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伝統文化 ✕ DX 〜 これからの日本の伝統の未来【オンライン座談会】

「NewNormal時代」の伝統文化

新型コロナウイルスの蔓延で、これまで効率化の手段とされてきた「一極集中」や「密集」が不可能になり、世界全体が大変革を求められています。

分野によっては、テレワークなどの工夫で継続できている産業もありますが、その状態は長くは続きません。

なぜか?
それは、新たな時代「NewNormal(新しい社会常識)時代」が、すぐそこまで迫ってきているからです。

NewNormal(新しい社会常識)についてはこちらの記事をご参考ください。
新しい日常(New Normal)という言葉に何を込めたのか?(宮田裕章)

では、「New Normal(新しい 日常/社会常識)」時代で通用するビジネスを構築するにはどうすればいいのか?

今回は、一般社団法人伝統文化デジタル協議会の岡野博一氏と、一般社団法人日本デジタルトランスフォーメーション推進協会の森戸裕一氏の対談(5/16日開催)をレポートし、そのノウハウを探ります。

1) 一般社団法人伝統文化デジタル協議会とは。

森戸氏:伝統文化デジタル協議会はどんな経緯で作られた協議会なんですか

岡野氏:
そうですね、私は博多織の織元の5代台目で、今年で123年続いてるんですが、やっぱり伝統文化産業っていうのは斜陽産業で厳しいと言われています。
そんな中で、市場マーケットはどんどんどんのデジタル化が進んでいっている。その結果、伝統産業の人間がコミュニケーションが取りづらくなってきています。
だから、やっぱり、ちゃんとマーケットに向き合うためには、我々もちゃんとデジタルを実装しよう、ということではじめました。

なにがなんでも全部をデジタル化しなさい、ということではなくて、デジタル化した方がコミュニケーション密度当たりますよ、という感じですね。やっぱりデジタルって大事だなと。

それから「デジタルトランスフォーメーション」「DX」って、そんな怖い物じゃない。FAXができた時とか、電話ができた時も多分同じように、凄いなっていう感覚があったんだろうと思います。
ですから、まずは、技術の革新の延長線上にあるだけですよ、ということで楽しんでもらうということを目的としていますね。
もちろんその先にはそういうことの結果で今より力強くなっていくっていうのはあります。

2) 圧倒的な伝統文化を持つ日本、その理由とは。

森戸氏:伝統文化っていうものが遊休資産化してると思うんですよね。

岡野氏:
日本は、世界最古の国といわれています。歴史が続いているから、文化が蓄積されてきたんですね。
一方、中国とかもうその四千年の歴史があるんですが、直前政権を全否定していくので文化が断絶してるんですよね。
例えば、お抹茶っていうのが、今、日本文化のようになって中国で逆に日本の抹茶文化がブームになってるんですけど、そもそもは中国の宋の時代にできた文化なんです。
でも、それもやっぱり歴史が続かなかったから、文化として伝わらなかった。だから、伝統文化という長く続いてる文化コンテンツを持ってるのはやっぱ日本が圧倒的だと思いますね

3)「伝統」の条件とは?

森戸氏:「そもそも伝統の条件てなんでしょう」と質問が来ていますね。

岡野氏:
伝統は、「統べる」と書きますよね、つまり「続いていく」ということです。一方、「伝承」というのは、1のものを1のまま伝え続けること。
だから「伝統」というのは、その時代の価値観や思想と合わせながら、総合的に価値を保っている必要がありますね。

4)「伝統」という価値をマネタイズするには。

森戸氏:はい。それがマネタイズできてないという話状況になってますね。

岡野氏:
はい。そこで、デジタルトランスフォーメーションでうまく伝統をつないで、必要とされるところに届けていきましょうねということで、競技会が立ち上がりました。
世界市場と書いていますが、まず、工芸の技術を使ったアート作品っていうのは、需要があると思います。すでに現代アート市場には、例えば、ポーセリンアート(陶磁器)や織物、染物も非常に多いです。
アートは、資産としての価値が下がりにくいので、資産運用としての人気が出てきているのもあります。

あと、エルメスとかブルガリっていうのも、もともと職人集団ですから、あれも伝統工芸なんですよね。世界市場にブランディングして行って、今のラグジュアリーブランドっていう流れの中にいる。だから、そこの出口もあると思います。

もう一つはやっぱりベタですけど、お土産市場ですね。今ちょっと観光市場が冷えてますが、人口が流動的になって行った時に、メモリー、つまりこの場所でしか買えない、といったものも伝統工芸のその進むべき方向かなと思ってますね。

5)New Normal時代を生き抜くには?

