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#1-1 効果的なリフレクションはどのように起きるのか?【対談リフレクション】

みなさんこんにちは。MAWARUリフレクション事務局です。MARARUリフレクションでは、今回新しい試みとして「対談リフレクション」ということで、リフレクションの実践者と対談しながら、ざっくばらんにリフレクションを深めるイベントを企画しました。

以前より開催している全10回「リフレクションを対話的に再構成する~研究者と実践者でリフレクションを紡ぎなおす~」とは別の企画として行いますので、本企画の記事もお読みいただけると嬉しいです。

今回は第0回ということで、いつもお世話になっている溝上先生と事務局で2つの問いをテーマに対談をしましたので、その様子を1)概要、2)対談本編にてお届けします。

お忙しい方は概要だけでも、ご興味ある方はぜひ対談本編もご覧ください。

概要

本対談の概要は以下の通りです。

■ゲスト
溝上先生

■問いのテーマ
テーマ1:効果的なリフレクションはどのように起きるのか?(今回)
テーマ2:リフレクションに価値を感じる人はどのように感じるようになるのか?(次回)

■対談から見えてきた知見(今回分)

  • 効果的なリフレクションは感情を起点に発生する

  • 経験を広く振り返るのではなく、狭いエピソードで焦点化すると、感情が浮かび上がりやすい

  • 自分の夢・目標・主張などを持っていると、感情が生まれやすく、リフレクションも焦点化されやすい

  • 自分の人生を良くしていきたい!と思うことがリフレクションのエネルギーになる

  • 切実さもリフレクションのエネルギーになる

  • リフレクションには「差分」が大切である。差分に焦点をあわせるような問いが、探究学習の本質的な問いとなり得る

  • 長期的な体験の場合は、途中途中で中間振り返りをすると効果的である

  • 効果的なリフレクションには、本人の気質も関係していそうである

対談本編

効果的なリフレクションはどのように起こるのか?

中島)
溝上さんから、今回深めたい問いを二つ頂きました。 一つが、効果的なリフレクションってどのように起きるのか? あともう一つは、リフレクションに価値を感じる人はどのように感じるようになるのか?

今回は効果的なリフレクションはどういうふうに起きるのか?みたいなのをまずは、一つ軸においてやっていってみましょうか。溝上先生、この疑問が生まれるきっかけになった「リフレクションが生徒によって全然違った」みたいなところエピソードをお話頂けますか?

溝上)
はい、昨年海外に学校の生徒たちと行ってきたのですが、私たちが普段当たり前に過ごしていることがかなりひっくり返されることがたくさんありました。例えば、教室での過ごし方とかもよく言われている通りジュースとかご飯食べながらみたいな授業を受けていて 、また先生たちもジュース飲んだりとかしてるし、そこで授業を受けている子たちも 20人ぐらいで授業を受けていて、座り方とかも、もう多分日本だったらとんでもないというか・・。私たちぐらいの時だと正座させられるような感じの座り方とか、それこそ音楽聴きながら授業を受けたりしてるんですけど・・。

でも、課題に向き合う時とかはすごい真剣に向き合ったりディスカッションしたりして、子どもたちの言葉で言うと、自分のために勉強しているっていう感じがすごい強いっていうところがありました。

そういうところに投げ込まれた時に、高校生としてもすごい感じることがあったみたいで・・すごい衝撃を受けていました。

その体験と自分自身の今後の将来みたいなのを結びつけて、 話をしてくれる子もいました。一方で、リフレクションに差異もあるなっていうことがありました。

私としては、まず、全然違うところ投げ込まれるっていうのは、すごいリフレクションが効果的に働きやすいというか、そのようなことは、知識としては持ってたんですけど、本当にすごい体験だったなと・・・。私自身も体験についてすごい振り返ったり、日本といろいろ比較したりとか頭がぐるぐる回転してるんですけど、体験を上手く振り返ったり、そうでなかったりという場合に、どのような違いがあるのかな?とか、そこらへんをうまく回すにはどうしたらいいのかなっていうのがあります。

文章の得手不得手もあるかもしれないんですけど、感想文をA4一枚でいいよって言ったのに、4枚とか書いてきたりとかする子もいて、この差ってなんだろうみたいな感じで、そこがちょっと引っかかったというか、そんな感じです。

