見出し画像

空想ばかりしていた元いじめられっ子が物語を届けるシナリオライターになった話

きっかけは友人の一言


「お話を考えるのが好きなら脚本家になったら?」

私がシナリオライターを目指し始めたきっかけは、友人の一言でした。劇団員の彼女にとって「物語を考える身近な職業」が脚本家だったのだと思います。

私はもともと、工場で働くただの貧乏OLでした。今は副業でYouTubeのシナリオライターをしています。現実を忘れて没頭できる物語を、多くの人にお届けするのが、私の夢です。

子どもの頃、物語の世界が私の居場所でした。

学校ではいじめられ、家では両親が喧嘩をしていて、私が安心できる場所はどこにもありませんでした。

そんな私を支えてくれたのが、物語の存在です。

学校から帰り、2つ年上の兄が帰ってくるまでの時間が、当時の私にとって最も楽しい時間でした。
兄が買った漫画雑誌のページを、折り目がつかないように慎重にめくり、兄がクリアしたゲームを、ラスボス直前のセーブデータからプレイする日々。

クラスメイトが怖くて外に出られず、両親に本や漫画をねだる勇気もなかった私には、兄の持ち物やテレビ番組しか物語に触れる方法がありませんでした。

(来週はどうなるんだろう)
(主人公と仲間たちはどうやって出会って、ここまでたどり着いたんだろう)

目を閉じて空想していると、どこにいても楽しい気持ちになれました。

学校に友達がいなくても、家に居場所がなくても、私の頭の中にはいつだって、私のための、私だけの物語が広がっていて、私を守ってくれました。

私の過去を知った友人の一言で、私は昔の自分と同じような境遇の人たちに、物語を届けたいと思ったのです。

YouTubeシナリオとの出会い


脚本家を目指そうと決意した私は、シナリオセンターの通信基礎科を受講しました。本業の他に副業もしていたので時間はありませんでしたが、ギリギリまで時間をかけて基礎科を卒業。無事に本科に上がれました。

忙しくも充実した日々を過ごしていた私ですが、ある日、新型コロナウイルスが世界的に大流行して、副業ができなくなりました。

そこで私が目をつけたのが、在宅で働けて文章力がいかせるWebライターです。右も左もわからない私は、最初からスクールを受講。そこで、講師の先生におすすめされたのが「YouTubeシナリオライター」でした

シナリオライターとしての初仕事


興味を持った私は、まずはクラウドソーシングサイトで案件を探しました。しかし、めったにYouTubeを見ない私は知らない世界に戸惑うばかり。

行動力が自慢の私ですが、さすがに今回ばかりは躊躇しました。

物語を仕事にするのは、私の夢であり、人生の目標になっていたから。失敗したら、プロとして通じないって烙印を押されてしまったら、大切な道が閉ざされてしまう気がしたのです。

なかなか動き出せないでいる私の背中を押してくれたのは、先生の言葉でした。

「できるかどうかは、やってみてから考えればいい」

他の生徒に向けた言葉でしたが、私にも深く刺さりました。

(そうだ、やってみないとわからない。ダメだったところで、そこで終わってしまうわけじゃない)

勇気をもらった私は、とにかく挑戦してみようと行動に移しました。

「実績はありませんが、学んできたことを活かして誠心誠意取り組みます」

今思い返すと恥ずかしいですが、当時の私にはそれが精一杯の自己アピールでした。

「その熱意でぜひ、力を貸してください」と機会をくださったクライアントには、感謝しかありません。

しかし、いただいたマニュアルを見て、私はまたしても戸惑いました。詳しい内容は説明できませんが、まったく知らない分野のシナリオだったのです。

依頼を受けたからには、これはプロの仕事です。泣き言なんていえません。

(知らないなら調べればいいだけじゃない!)

自分に活を入れて、まずはリサーチを開始。ネットで検索するだけでなく、会社の休み時間や仕事終わりに、会社の近くにある図書館へ走って向かい、資料を読み漁りました。

電車の中でも参考動画を探して、とにかく勉強。

そうしてシナリオは完成したものの、これでいいのか不安でいっぱい。ドキドキしながらはじめてシナリオを提出しました。

そして、半日後にクライアントからメッセージが! 深呼吸して気持ちを落ち着かせてから、メッセージを開きました。

はじめてのフィードバック


「ちょっとイメージと違いますね」

出だしの文字を読んで、私は血の気が引いていくのを感じました。

(ダメだったの? つまらなかった? あんなに頑張ったのに)

震えながら続きを読んでいくと、どこがどうイメージと違うのか、どうしたらよくなるのか、クライアントが丁寧にアドバイスをくださっていました。

読み進めるうちに、だんだん思考がクリアになっていきます。

はじめてやることが、できないなんて当たり前。大切なのは、同じ失敗を繰り返さないこと。もともと、はじめからなんでもできるタイプじゃなかったのだから。

フィードバックをメモして、すぐに修正作業に取りかかりました。いただいたアドバイスと自分のシナリオを照らし合わせ、シナリオを修正。

祈るような気持ちで送信ボタンを押しました。

届いた返信を恐る恐る開くと「見違えるほど、よくなりましたね!」の文字が!

「ぜひ、これからもよろしくお願いします」と言っていただき、私ははじめての案件を獲得できたのです。


動画になった日


はじめての納品が完了してから、私は毎日会社の帰りにクライアントのチャンネルをチェックしていました。

満員電車に揺られて「まだかな、次かな」と思いながら、スマホで他の人が担当した動画を再生する日々。

提出する時よりも、ずっとドキドキしていました。
自分が書いたシナリオがはじめて動画になった日のことは、決して忘れません。

私が書いたシナリオが動画に表示されている。
声優さんが、私が書いたセリフを読み上げている。

今までは誰にも届かなかった私の物語が、だれかの目に、耳に、心に届いている。

その事実に胸が熱くなり、涙があふれてきました。

動画についたコメントは優しいものだけではありませんでした。でも、それだって、多くの人が形にしてくださったからこそ、いただけた感想です。

もっともっと、いい作品を届けたい。クライアントが求める作品を作り、視聴者が喜んでくれる作品作りに貢献したいと思った瞬間でした。

シナリオライターとして


私がシナリオライターの仕事をはじめて2年が経ちました。担当した動画の最高再生回数には70万回をこえたものもあります。

この2年間、必ずしも順風満帆だったとはいえません。環境が変わって戸惑ったり、新しい仕事に四苦八苦したり、体調を崩したり……多くの方に支えていただいたからこそ、今でもこの仕事を続けられています。

今後も疑問はクライアントと相談して一つひとつ解消し、クライアントが求める作品作りに貢献していきたいと思っています。

昔の私みたいに、居場所がなくて、自分の力ではどうにもできない状況にいるだれかが、一瞬でも現実を忘れて楽しめるような作品を作りたい

そのためにも、ひとりでも多くの人の目に触れる作品を作りたい。クライアントのチャンネルが、より多くの視聴者に届くように、私自身も成長していきたいと思っています。


この記事が参加している募集

#自己紹介

231,424件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?