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フィンランドで理想子ども数ゼロの人が急増:出生率低下の原因か

こんにちは、少子化研究者の茂木良平です。南デンマーク大学というところで、少子化を専門に研究しています。

毎週月曜日に少子化の現状をデータと研究知見を交えて紹介しています。

今回は近年急減している北欧の出生率について取り上げます。

北欧の出生率が急減し、特にフィンランドは日本と同じレベルにまで減少しているのですが、そのフィンランドに関する最新研究が出ました。 その論文を日本の事例と比較しながら紹介していきます。


北欧の出生率が急減

過去記事で、北欧の出生率が急減していることを紹介しました。

北欧はこれまで先進国の中でも比較的高い出生率を維持し、またジェンダー平等度合いが高く、社会福祉制度が整っていることから、「北欧モデル」と他の先進国の手本のように扱われてきました。それが北欧の出生率は2010年ころから急激に減少をはじめ、2022年には北欧の5か国の出生率が1.6を切り、中でもフィンランドの出生率は1.32と日本の出生率1.3(2021年)に迫っています。

その理由として、子供のいない(無子)人口の増加や第一子出生率の減少が主な要因であると複数の研究が示しています。

44歳以上の女性の無子割合をみてみると(図1)、日本は他先進国に比べて圧倒的に高い割合(約28%)ですが、フィンランドは3番目に高い値(約20%)となっています。(2位はスペイン)

図1:44歳以上の女性における無子割合
データソース:Human Fertility Database

先日、このフィンランドの出生率減少を理解するための一助となる論文が出ましたので、紹介します。

子どもを持ちたくない人が増えたフィンランド

目的:1970–1974年、1975–1979年、1980–1984年、1985–1989年と1990–1994年に生まれた人たちの理想子ども数を比較して、近年の出生率減少のメカニズムを理解する。

データ:
フィンランドのFamily Barometer surveys(2007、2008、2010、2014、2015、2018年に実施)。全部合わせたケース数は14667人。

Golovina et al. (2023).

主な結果をまとめると、

  • 最近生まれた人たちほど、理想子ども数が少ない。

  • この理想子ども数の減少は、特に現在子どもがいない人たちの理想子ども数が減少していることに起因。

  • 1975–1979年、1980–1984年に生まれ、現在子どもがいない男性のうち、理想子ども数が0人と答えた人は約5%だったのが、 1985–1989年、1990–1994年に生まれた男性では、約25%に増加。

  • 同様に女性でも、1980–1984年生まれは9%だったのが、1985–1989年、1990–1994年生まれは約22%まで増加。

  • こうした傾向には、学歴や年収といった他の要因も関係しているが、生まれ年による変化が一番大きかった。

今回の研究では、「なぜ、最近の生まれ年で、子どもがいない人の方が理想子ども数が少ないのか」に答えることはできておらず、今後の研究が待たれます。 また、今回の分析で見られた傾向は、25歳時点での理想子ども数です。なので、ライフコースを通じて理想子ども数が少ないのか、は今回の研究だけではわからないので注意が必要です。

日本はどうか?

では、日本はどうでしょうか?日本でも子どもを一人も持ちたくない人が増えているのでしょうか?

全く同じ条件の値ではないのですが、2つほど近いデータを紹介します。

図2は18~34歳の未婚者のうち、希望子ども数が0人の割合の推移を表します。希望子ども数が0人の割合は男女ともに増加しており、2021年調査では、18~34歳の未婚者のうち、11%(男性)、13%(女性)が希望子ども数を0人の答えています。

図2:18~34歳の未婚者のうち、希望子ども数が0人の割合
データソース:第16回出生動向基本調査結果の概要

25~29歳で子どもがいない人のうち(既婚、独身含む)、意図して無子を望んでいる人の割合は8.1%(1985~1990年生まれ)となっています。1962~1967年生まれの5.4%に比べて増加しているものの、フィンランドの値に比べるとまだ低い状態です。

図1で見た通り、日本の無子割合は他国に比べても圧倒的に高いです。が、意図して子どもを持ちたくない人の増加が無子割合を押し上げているというよりは、意図せずに無子になっている人が多いことが無子割合の高さの理由と言えそうです。

まとめ

  • フィンランドの出生率は急減しており、日本と同じレベルの出生率になっている。

  • その大きな要因は、子どものいない人口(無子)の増加と言われている。

  • 新しい研究によって、まだ子どもがいない男女ともに2割以上の人が理想子ども数を0人と答えている、と報告した。

  • つまり、フィンランドの出生率の減少は、意図して子どもを産まない人の増加が関係していそう。

  • 日本でも同様に、理想子ども数を0人と答える人は増加しているものの、まだ8%と少ない。他国と比べても高い無子割合は、意図したものではなさそう。

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