損な役回りはビジネスパーソンを強くする
たとえば、飲み会での立ち位置。
話したいことをババババッとしゃべる人。
それをうんうん頷きながら聴いてあげる人。
テンション上がりすぎて羽目を外す人。
ひたすら酒を飲んでいる人。
全体を俯瞰で見ている人。
そして、他の全員が退席した後に、会計や忘れ物のチェックなどをする人。
好きなポジションは人それぞれ。裏を返せば、嫌いなポジションも人それぞれである。
どのポジションに就きたいか、あるいは就きたくないかにかかわらず、否応なしに役を全うする人も多いだろう。飲み会の幹事がその最たる例だ。
好きでやっている人は別として、幹事は大変なポジションである。
出欠確認、日程調整、お店の予約、お金の管理、タイムキープなど、事細かな仕事を一挙に任される。
決して楽な役回りではない。むしろ損だと考える人が多いのではないだろうか。
僕も、大学時代や公務員時代、たくさん幹事をやってきた。
一番大変なのは、出欠確認だ。
「○○日までに出欠の連絡をください」と周知しても、全員が期日までに連絡をくれたためしがない。
催促してやっと返事が来るならまだマシで、未定のままいつまで経ってもはっきりしない人も多かった。
本当にスケジュールがタイトなのかもしれないが、それだったら欠席にしといてくれ!あと「行けたら行く」は欠席扱いだかんな!
◇
幹事もさることながら、特に新人の頃は、お酌(次の注文を伺う、という意味も含む)も重要な仕事だった。
グラスが残り30%くらいのタイミングで「次は何を飲みますか?」とお伺いを立てなければならない。
4人くらいの集まりならそうでもないが、これが数十人の大所帯となると一気に大変なミッションと化す。
鷹のように全体を見回し、減り気味のグラスを見つけたら一気に駆けつけ、次の注文を取る。それを繰り返すと、会場内を常にビュンビュン飛び回ることになるので、自席にいることはほとんどなかった。もはや店員である。
しかし、一見すると損な役回りに感じるこのミッションも、意外と楽しんでやっていたと思う。
あちこち走り回ってお酌をすることで、顔を覚えてもらえるのだ。それも好印象で。
人見知り(コミュ障ともいう)な僕は初対面の人と話すのが苦手なので、「お酌」という大義名分を掲げて飛び込んだのはとても良い方向に転じた。
不思議なもので、お酌を申し出て嫌な顔をする人はいない。
断るときも「大丈夫だよ」とていねいだったり「まだこんなに入ってるのに…しょうがないなぁ」と言って飲み干したりしてくれるので、人となりも垣間見える。
慣れてくると、最初から最後までずっとビールの人、3杯目くらいからハイボールに変える人、ちゃんぽんする人など、誰がどんな飲み方をするかがわかってくる。
なので、声のかけ方も「次もビールでいいですか?」や「そろそろハイボールですか?」といったクローズドクエスチョンになる。
また、お酌回りで地味に役に立ったのが、つまらない話やウザがらみしてくる人から逃げる口実ができる点だ。
逆も然りで、気になるあのコの隣にも、自然な流れで座ることができる。その後の展開までは保証されていないが。
◇
今は飲みニケーションが嫌厭される時代なのかもしれないが、酒や飲み会が苦手でも立ち回り次第でチャンスになり得る。
こういう経験は、飲み会に限らず、いろいろなビジネスシーンやプライベートでもきっと役に立つ。
人を観察する力、全体を把握する力、人の懐に入る力など、いろいろな力が培われる。
何が何でもやるべきだとは思わないが、ゲーム感覚で楽しむのも悪くないだろう。
あと、後輩を差し置いてやりすぎると、逆に叱られる(「なんで後輩にやらせないんだ」と言われる)ことがあるので、そこだけ要注意。
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