おばあちゃんワーカー

日曜の昼間。嫁から電話だ。
「すみません、今朝からひよりが熱を出しちゃって明日は保育園を休ませようかと思うんです。もしお義母さんに予定がなければ頼めないかなと思って」
もちろん快諾した。


ひよりは私の孫娘、1歳になったばかり。
嫁が職場復帰をした春から保育園に通い始めた。
この3ヵ月で二度目の病気。息子もそうだったように、子供はよく熱を出すもんだ。
嫁は屈託のない子だ。
保育園に入る時に「大変な時はいつでも連絡よこしなさいね」という私の言葉を丸呑みして連絡をしてくる。

大いに結構。
息子も嫁もよくやっていると思うから私も協力してやりたいし、その体力も十分ある。

*


そして私は月曜日の朝に嫁からひよりを預かり、迎えが来るまで面倒をみた。
熱はすぐに下がったらしく、多少咳はしていたがぬいぐるみを掴んだり新聞を千切ったりして遊んだ。
テーブルのみかんを皮ごとかじったのには驚いた。

*

もう30年ほど前になる自分の育児を思い出す。
良い思い出ばかりを(しかも脚色して)残していても、大変だった記憶も色濃い。
息子はうちの旦那と比較にならないほど育児に参加していると思うが、それでも母親の育児負担は大きいもんだ。

*

そんなこんなでひよりも2歳になり、病気で休むことが減った。
必然的に私が看病や子守をすることも減ったある日、生協の宅配でサポートメイト募集のチラシが入ってきた。
簡単に言うと、生協の組合員同士で家事や育児をサポートしあうアルバイトのようなもので誰でも出来るらしい。
こんなおばあちゃんでも良いのかしらと思いながらも、説明会に参加してみたら、まあまあ、意外と、同世代もいるじゃない。
63歳にとっては52歳だって同世代よ。ふふふ。
自分のできることとサポート希望者の要望が合致するものだけ応えればいい。そのセッティングは事務局でやってくれる。
おばあちゃんだもの、気軽にやってみます、という気持ちで登録させてもらった。


実際ひよりの子守とほとんど変わらなかった。
サポート希望者のママさんパパさんがやって来て、留意点を伝えてくれて、面倒を見る。
子供たちも慣れるまでは泣いたり、警戒心むき出しでだんまりを決め込む子もいたりするが、ひとたびおもちゃに興味が向けば可愛らしい笑顔を見せてくれる。
お迎え時に親たちが御礼を言ってくれることもとても嬉しい。

私に向いている仕事だと自負している。

育児は一人ではできない。
今でこそ何を言われようと、何をしていようと腹も立たない存在になった旦那だが、息子が小さい頃は育児を手伝ってくれない不満をぶつけては険悪になることが多かった。
そんな風に一人で育児をしていると余計に息抜きがしたくなる、休みたくなる。でも一人でするしかない。一人でしたほうが早い。
そんなループで育児をしてきたものだから、同じ思いをしている人の手助けになりたい。
サポートメイトの仕事も、孫の子守もその気持ちでしている。

誰かの手を借りることに後ろめたさを感じなくていいと思う。時代が、同居の時代ではないのだから。
世の母親が自由に使う時間を提供できる、私にとっての嬉しい働き方。
この年齢だから出来る考え方、働き方を見つけた私は、今日も働き日和だ。

#はたらくを自由に

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?