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「臨床の砦」を読んで想いを馳せるコロナ禍と友人関係

夏川草介著「臨床の砦」読了。
ノンフィクションに近いストーリーで読んでて何度も苦しくなった。コロナ禍の恐怖と不安、緊急事態宣言が発令された頃のことは今でも当時の生活と共に鮮明に記憶に残っている。

小さな病院は命がけでコロナに立ち向った。

『神様のカルテ』著者、最新作!
感染症指定医療機関でコロナ禍の最前線に立ち続ける
現役医師が自らの経験を克明に綴った記録小説!

「対応が困難だから、患者を断りますか? 病棟が満床だから拒絶すべきですか? 残念ながら、現時点では当院以外に、コロナ患者を受け入れる準備が整っている病院はありません。筑摩野中央を除けば、この一帯にあるすべての病院が、コロナ患者と聞いただけで当院に送り込んでいるのが現実です。ここは、いくらでも代わりの病院がある大都市とは違うのです。当院が拒否すれば、患者に行き場はありません。それでも我々は拒否すべきだと思うのですか?」――本文より


医療従事者視点のコロナ禍

この物語はコロナ診療チームに従事する医師の視点で紡がれる。
医療チームも決して一枚岩ではなく、限界を迎える緊張感のある体制の中、様々な意見が噴出する。

印象に残ったシーン。
「我々が慌てていては家族も不安になる。いつもと同じように・・・いや、いつも以上に落ち着いて呼び入れてください」
「正解とは言えなくても、最善の道を選んだ」
「責任は『私』にある。その点を明確にしたうえで、今我々にできる対策を開始する」

使命の下、ここまで厳しい状況に耐えられるのか。
当時の医療体制もこのようなケースや場合によってはそれより厳しいものがあったと思うと、頭が下がる思いだ。

ところで、私がこのストーリーの中で一番力になり得る立場に近いのは、情報部の千早さんだ。特例で全員から賛同を得られる仕事じゃないとしても、寄り添えて役に立ち、自分も楽しいと思える仕事をしていきたいと思う。

友人関係への影響

コロナ禍で友人関係にも少なからず影響はあった。
価値観や考え方はそれぞれ異なり、実際に対面で会うことのハードルはコロナ前と比べて格段に高くなったように思う。

私自身は家庭を持ち、家族と同居しており、保育園の送迎など強制力を持って人と会う機会はあったが、それがなかったら仕事もフルリモートとなったところで対面で人と話す機会がなく、滅入っていた可能性が高い。

高校時代の友人とは「落ち着いたら…」と言ったままで、ここ数年メールだけのやり取りになっている。
親戚付き合いも少なくなった。

感染症に対する意識

コロナだけでなく、今はインフルエンザなど感染症も多様だ。

「発熱した」と言った時のピリッとした雰囲気。

風邪の可能性が高く受診は不要 (むしろ過度な受診は医療機関を圧迫する) と思っても、保育園や学校という集団生活を前に受診が必須となる無言の圧力。

家族で感染した時の、「もうこれでキリキリ隔離しなくて済む」と思ってしまう、矛盾した気持ち。

いずれも、思い悩み苦しんだ記憶として鮮明に残っており、その苦しみは現在進行形でもある。

ただ、基本的な感染対策はしたうえで、それでも限られた人生、楽しく笑って過ごしたいというのが嘘偽りざる気持ちだ。
そこはブレずにありたい。

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