森戸氏:
世の中のデジタル化、そしてDXで変化していく中で、
伝統が継続されるには、日用品とは違うビジネスモデルが必要になるでしょうね。

岡野氏:
はい、ビジネスモデルが変化いていく中で、価値のないものは無くなっていくでしょうね。だから、伝統文化というものをどう価値づけられるかだと思いますね。
それから特にデジタル市場の中に置くと、年齢とか物理的な距離感とかが、昔よりもどんどんボーダレスになってきていて、考え方に共感するから買うみたいな消費行動が起こっていると思うんですね

もうクラウドファンディングなんかまさにそうですね。その趣旨に賛同するので、といったことですね。「意味の共有化」ができますよね。
その意味の共有化のコンテンツのひとつとして伝統文化っていうものかポジションされて行かないといけないような気がしていますね

森戸氏:
そうですよね。だから、伝統の守り方として、世界中に博物館と美術館とかがあってそこにあの伝統工芸品とかそのままの状態で保存する、といった形での「伝承」の仕方ってのあるんでしょうけど、唯一無二のものをコレクションとして自分の方としておいてそれが高くなったら販売する、といったケースもそこに入ってくるってことですよね。

岡野氏:
入ってくると思いますよ。要は、日本にアートという言葉が入ってきたの、多分明治ぐらいだと思うんですね。それを美術と翻訳してきたんでしょうけど、美術と工芸ってじゃあ何が違うのか、と。

日本にも美術館とか工芸館とか博物館とか、いろんな呼び方があるんですが、そもそもすべて、人間がその創造性に基づいて作られたのもので、
森戸さんが言うように、やっぱりアート市場にどう入り込むかって非常に大事なことだと思うんですよね。

森戸氏:
ただ、市場での価値づけ、意味付けは、やっぱり今まで伝統工芸が狙っていたターゲットに対する意味づけ価値づけとちょっと違ってくるので、もうちょっと編集していかないといけないかなと。

岡野氏:
そうですね。
フランスとかは、フランスという国の価値づけを世界でやったんだと思っていて、何かフランス料理とかってすごそうに見えますよね。
国を差別するわけじゃないんですが、どのくらいその付加価値の差が出てくるかというと圧倒的に出てると思うんですよ。

森戸氏:
はい、それは多分フランスの国家戦略としても、多分そういう文化コンテンツを世界でお金に変えていくっていうことを考えたんだと思いますね。
日本は今までしてこなかったので、これからやるべきだと思います。

岡野氏:
はい。そこら辺のところを実際に考えていくっていうのも協議会の役割としてありますね。

6) リアルの小売の場は、デジタル空間でも再現できるのか。

森戸氏:
外出の自粛でリアルの空間での小売が難しくなっていますが、デジタル空間ではどうやって販売につなげていくのかなと。
まず知ってもらって、価値を認識してもらって、最終的には購入をする、というところまでのプロセスも、家の中で作ってかなきゃいけないわけじゃないですか。そうたときのそのブランディングとかですね。

岡野氏:
そうですね。デジタルというのは、マーケットにどう寄りそうか、お客様にどう寄りそうかということが大事だと思っていまして。

お客さんが心地よくそれで買えるのか、と言うことですね。
電話の方がいいと言うのであれば、電話がいいでしょうし、話すのが面倒だからメールがいいと言人もいるでしょう。その快適さっていうのは個人によって違うと思うんですよね。

デジタル空間にその快適さを求める人が増えているのは間違いないので、それにどう寄りそうかっていうことだと思うんですよね。
これは、顧客に対してですね。

新規に対しては、我々がやってることをちゃんとデジタル化するってどういうことですね。
デジタルの映像や文章に落とし込むとか、言語のマルチ化をするとか。デジタルのシステムに乗っかる材料をもっとかないといけない。

知ってもらいたいこととか、本物とはなんぞやみたいなものを世界の人たちに、できるだけ非言語でもわかりやすい素材をどれだけ作れるか、ですね。そうでないと、まず知ってもらえないですからね。
無関係と思っていた伝統文化が認識されるようにならないと失われてきますから、意味の共有を進める必要があるでしょうね。
デジタルの空間っていうのはそういうふうに意味を共有化して、人が少なくても探せる場所になるような気がします。

森戸氏:そうですね、また会わないと分からないとか、あの触らないとわからないものって伝わりにくいですからね。

岡野氏:
あと、オンラインってむしろ「マンツーマン」で、優遇されているような感じもしますよね。そうやって、デジタルにどう付加価値をつけていくかが鍵になってきますね。

同時に逆もあって、今度はリアルに合う場面っていうのも特別な場所にしていく必要がありますね。貸し切りにすれば、ウイルスの蔓延も防げるわけですから、貸し切りということによって価値をあげることもできる。
「意味」ある空間、「意味ある」時間にするために、人が介在すると言うのは、あり続けていいのではないかと思いますね。

7)オンラインでも信頼を担保できるブランドを構築するには。

森戸氏:
メイドインジャパンといいますが、オンラインにのせたときの、信頼の担保、と言うのが大切になってくると思います。それについてはどう考えていますか。

岡野氏:
はい。やはり、先祖たちが、日本のものは安心・安全・丁寧、といったこことを積み上げてきたんでしょう。
そういう神話がもう出来上がっているので、日本で作られたり日本人がやってるものってのは、そういうイメージが絶対くっついて行くと思うんです。それは、絶対にお金に変えられる価値なので、やっぱり、これをきちんと織り込んだビジネスを考えるべきだと思いますね。
そうして、NEWブランドを作っていくのがですね。

