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【鹿児島県】種子島 野田一成医師が語る離島医療~『限られた医療資源のなかで、自分でやれることを尽くす』〜◆Vol.2 #file5

種子島で総合診療医として診療を続ける野田先生。
今回は記者から医師への転身された経緯、ベトナムでの診療経験について伺いました。
これらの経験が現在関わっている離島医療、総合診療に生かされている様子が伝わります。

Vol.1は下記のリンクからご覧になれます↓
https://note.com/ritozin/n/n9b2d8b0e7835

記者も面白いけど、医者になったらどうなのかなと思った

----もともと報道記者をされていた野田先生が、医療の世界に転身したきっかけはあったのでしょうか。

記者は人の生活、人生、出来事などを取材するわけですが、第三者的に取材者でいるよりも、自分が何かをやっている側にいるほうが楽しめる性格だとわかりました。そう思い始め、しっくりこないなと思ったのがきっかけです。

医療問題にはもともと関心があって、医療裁判を取材した時、患者さんが納得いかずにきちんとした医療が受けられていない現状を実感しました。専門の壁の向こう側で、一般の人から見えないことが行われているのではないか、というネガティブイメージがありました。
そういう中で、記者も面白いけど、自分が医者になったらどうなのかなと思い始めました。そういう世界だからこそ自分が飛び込んで、自分なりに何かいいことやれたらいいなという気持ちでした。

----仕事を辞しての転身は、難しい決断だったのではないでしょうか。

最初は仕事を続けながら勉強しようと思いましたが、異動してしまったら絶対に受けられないと思いました。それで30歳少し手前くらいの時、人事異動の直前に『とにかく俺はやめる』と。結婚して家族もいましたが、当時30歳と若く、勢いもありました。

診察の会話の過程、いろんなことを聞き出すのは面白い

----当初は、医師としての将来像はどのように描いていましたか。

臓器別よりも、総合診療に携わりたいと思っていました。学生のときは救急にいきたいと思っていました。救急も含めた総合診療、全身を診る、いまのスタイルもそうなのですが、ずっとそれは崩していないです。全身を診るのが自分は楽しいです。

----総合診療のどういった側面に魅力を感じていますか。

その人の身体だけでなく、社会背景みたいなもの、この人がどうして病気になったのか、どういう家族構成でどういうことになっているからこんなに悪くなったか、とか。そういうのを垣間見ながら、考えて診療するのが自分にとっての魅力です。身体だけじゃなく、患者さんの社会背景まで全部見るのが、一つの医療の形だと思います。

----そのような視点は、ご自身の経歴と関係はありますか?

いろんなことを聞いて、知って、どうしたらいいかと考える。やっていることは実は記者とあまり変わらないのかなという気がします。もちろん病状は一番大事ですが、患者さんを支援する社会システムだとか、そういうことも含めて全部、考えながらやるのは面白いです。

あと記者をやっていたからかもしれませんが、診察の会話の過程、いろんなことを聞き出すっていうのは面白くもあり、得意でもあります。どのような仕事をされているのかとか、どのような家族構成なのかとか、それらをひっくるめて考える、そういうのは日常的に外来で、ベッドサイドで、やっています。

ベトナムでは医者と患者の垣根が低い

----先生はベトナムでも診療をご経験されています。

呼吸器の専門医資格を取ったのですが、専門性が高くなると「呼吸器以外みるな」という話になってきて、少し物足りないなという気持ちになりました。小さめの規模でなんでも診られる病院に行こうかなと思っていた時、知人から「ベトナムの総合病院が外国人を診るための専門の部署を作りたいと言っているんだけど、行かないか」と誘いを受けました。それを聞いた途端、勤めていた病院に「辞めます」と言って、ベトナムに行く準備をしました。

----ベトナムは日本の医師免許で診療行為ができるのですか。

ベトナム国から許可を得る必要があります。たとえば「この医者は、この病院で働くことが決まっているから、許可してほしい」といって申請するという流れです。勤務先の現地病院から国に申請があって、許可が出る、という流れ。また、ベトナムはベトナム語のカルテしか認めていないので、医療関係者の通訳者を探す必要があります。自分にマンツーマンにつく通訳者がいるのですが、たとえば英語を話せる看護師を見つける必要があります。

----ベトナムで働いて、日本との違いとして感じたことはありますか。

医者患者関係でいえば、非常に医者と患者の垣根が低いです。患者の医者に対する態度も、気軽ですね。「お前結婚しているのか」とかそんなことも言われます(笑)。医者は「なりたい職業」ではトップなのですが、医者だから威張っているというわけではないです。医師と看護師も完全に役割が分かれていて、医者の指示で看護師が動くという感じではない。それはやるから任せておけ、などと看護師が言ってくれます。

あと、一般的には、裕福でないときちんとした医療を受けられません。富裕層はいい病院に行くし、共産党の幹部には日本や韓国、タイに行ったりして受診したりする人もいます。地方では、医療としてのレベルは正直まだまだです。

----都心部の医療レベルはかなり高いのでしょうか。

ベトナムでは、アメリカとかヨーロッパに留学する医者が増えてきました。優秀な人は海外にいってどんどん勉強して、戻ってきて、自分の得意分野で活躍する印象です。

ベトナム人の医者の留学先として、日本はほとんど入っておらず、アジアなら圧倒的に韓国です。これは、日本人の医者はほとんど英語が話せないからです。ベトナム人の医師は韓国のほか、タイやシンガポールにいく人が多くて、「日本に行っても英語が通じない」と彼らは言います。タイでもシンガポールでも、医者は英語を話せるし、韓国人のドクターも多くは英語を話せる印象です。タイ、シンガポールに関しては、日本の医療レベルを凌駕している気がします。


次回は離島医療を志す人への、野田先生のメッセージについて伺います。

種子島観光協会のホームページです。

私たちの活動について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。


記事を書いた人

Joe Tsurumi   東海大学医学部医学科5年
愛知県名古屋市出身。主に事件担当の記者として7年の経験の後、再受験を経て医学部に入学。趣味は登山、釣り、野球、離島巡りなど。

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