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天気図の世界

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天気図に関する話題を取り上げ、Pythonを利用した天気図の作成方法についても紹介します。気象にある程度知識があり、事例解析などに興味がある方や、天気図を作成したい方々を対象とし…
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#天気図

「天気図の世界」について

「天気図の世界」について

マガジン「天気図の世界」のコンテンツは、様々な種類の天気図の紹介やMetPyを利用した天気図作成コードの解説、豪雨などの事例解析などからなっています。コードにのみ関心がある方、事例解析にのみ関心がある方などもいらっしゃると思います。そこで、コンテンツの分類と各コンテンツの簡単な紹介をします。気になったコンテンツを読んでいただければ幸いです。今後も、コンテンツを増やしていきます。

紹介しているコー

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2024年9月、能登半島豪雨の教訓:予報の課題と防災

2024年9月、能登半島豪雨の教訓:予報の課題と防災

2024年9月、能登半島を襲った豪雨は、地域に深刻な被害をもたらしました。今回の豪雨の状況や天気図からどのような擾乱が関わっていたのでしょうか。また、このような豪雨の予測が難しい理由や日本海側の大雨のパターンについても触れ、今後の予報にどう活かしていくかを探ります。

この記事では、一般の方にも理解していただけるよう、専門用語や高度な天気図の説明を控えています。そのため、気象の知識をお持ちの方には

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JRA-3Qを利用した、香川県内海における記録的大雨(1976年9月11日)の解析-2

JRA-3Qを利用した、香川県内海における記録的大雨(1976年9月11日)の解析-2

前記事では、香川県小豆島で記録的な大雨となった1976年9月11日の事例について、雨量の観測値や当時の天気図を示して気象や災害の状況を確認しました。さらに気象庁第3次長期再解析(以下、JRA-3Qと略)を利用した等圧面天気図を作成し、この日の総観場を考察し、台風が屋久島付近の海上で停滞したこと、日本海西部から東北地方へのびる前線が強化し、また四国の南海上から四国付近に暖かく湿った空気が継続的に流れ

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日本海西部を南下した組織化した対流雲域とECMWFのGRIB2 (2/3)

日本海西部を南下した組織化した対流雲域とECMWFのGRIB2 (2/3)


500hPa気温と700hPa湿数の天気図

気象庁FAX図「FXFE5782」(上図)と同等な天気図、500hPa面の気温と700hPa面の湿数を示す天気図を作成しました(図7)。

この図から注目している対流雲との対応について、500hPaの小規模な気温の極小域(以下、寒気コアと称する)が23日3時に朝鮮半島北部にあって、南東へ進んでいます。日本海西部を通って、23日21時には福井県付近に達

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短時間の大雪事例と寒気質量について(1)

短時間の大雪事例と寒気質量について(1)

強い冬型の気圧配置により、日本海側の地方を中心に局地的に短時間で大雪となる場合があります。その要因は、日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)や、筋状の雲域の停滞、Tモードの雲域、小さな低気圧、地形性の降水であったり様々です。また、海水温や大気の安定度、下層収束などの影響も小さくありません。

ここでは、Iwasaki et al. (2014) により定義された寒気質量DPなどをJRA55から算出して、

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気象庁数値予報天気図のカラー版

気象庁数値予報天気図のカラー版

気象庁ホームページで公開されている、気象庁数値予報天気図には伝統的な主な予想天気図が5種類あります。
 ① 500hPa面高度・渦度の天気図
 ② 700hPa面湿数と500hPa面気温の天気図
 ③ 850hPa面気温・風と700hPa面鉛直流の天気図
 ④ 850hPa面相当温位・風の天気図
 ⑤ 地上気圧・風と降水量の天気図

これまで、①は記事「GSMの500hPa面天気図作成 1から3」

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大雪解説のために寒気の規模を定量化

大雪解説のために寒気の規模を定量化

今回は、500hPa面高度の南北方向時系列図を利用した、強い冬型の気圧配置による大雪への危機感を早期にわかりやすく伝えるための、寒気の規模の定量化について記事にします。

