夜の猫
静かな小さな自分の部屋が、
急に星空へと変わる。
ここは宇宙。
長い黒い猫が、宇宙を連れてきたのだ。
部屋の隅っこに座っている私に寄り添う。
宇宙は、どこが隅か分からないだろう。
地球は、どこが角か分からないだろう。
黒猫が天を延びる。
夜は拡がり続ける。
立ち上がり、
黒い街に足を踏み入れた私は
部屋の窓から抜け出して
闇の合間を縫って
その猫の赴く方へ
歩いていく。
その猫は、たまに振り返りながら
歩いていく。
その夜は特別なものだ。
その闇は特別なものだ。
あの猫がいなくなって、
誰もいない自分だけの世界に変わる。
寂しそうな小さな怪物が仲間になって。
小さな深い冒険が始まる。
「君は優しいから、きっと優しい冒険なのさ」
帰りたくないな。帰りたくないよ。
夜が支配するこの場所を
あなたの優しさで包み込んで。
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