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紫、クラゲ、ゆらゆらと(恋模様2年1組)

出席番号1番 相田ナリヒト

 周りとは違う生き物かもしれないと気がついた時、僕はもう、壊れかけていたようだ。部屋では、紫色のライトに照らされたクラゲが、僕を嘲笑うかのように優雅に泳いでいる。狭い水槽の中にいるクラゲの方が、きっと僕よりも自由だ。

 二つのカテゴリーにあてはまる生き方を、僕は選ぶ事ができなかった。僕は知っている。人と違うものには、好奇の眼差しが向けられ、偽善の塊は僕を潰し、壊していく。笑えよ、笑えばいい。僕は未完成だと、心の奥底から覗いているその悪魔の顔で、思いっきり罵倒すればいい。僕は、向こうの世界でそれを受け止めてやるから。

 クラゲのように、僕はゆらゆらと漂って生きていきたかった。このまま、誰にも邪魔されず、誰にも必要とされず、そうやって彷徨っていく。紫色のライトに、優しく包まれる日を夢見ながら。

 眠りにつくことを、君はどう思うだろうか。軽蔑するかな。でも、心配しないで。目を覚ました時には、きっと僕は笑っているさ。きっとそこには、違う景色が広がっているはずなのだから。

 ただ、僕は、君の隣にいたかった。それだけなんだ。僕は、それだけを望んでいたはずなのに、何故だろう。欲が出た。ごめんね、困らせるつもりはないんだ。僕は、君といられるだけで幸せなのに。君といる時だけが、僕は僕であることを忘れられたのに。寂しくなんてないよ。嘘じゃない。君がいれば、僕はどうにだってなれると、そう思っていたのだから。

 僕は、負けたのかもしれないね。周りにも自分にも。でも、降参したつもりはないよ。ただね、叶わない想いに蓋をするのに、少し疲れただけなんだ。だから、僕は決めたんだ。大丈夫、君のせいじゃない。だから、泣かないで。僕は、君の笑っている顔が一番好きなんだ。

 もし、僕がカテゴリーにハマる生き方を選べたら、きっと幸せだったのかもしれないね。もっと素直に、君に気持ちを伝えることが出来たのかもしれない。
 生まれ変わることが許されるなら、僕はまた、君と同じ世界で息をしたい。君のそばで、君の吐息が聞こえる距離で、生きていたいんだ。こんなことを願う僕を、神様は許してくれるだろうか。

 ごめんね、こんな僕で。少し疲れただけなんだ。そう、ただ、それだけなんだ。だから、泣かないで笑ってよ。僕も、笑顔で眠りにつこうと思うから。あっちの世界は、きっと、ほら、僕の望んだ世界が広がっている。だから、もう泣かないで。

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