森戸氏:
そうですね、多分インフラビジネスはこれから西洋に追いつくのは難しいんじゃないかなと思うんですよね。

岡野氏:
そうそう、インフラ構築で西洋の人に追いつくのは難しいと思いますね。
でも一方で、すでにあるものを使いこなし、ブラッシュアップするのは日本人の得意分野ではないかと思っていて。

森戸氏:
はい、企業がアフターコロナ=アフターデジタルに生き残るには、インフラを構築し、先に整っていく国々のマーケットにどう流し込んでいくかが重要ということですね。
日本という一地方として「お取り寄せ」するのもありですね。

8)デジタルという黒船に、何を差し出すのか? 「わざわざ感」とは?

森戸氏:
デジタルを黒船の到来と表現することがありますが、開国を要求された時とき、日本は何を差し出すのか?何を喜んでくれる物のか?と考えていくと、やっぱり伝統産業なのかなと私は思います。

海外に行って、これすごいだろうって言えるもってそうそうあるものではないな、と。自動車というのも完全に世界に流通していて、海外も生産してますよ、ということになってしまうので。

ずっと切り落としていくと、実は、この「伝統」というずっと続いてるもの知っていますか、というのが一番意味があるのかなと考えてるんですけどね。

岡野氏:
そうですよね。
博多織というノウハウは他の場所でもできる可能性があるし、人工知能でもできるかもしれないので、デジタル化できるところはすると思います。
要はデジタル空間で可能なことは、どんどんシフトしていきます。
しかし、わざわざ人が織ることで「意味」ができ「価値」がずっと上がるんですね。

生産地も同じことで、隣町で作ってたらそれは効率いいけど、「いやいやそれが、福岡の博多っていうとこがあるらしいよ」と。
ある場所で作ったものをわざわざ取り寄せたというこの行為そのものに価値を持たせることができるかどうか、ですね。そのわざわざ感がすごく大事になってくるのではないかと思いますね。

どこでも同じことができるようになった今、その地の風土、気候があってこそできるもの=「場所」に縛られているものの価値が上がる、ということです。単なる「場所」出会ってもその「意味」を見出すことで価値が作れる。「意味」があるから、めんどくさいこともわざわざする、というふうにしていかないとですね。

9)ポスト・ラグジュアリーは、日本から。

森戸氏:
ITは機能価値だけだったのですが、DXは情緒価値とも相性がいいので、めんどくさくても楽しいことはやる、という使い分けが大切になってくるでしょうね。

岡野氏:
はい、これまでは、経済との相性が良い機能価値ばかりが評価されてきました。でも、デジタルによって、文化の文脈に載った豊かさの追求が生まれてくるのではないかなと。つまり「幸せ」ということをもっと大事にする社会になってくると思うんです。

森戸氏:
はい、文明>文化だったのが20世紀で、化学崇拝において代償にされてきたものに気がつき、豊さを追求していくのが21世紀だと思いますね。

岡野氏:
はい、文明と文化のバランスをこの100年間で人類が達成すると思いますね。大きな意味ではそれが私のやりたいことでもあります。
今はまだ、文明に寄ってるので、文化産業をもっと活発にして、文化的な価値の中で幸せになる人たちが増えていき、「儲からないよね」、が「文化でやっても儲かるよね」というの雰囲気をつくっていかないといけないのかなと思っていますね。

森戸氏:
そうですね。そのための世界ブランドを作っていかないとですね。
岡野さんとはもう十何年前くらいにお会いしましたが、その時から「エルメスができて俺ができないわけがない」っておっしゃっていましたが、みんな同じ人間ですからね。

岡野氏:
そうそう、私はこれからの時代、ラグジュアリーじゃないような気がしてるんですよ。ポスト・ラグジュアリーブランドの時代だと思うんです。で、それが日本から出るんじゃないかな、と。

日本の文化って面白くて、例えば、芸者さんっていうのがプロなんですけど、その前に「仕込みちゃん」っているんですよ。
プロだから金を払わない、とかではなくて、そのプロセスを共有化するというか。プロセスにも価値を感じるんですね。そこが、デジタルと相性がいいと思うんですよ。

森戸氏:
そうですね、クラウドファンディングとかでも、一緒に作っていきましょうというところに価値がありますからね。

といっているうちに、結局1時間しゃべっちゃいましたね。
岡野さん、今日はありがとうございました!

岡野氏:こちらこそありがとうございました。

まとめ

いかがだったでしょうか。
これからの日本を支えるのは、これまで斜陽産業と言われてきた、伝統文化産業なのかもしれません。

DXやアートなど、これまでになく柔軟に変化し、日本という国のブランディングともなりうる伝統文化の変革。これからも目が離せません。

次回は、通潤酒造の山下泰雄氏と森戸氏の「九州観光の今と日本酒販売の現状を語る」座談会をレポートします。

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