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美男に美女にダリ~「白い恐怖」

久しぶりのヒッチコック作品。
最近の映画ではあまりこういう形容はポリコレ的にされなくなっているが、「美男美女」そろい踏みの作品である。もちろん、ストーリーも秀逸ではあるが。1945年公開「白い恐怖」

まずは美男たるグレゴリー・ペック。この時映画デビュー2年目の売り出し中のころ。まだ線が細い印象が残っているが、本作ではそれが危なっかしさの表出にうまくマッチしているようだ。

対する主演女優のイングリッド・バーグマンは当時30歳、前年「ガス燈」でアカデミー賞を受賞し、名実ともに世界一のスターの座にあった。
本作では恋もわからぬ冷徹な女性精神分析医が、ひとめぼれに陥って翻弄され行く様を見事に演じている。彼女にはこういうツンデレ役がよくマッチする。彼女は本作が初のヒッチコック作品。個人的には次作「汚名」の方が好きなのだが、ツンデレぶりは本作の方が存分に発揮されている。

また、バーグマンの恩師の役で出演しているマイケル・チェーホフは、かの文豪アントン・チェーホフの甥にあたる演出家だとか。実際にバーグマンのかつて演技指導をしていたという。

ストーリーの方は、ミステリー仕立てで最後にどんでん返しが待っていて、ここは後の「ダイヤルMを廻せ!」に通じるものがある。ただよくよく考えると、その畳み方がだいぶ急いだ感は否めないけれども。

とはいえ、途中の夢の場面では、サルバドール・ダリの演出も加わり、とても贅沢な仕上がりに感ぜられたことだろう。
ヒッチコックを代表する作品の一つに挙げられても全く遜色のない作品である。

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