中島)
どうですか?山下さん。小学生と一緒な気がしますよね。

山下)
そうですね 。僕自身が最初思ったのは本当に、溝上さんが言われているように圧倒的な経験というのが多分リフレクションには、効果的であるとは思いますね。これは、多分感情がすごく動いてるからということだと思います。

もう一つは、僕自身、思うのは問いと一緒なんですけど、比較対象があるというのがすごく壁になるということで差分が見えやすくなるというか・・。

多分振り返りが、そうでもなさそうな子っていうのは、自分で問いを埋められない子だと思うんですよね。せっかく差分があるのに、その差分を埋める問いがあれば、差分との問いでいろいろ深められるのに、問いが浮かんでないからこれと比べてこうだっていう感想で終わるんじゃないかなと思います。

僕は、だからリフレクションには壁が必要だと思ってるんですよね。差分を生ませるために、それは、キャリアであってもそうだし、目的であってもそうだし、あとは感情が揺れるっていうことが必要だとか、それは記憶に経験が感情と結びつくっていうところからそうなのかなっていうふうに思ってるんですけど、僕はそんなことを思いながら聞いてました。

中島)
問いって感情から生まれるとこも多分ありますよね。違うとこから生まれることもありますけど、感情から生まれる問いって、割と持続力が強いというか、なんかきますよね。

以前、若手研修をしたときに、そこに、ある方がいたんですね。その方は、感情がないんですね。いや、ないように見えました。なんか失敗しても、別に失敗してもいいし、それが普通だしみたいな・・・。

要は、そこから、次の改善の気概が見えないんですよね。まあ失敗するって、もう普通だから、なんか美味しいもの食べて切り替えて明日からまた普通にやろうって感じで。まあそれは確かに強みではあるんですけど、そこに何の感情も抱いてないのかなと思って・・。

私が新卒だった頃、新入社員研修で、私は他のメンバーと考え方が違った所があったんですよね。そこで、割とこうバトルしてですね(笑)チクショーと思って、なんでわかってくれないんだみたいな。そこで、自分の意見はどうやったらわかってもらえるのだろうか、相手が言ってることをどうやったら自分はちゃんと理解できるんだろうってことを感情にも揉まれながらすごく考えたんです。だから、先の若手社員の方の話とは、なんか全然違うなって思ったんです。

山下)
なんか、僕は感情に気づいてないんじゃないのかな?っていうのが一番思うんですよね。というのもまあこれは自分の原体験なんですけど・・。コロナ前ぐらいに、ずっと2年間ぐらい毎週日曜日の朝に教員の方々とWhat is your happiness?と自分に問い続けていたことがあります。

その振り返りの中で、最初、授業の中で、自分がトライしてる時には、やっぱ刺激が起きやすいんですけど、なんか普通に自分の中で試行錯誤していない時ってやっぱり、そこに気づきにくいっていうか・・。

でも続けていく中で、1日の振り返りを細かくみていき、例えば皿洗ってる時とかでもそこに焦点を当てていくと、やっぱりそこに感情は動いていることに気づいたんですね。だからざっくりと考えすぎなんですよね。

だから、プロジェクトごとに見るとか、この皿洗いだけを考えるとか・・そこだけを見るっていうことにすると、焦点化されて、もう少し感情が浮かびあがりやすくなるなっていうのに気づいたんですよ。

だからなんかね。子供たちに、今日どうだった?って聞いて、「普通」と答えるみたいなリフレクションと一緒だと思うんですけど、つまり1日全部を捉えすぎてしまって、感情の浮き沈みに気づかなくて、そんな感じじゃないかなっていう風に思っています。

溝上)
非暴力コミュニケーションを勉強してた時に、その感情にすごい注目したり、自分のニーズがどういうところにあって、こんな感情が浮かんできてるんだろうみたいなことがありました。考えるトレーニングみたいなのをしてる時に、生徒にも同じようにしようとすると、何かこう、なんだろ、手応えがないっていうか・・いや、何もないですみたいな。なんか多分、生徒たちも普段から自分の感情に気づいたりとか表現するっていうのに、全然慣れてないというか。

