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自己紹介:職業としての研究者

「なにやら研究とやらをしてるらしい」

ということまでは、自分や妻の家族・友人はわかってくれているようですが、具体的にどんなことをしてるのか、についてはまだわかってない&僕もうまく説明できてないと思ってます。

初めて会う人にも、素直に「人口学者」や「研究者」、あるいは「大学で働いている」と言うと頭の上にはてなが浮かんでることが多々あります笑

そんなわけで、ここに「研究者ってどんな職業なのか」ということを自己紹介をかねて僕の事例で書こうと思います。


目的・目標はなに?

「雑誌に論文を掲載すること」を目指して日々研究してます。

雑誌といっても、本屋にある週刊誌とかビジネス誌ではなく、学術雑誌と呼ばれるものです。研究者の道に進む前は知らなかったんですが、そういう雑誌があるんです。

研究者でない方も一度は聞いたことがありそうなのはScienceやNatureでしょうか。朝の情報番組とかでも、「Science誌に掲載された研究によると〜」なんてたまにやってませんか?このScienceやNatureはいろいろなジャンルの研究を扱っている、いわば研究の総合雑誌です。他にも経済学、物理学、政治学など分野ごとに複数の学術雑誌があります。

こういった学術雑誌は年に数回刊行されていて(ScienceやNatureは週刊)、一回の出版に、複数の論文が掲載されます。

どうやったら論文は雑誌に載るの?

1.まずは、論文を自分の中で完成させる

論文を書くプロセスは、僕の分野の場合、

・他の研究者が書いた論文を読む(特定の問題に対して何がわかってて、わかっていないのかを把握する)
・データ分析する(僕は他の研究機関が調査したデータをダウンロードして使ってます)
・文章を書く

こういうテーマで論文を書こう!と思い立ってから論文が完成するまでだいたい早くて1年くらいでしょうか。

2.論文を希望する雑誌に投稿する

3.雑誌の審査に通る

学術雑誌に自分の書いた論文を載せるためには、査読と呼ばれる審査に通る必要があります。査読とは、その論文に関連するテーマを研究している数人の研究者がボランティアで審査する仕組みです。論文を出した人は誰が審査したか知らされず、審査する側は誰が論文を書いたかは知らされません。なので、偉い人だから審査に通りやすい、とかはなくて誰でも平等に審査されます。

審査の結果は、1)一発OK!、2)見込みありだけど、修正必要、3)ダメ、の3つあり、1)はほぼないのでだいたい2)か3)になります。2)も簡単な修正から、そこ変えると論文自体変わっちゃうのでは?という大きいものまであります。

この審査がほんとに長くて、だいたい1年くらいかかるんです、、

なので、論文を思いついてから雑誌に載るまでには早くて2年くらいかかります。もし、一つの雑誌に出して「ダメ!」と言われると他の雑誌に載るまで出し続けないといけないので、もっと時間がかかってしまうのです。

毎日何してる?

というわけで、僕ら研究者は雑誌掲載のために論文を雑誌に載せるための何かをしています。

一本論文を雑誌に載せたら、次の論文、というわけではなく、僕は複数の論文を同時並行して進めています。多分会社で働いている人も複数のプロジェクトを同時に進めてますよね。そんな感じです。

何の研究しているの?

少子化について研究しています。日本は世界的に「超低出生」国として有名で、少子化が社会的な問題になってます。

「どうして少子化になっているのか?」という問いに対してわかってきたことも多々あるのですが、まだ明らかにされてないことはそれ以上にあります。

少子化に影響する要因の中でも僕は、恋愛、同棲、結婚、第一子出生についてデータを用いて研究しています。

お金もらえるの?

結構驚かれるんですが、もらえます!笑

お金をもらう先は大きく分けて2つあり、

1.雇われてる研究機関から
大学や研究所など雇用関係にある研究機関からお給料をもらっている。大学の教授がイメージしやすいですかね。大学教授は大学生に授業を教えながら、自分の研究も進めているわけです。

2.研究費から
政府や自治体、あるいは財団等が有望な研究・研究者に対して、研究費を提供しています。例えば、日本なら日本学術振興会が提供している科学研究費補助金(通称、科研費)というのがあります。

どのくらいもらえるか、というのは結構気になるところだと思います。

僕は、PhD(博士課程後期)時代はスペイン政府からの研究費をいただいていて、年間約200万円くらい。ポスドク時代もスペイン政府からの研究費で約250万円くらいでした。ポスドク時代の年収はだいたいスペインの平均年収くらいですので、普通に良い生活ができました。

キャリアパス

研究者になるには、こんなキャリアパスが一般的です。

大学院修士課程(2年間)→大学院博士課程(3年間〜)→ポスドク(??年間)→

(大学ポスト)助教→准教授→教授
もしくは、
(研究所ポスト)研究員

もちろん、どこかのステップを飛ばしてしまう優秀な人もいるかと思いますが、だいたいこのようなステップを踏むのが一般的です。ちなみに僕はポスドクという段階です。

研究者のキャリアでしばしば問題になるのが、短期契約です。大学だと准教授になるまでずーっと短期契約を続けなくてはいけないのです。

ただこの短期契約に関しては、他の業種のフリーランスとか、クリエイター、スポーツ選手とかと同じなので、個人的にはあまり気にしていません。専門家、個人事業主(形態としては違うのですが)って将来の確固たる安定なんてないでしょ、と。ただ、研究者の問題は成功した先にある輝かしさみたいなのが少ないことかなと思ってます。

なんでいろんな国に住んでるの?

というわけで、准教授になるまでは短期契約なので一回ポストを得られてもまた職探しをしないといけないのです。さらにそもそも空いているポストも少ないので、仕事のある国に移動していかなければならず、さすらってます。そろそろ定住したいです〜。

簡単な経歴

2008年:埼玉県立浦和高校卒業
2013年:明治大学政治経済学部卒業
2013年:大学院に落ちる → 一年弱スタートアップ勤務
2014〜2016年:明治大学大学院修士課程
2016〜2017年:ドイツマックスプランク研究所・ローマサピエンサ大学で人口学リサーチサーティフィケート
2016〜2020年:バルセロナ自治大学博士課程
2020〜2021年:バルセロナ自治大学・人口学研究センター研究員
2021〜2022年:オックスフォード大学社会学部研究員
2022~2023年:南デンマーク大学人口学センター研究員
2023年~:南デンマーク大学人口学センター助教
2024年~:ポンペウ・ファブラ大学研究員

これから何がしたいか

1.自分の分野である人口学の研究者から認められる研究者になる。
2.企業や自治体とコラボし、少子化に対する社会の理解を深める。
3.学術雑誌ではなく、もっと一般的なメディアで人口学や少子化研究、自分の研究について紹介する機会を作る。

これについてはまた具体的に書こうと思ってます。何やら面白そうだな、と思ってくれた方は雑談でも歓迎なので、ぜひぜひ連絡ください。

【追記(2023年6月18日)】
僕の経歴や研究者という職業、人口学の内容について興味のある方はこちらもあわせてどうぞ

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