実体験17 200メートルのソーシャルディスタンス
コロナ禍で面会禁止。
一般病棟に移ってすぐ、看護師さんにお願いして、スマートフォンを家族に持ってきてもらった。
ICUにいる間、スマホは娘たちが管理していたようだ。
娘たち、、、
双子の娘たち、、、
社会人3年目の22歳。
スマホのロック画面の暗証番号は、以前から教えていた。
何も知らずにメッセージを送信する友人へ、事情を説明してくれていた。
娘たちが私と面会したのは、私が人工呼吸器を入れた後、眠っているのが最後だったようだ。
それから、面会できず、心のやり場をスマホの中におさめていたようだ。
毎日毎日メッセージを文字や動画にして私に送っていた。
それをベッドに横たわりながら少しずつ見た。
病室からは、朝日が見え、写真に撮って娘たちに送信した。
病室は、駐車場側にあった。
駐車場から、この病室も見える。
私の姿を見せられるかもしれない。
スマホで連絡をとり、娘の1人が仕事帰りに、自転車で1時間くらいかけて駐車場に来た。
暗くなった外に、自転車のランプがホタルの光のように灯って動いていた。
自転車のランプの上に人影があった。
娘だった。
私は窓辺でゆっくり大きく手を振った。
娘も大きく手を振り返した。
その距離は、200メートルくらいだっただろうか、、、、。
コロナ禍で会えないが、病室と駐車場のソーシャルディスタンス。
2メートルではなく、200メートルのソーシャルディスタンスだった。
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