そう考えると、確かに海外を見た時には、すごい主張を持ってる。主張を持ってるっていうか、自分をきちんと確立してるっていうと、なんかあれだけど自立してるっていうか、なんか相手に気遣うっていうか。思った以上に相手にも気遣ってるのをすごい感じて、それに比べて、日本人はなんかどっちかっていうと、なんかこう言わなくても分かるみたいな。

けど、向こうって「ありがとう」とかも、頻繁に言ったりとかするし、なんか言わなくても分かるってことではないのだろうな、というのを思いました。

中島)
なるほど。慣れてない。まあそうなんでしょうね。

あと、「自分がどうありたいか」みたいなところも少ない気がしますよね。目標を持ってもらうなり、どうあったら楽しいかとかって感じで・・

人気アーティストのYOASOBIの曲で、象徴的だなって思ってるのが、群青という曲で歌詞が

好きなものを好きっていうのは、怖いよね。でも、本当の自分はそこにいるよね。みたいな意味の部分があるんですよね。

好き!って思ってることを言っちゃえよ、大丈夫だよみたいな。

これ、さっきの海外の高校生は自分の主張をしっかり言う、という話と近いところがあるのかもしれないですね。

溝上)
そう思いますね。気質の問題もあるんでしょうね。

割と大事なのは、良くしていきたいだとか、コントロール感だとか。人生って言ったらちょっと大きいですけど、改善志向って言ったらスキルっぽいけど、そういうのあるんじゃないですかね。良くしていきたいみたいな・・。

ちょっとしたことでも、ハマってるときは、少しでも良くしていきたいみたいなのが、多分強くて、アルバイトで皿洗いしてるときとかも、どうやったら効率よくいけるかみたいなのを常に考えてた気がするし。

どうしたら、水を少なく洗えるかみたいな。皿をどの角度で洗うといいかとか、なんかそれ、自分の特性なのか、それともこれを他の人もやった方がいいのかちょっとそこら辺は、ちょっと判断がつかないんですけど。

中島)
でも効率をよくするためのゲームですもんね。そういう効率化のゲームって、楽しいじゃないですか。

誰に言うわけでもないし、誰か褒めてくれるわけでもないけど、なんかちょっと嬉しいみたいな。めっちゃ早く皿洗えたぜみたいな。なんかそういう感じで。

最近、タイムパフォーマンスとかすごく言うじゃないですか。コスパ、タイパって。

タイパって効率化のゲームの極みだと思うんですけど。それなのにそういう効率化、良くしようとしていこうってことを人生に対しては思わないのですかね。リフレクションって、人生のタイパをどう良くしていこうかって話だと思うんですけど。

溝上)
なんかまずは、そのエネルギーっていうのがあるんですかね。感情を引き出すエネルギーが足りていないんじゃないか。感情はすごく大事な気がします。

山下)
この生徒たちは、この海外に行く機会に対して、自分で手を挙げて参加しているんですか?

溝上)
そうです。自分で行きたいって、そこから選抜をされて選ばれています。
特に3年生は受験があるのに、それでも来てる子たちなので、かなり思いをもって多分来てるっていう、将来こうありたいんだっていうのが結構あるなって・・そこはあるかもしれないです。受験とかに影響があるかもしれないけど、それでもこの経験は自分にとってものすごい価値があることだから参加しなければって言って参加してるんですよね。

ありきたりな言葉で言うと、夢があるみたいな感じですね。夢や目標がある。そこは一つあるかもしれないですね。

夢、目標だったりとか、あと逆に現状から抜け出すっていうのが、結構切実さのエネルギーになるかなと思ってて。

中島)
あとキーワードはやっぱり差分ですよね。切実さのエネルギーって、自分の理想、夢と、今の現実の状態との差、それを認識して出てくるような気もします。そういう「どうしたらいいんだ!?」みたいなところがまずエネルギーとしてある。あと大事なのはその差分を埋める問いがあることですね。その差分を埋める問いっていうのはね、山下さんも言ってましたけど、すごく大事ですよね。

山下)
なので、そこが多分リフレクションカードの問いじゃないですかね。探究で言うと、本質的な問いじゃないですかね。そこの壁になる差分を生み出すために、そこの間の問いをどれだけ子供たちが生み出せるか。っていうことが探究が多分加速することだと思うんですけど・・。

