング、バスケットコートなどの複合施設となっています。スタジアムの広さや立地を活かし、サッカー以外の活用方法にもしっかり取り組んだスタジアムだと思います。足湯も設置されていて、地域の人や観光客に喜ばれるポイントの1つかなと思います。スタジアムをその地域に活用してもらい、より身近な存在へと繋げる意味でも複合的な施設とする事には大変意義がある事だと思います。地域の理解の為にも重要ですね。単なる運動施設にとどまらずホスピタリティにも着目していく事は、今後のスタジアム建設においては必須となると思います。

3.おわりに

スタジアムを建設するにあたっては、収容人数の設定は重要なポイントの1つです。現在の熊本のスタジアムのように空席が目立ったり、アクセスに見合わない規模は避けるべきかと思います。現在のJ1基準は15,000人。ロアッソの集客状況からすれば、その規模でも良いかもしれません。ただ、アクセス面などの工夫次第では、熊本でも20,000人の動員は可能だと思いますし、それだけの動員に伴う経済効果を目指す事が地域貢献にも繋がると思います。そういう意味でも、サンガスタジアムの収容人数の規模感は熊本にとっても理想的なように思います。

そして、長い年月をかけ多くの壁を乗り越えて実現したサンガスタジアム。如何にして実現に漕ぎ着けたのか。亀岡のスタジアムや街づくりは、熊本でも参考にすべきでは無いでしょうか。

シーズン中は、スタジアム建設の議論も進みにくい部分があったとは思いますが、今季のロアッソ熊本の躍進は、J1昇格が遠い夢の話では無い事を証明してくれました。そして、終盤のホームゲームにて、20,000人にも及ぶ集客があり、大勢の観客による可能性と課題も浮き彫りとなりました。

シーズンオフにおいても、このチャンスを逃さず、新スタジアムの機運に繋げて行って欲しいと願います。

ロアッソ熊本には、"熊本を熱くする力がある"

最後まで読んで頂きありがとうございました🙇‍♂️

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?