寒気の規模の定量化にあたって日本付近は冬になるとしばしば寒気が大陸から流れ込み、強い冬型の気圧配置が数日続きます。数年に一度程度は、日本海側の地方では道路に多量の雪が積もり、トラックや乗用車が立ち往生して大規模な車両滞留が発生す

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昭和39年7月山陰北陸豪雨(3)

昭和39年7月山陰北陸豪雨(3)

850hPa面のQベクトルの収束・発散総観規模擾乱による上昇気流の励起を確認するために、850hPa面のQベクトルの収束の天気図を作成しました(下図)。赤のシェードがQベクトルの収束域で上昇流が励起されるエリアと推定できます。

図の実線は等高度線を示しています。850hPa面の低気圧(地上の低気圧Aと対応)が北緯43度付近の大陸から日本海北部を東進し、北日本を通過しています。17日9時から18日

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700hPa面湿数、500hPa面気温の天気図(2)

700hPa面湿数、500hPa面気温の天気図(2)

500hPa面の気温について現象に伴う特徴的な500hPa面の気温の分布には、主に次のようなものがあるでしょう。
・トラフに伴うサーマルトラフ
・発達した低気圧の前面のサーマルリッジ
・気団の縁や前線帯に伴う等温度線集中帯
・熱帯低気圧や台風の暖気核
・寒冷渦などの寒気コア
・太平洋高気圧に伴う暖かい領域

500hPa面気温場の把握対象としては、上記の項目に加えて、解説で利用される大雪の目安とな

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温位エマグラム

温位エマグラム

以前に、エマグラムのコードを紹介しました。2021年11月19日に宗谷地方で発生した暴風事例を検討している際に、温位や相当温位などの鉛直変化を確認したくなり、温位エマグラムのコードを作成しました。今回は、温位エマグラムの簡単な説明と、コードの紹介です。

エマグラムと温位エマグラム下に例として、同じ高層ゾンデ観測のエマグラムと温位エマグラムの図を示します。エマグラムでは温度と露点温度のプロファイル

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速報:2021年11月19日宗谷地方の暴風

速報:2021年11月19日宗谷地方の暴風

北海道宗谷地方では2021年11月19日午後に低気圧の影響により、宗谷岬で風速30メートルの猛烈な風を観測しました。複数の地点で最大風速と最大瞬間風速が11月の極値を更新しています。この暴風事例の速報をお伝えします。また、ヨーロッパで局地的な暴風災害をもたらす"sting jet"との類似性についても簡単に触れます。

なお、この記事に使用したデータや表・図は、明記していないものは気象庁ホームペー

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昭和39年7月山陰北陸豪雨(2)

昭和39年7月山陰北陸豪雨(2)

前回は、昭和39年7月山陰北陸豪雨の大雨の状況を確認し、地上前線解析から大雨の要因を考察しました。今回は、大気の静的安定度や南北断面図、ジェット気流に関連する上層発散に着目して大雨要因について検討します。

大気の静的安定度前回の地上前線解析から大雨時に金沢は前線の暖域内、松江では前線の近傍の暖域側でした。不安定性降水による大雨の可能性が考えられるため、大気の状態が不安定であったかを確認します。J

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JRA-55のデータを使ったエマグラム

JRA-55のデータを使ったエマグラム

再解析データ(JRA-55)からエマグラムを作図するコードのご紹介です。

JRA-55のエマグラム作成の動機昭和39年7月山陰北陸豪雨の事例解析を行なっています。JRA-55で作成した断面図を解析していると、ポイントのエマグラムを確認したくなりました。前線の遷移層の高度、暖域内の大気の安定度など断面図からも読み取れますが、エマグラムの方がより正確に読み取れ、これを参考にすることで断面図解析をより

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昭和39年7月山陰北陸豪雨(1)

昭和39年7月山陰北陸豪雨(1)

JRA-55を活用した、豪雨の事例解析です。3回に分けて掲載する予定です。

JRA-55を利用する上では、次のことを注意して解析することにしています。利用している格子点データの空間間隔は緯度・経度1.25度毎、時間間隔は6時間毎です。このためにメソスケールの現象を考察することは難しいため、総観場の気象状況中心の事例解析となります。メソスケール現象について考察する場合は、総観規模擾乱により生じる環

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