あとはそこに感情の機微に気づいてないことで、例えば、もっと釣れそうなところがいっぱいあるのに、なんか違うところを釣ってるみたいな・・こともありますね。

なんだろう、さっき言ったその焦点の合わせ方じゃないですけど、これは多分、技術的なことになると思うんだけど、氷に固められた海に穴掘ってそこからなんか釣るじゃないですか。ああいうのと一緒のように、大きな海原に適当に餌を投げても釣れないみたいなのと一緒で、ここの釣れるポイントで釣るぞっていうようなところで、考え出すところはすごく僕は大事なような気がする。

だからそれを教員が、リフレクションさせる時に関しては設定したりするんですけど、でも、そこを一日っていうことで長時間で設定したりとかすると、ポイントを絞るのは多分難しいと思うし。

中島)
そういう意味では溝上さんが、海外で生徒たちに、どう問いかけしたのかっていうのが気になってきますね。子どもたちが焦点を合わせる問いかけだったのか?みたいな。

溝上)
振り返りを書く時にはかなり考えました。例えばありきたりな感じであるんですけど、何もないと多分難しいかなと思って・・まずはやっぱり感情が大事だと思ったので、ホストファミリーとの一番の思い出は?みたいなところで、ちょっと感情を触って、次に分かったことは?気づいたことは何ですか?印象的だった具体的な経験は何ですか?あと嬉しかったことや困ったことありましたか?派遣事業は今後の学校生活でその後の卒業後どのような影響を与えそうですか?という問いでしょうか。

最後に後輩たちにメッセージみたいな。そういう感じの問いかけをしてました。

中島)
最終日までの途中の日程で振り返りはあったんですか?

溝上)
最後の振り返りレポートみたいなやつで書いてもらったやつで、日程としては1週間行っていました。

中島)
なるほど、最後だけで話すのではなくて、中間日にみんなで話すような場が1回あるとかだけでも最後は、結構違った振り返りになったかもしれないですね。

溝上)
確かに。実際やったことは、最後に感想を書いてもらった上で私がインタビューしてもう1回問いかけしながら、ちょっと修正したりとかこの子が気づいてないところをもう1回書いてもらったらいいなと思ってもう1回聞き出したりとかしながら修正加えていったので、中間振り返りのような活動があってもより良かったかもしれないですね。

同じ経験でも振り返りに差異があるっていうのは、途中段階で気づかせるのはすごく効果的なやり方だと思いました。多分毎日すごい衝撃を受ける連続なので毎日やっても大丈夫な気がしました。

中島)
いやそうですね。多分、普通の国内旅行ぐらいだったらちょっと毎日は厳しいかもしれないけど、海外の大きな経験ではありだと思います。

山下)
あとこれはなんか僕自身も聞いてみたいんですけど、さっき、気質っていうことを言ってたから気質っていうのも多分振り返り方にも関係があるのかな・・というのは、同じ経験でも例えば、開放性が高い人がアメリカに行くことによってすごくそこが弾けたっていうところの部分っていうのは出てくるかもしれないですけど、開放性があまり高くない子にとっては、
溝上さんは、ストレッチゾーンっていう表現されてましたけど、かなり奥のパニックゾーンに行ってるような子だったら、そこが難しい部分かもしれないな。

だから気質ってすごく大事なのかなってなんかさっき聞いてて思いました。

溝上)
それはそうだと思います。もうやっぱりなんだろう。パフォーマンスが高い子たちとかは、ガンガン中に入って話したりとかしてるので、多分そこで得られる経験もできなかったということがあると思います。経験もまあ経験なんですけどでもなんか多分違うだろうなっていう気がします。

なんか本当にそこって大きいのかなって。感情ってやっぱり体とか心とつながってるから、体がそこで開放的になってるのか、萎縮してるかによって感情を感じられないというか・・・。
自分で感情をストップしてるっていうこともすごくあるんだろうなって思って。だからなんか本当に、気質によって経験って同じ経験させても違うんだろうなって。なんかこういうこと実験したいなと思いました。

(次回に続く)


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