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余計なことを言うな

タイトル通りの内容。

私は高齢者介護に21年携わっている。
現在は、とある部署の統括責任者と支援相談員と現場を兼務している。
この記事で、決して私や部署が他事業所とも比べてレベルが高いなどと言うつもりは毛頭ない。むしろ、まだまだ発展途上で頭を抱える毎日だ。だからこそ、早急な地域貢献の実現と将来の生き残りの準備に奔走している。

さて、この業界で21年、様々な良いも悪いも含めた人材を1700人以上目にして来た。そんな中『こすからい』に分類される数百人の内の1人の介護士のエピソード。

 おやつ後の歩行訓練の時間である。介護士Aは利用者B氏の歩行器を使用した歩行訓練の見守り介助をしていた。訓練中、職員トイレの近辺で、利用者B氏は「木の椅子に座り替えてるから自由に動かれへんわ」と、いつものように笑いながらの愚痴を介護士Aにこぼされていた。私は職員トイレを使用しており、会話が鮮明に聴こえていた。それに対してAは

「施設によってやり方が
 全然違うからなぁ。
 動ける人は動いてもらった方が
 いいと私は思うんやけどなぁ」
と、発言する。

「動ける人は
 動いてもらったほうがいい」

そう言えば 周囲には
聞こえがいいかもしれない。

リハビリが必要なんだから動きたければ動けばいいと言う周囲の声が聞こえてきそうである。

しかし、結論から言うと
利用者B氏に対しては
不適切な発言である。

なぜなら、B氏は過去に頸椎損傷により手術。頚椎症性脊髄症の診断が出ている。また、黄色靱帯骨化症といい、脊髄の後ろにある黄色靱帯という靭帯が、骨になってだんだん大きくなり神経圧迫し、おもに足の麻痺を起こしている。これらにより、右肘の屈曲が困難、挙上は軽度可能も円背が進行し、両手指と足底部に痺れなどの運動障害が継続している。その上、加齢による筋力低下、食生活の乱れ、長年のリハビリでも筋力アップしなかった事実もあり、今後も回復や維持すら望めない。通常であれば、積極的なリハビリを医師は推奨するが、B氏のケースは特殊で、必要以上のリハビリと過度な動作は損傷箇所や神経系にダメージを与えてしまう状態なので、現状以上のリハビリはB氏にとってマイナスにしかならない。

また、B氏は自分の能力を過信するタイプ。「入院中に比べると治ってきている」と信じて止まない。動作が安定しているように見えるだけで、自宅での転倒も少なくなく、実情は在宅生活が継続できるか否か紙一重の状態である。転倒のリスクだけでなく、必要以上の動作の増加による疼痛・神経圧迫・麻痺の悪化が既に表出している。介護士Aの『ひとこと』で、本人の願望が暴走し、マイナスの顛末を招く可能性が極めて高い。
そもそもB氏が、在宅生活の継続を強く希望されている以上、携わるスタッフが、B氏が認めたがらない上記のリスクを回避してゆく事が重要な責務であるのは明確である。

はっきり言おう
『余計なことを言うな』

ろくに理解も把握もしていないのに、B氏の在宅生活ひマイナスな発言をするなど言語道断である。B氏の状態を多少なりとも理解し、そのリスクを多少なりとも考えれば、B氏に携わるスタッフとして

『私は動いたほうがいいけど』

などと、軽はずみで無責任な発言は出来ないはずである。もちろん介護士Aに対し、利用者B氏の状態説明は過去に実施済みであるので
「聞いてない」
「そんなつもりじゃない」
では通用しない。

もうひとつ問題がある。

介護士Aは
「自分は他のスタッフとは違う」
「自分だけは利用者の味方」

を演出したいタイプである。
経験年数だけ多く、介護士であれば経験していなければならない修羅場を自らの意思で避けてきた介護士によく見られる特徴でもある。
このタイプは、最初は大人しいが慣れてくると施設の規定や事業所の取り決めから外れた行動や、自己判断でトラブルを起こす事が多い。このタイプは数百人ほど見てきたが、まず倫理に反していることの自覚がない上に、自分に近いタイプと裏で結託し業務に支障をきたし、結果、利用者に迷惑がかかる。その状況を活用し、利用者に表面上の優しい言葉をかける。たとえその内容が規定に反していたとしても
利用者真理を利用し信頼を得ようとする。このような自作自演を嫌というほど目にして来た。

介護士Aの採用は、面接の時点で私は否定していたが、休職者が控えていた為、経営陣は私の反対を押し切り採用した。実際に、入社してから現在までの業務姿勢を総括し評価するまでもなく予想通りの結果である。

この介護士Aが撒き散らした撹乱は、これだけではなく、過去に責任者をやっていたとは思えない行動や言動が後をたたない。しかし、このような軽薄な介護士が、たとえ一度でも責任者として、のさばれる現在の介護業界の人材レベルの低さが浮き彫りになっていると言えなくもない。

さて、皆さんは
どのような印象を受けただろうか?

このように
利用者の理解や現状把握をおろそかにし、こすからい自作自演をする介護士が年月を追うごとに増加している。

これは人手不足なんかより
よっぽど深刻な問題である。

虐待などの事件に目が行きがちだが、この介護業界の最前線が成長しきれない要因の1つに、このような介護士が数えきれないほど散在し、介護保険導入前から現場に悪影響を及ぼしていることも否定できない事実である。

現在は超高齢化社会。
しかし、それを過ぎれば高齢者の絶対数は減少をたどる。すなわち施設同士の競争、意図せずとも潰し合いが始まる。経営者もバカではない。ならば、利用者の人生に携わるに相応しくない介護士は、いずれ淘汰される。有能な施設経営者は業界が衰退を始める10年も前から先を読み準備する。
『まだまだ先の話』と反省もせず現場を見出し続け、自己改善を先延ばしにしていると、いとも簡単に排除されてしまうだろう。

この介護業界で
日々奮闘する若者達が
「手本にしてはいけない」
「流されてはならない」
たくさんある例の中のひとつである。

有能な介護に携わる若者達が
『そうならない』事を祈る。

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