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「公認心理師になりました」(小林鮎奈さん・その6)

りら子の部屋
ゲスト・小林鮎奈さん(その6)「公認心理師になりました」

♬るーるる、るるる、るーるるー♪。りら子の部屋です。

小林鮎奈さんをゲストにお招きしています。

精神科の看護師さんであり、最近、心理師にもなられた。そして、「精神疾患を持つ親に育てられた子ども」のお立場から、メディアなどでも発信されています。

前回までの記事は、こちら。

なぜ公認心理師にもなったのか

―公認心理師になられたじゃないですか。大歓迎です、若い優秀な人が来てくださるのは。心理士の仕事の特性かもしれないけど、心のある部分を焦点化するから、視野が狭くなりやすい職種だと思うの。そこに、異業種というか、いろいろな経験をした人が入ってくれるのは、歓迎すべきことと思うんです。だから嬉しいんです。でも、看護師さんとして働く人がなぜ心理士になったのか。そこに興味があるんですが。

あー。「りらの中のひと」さんは心理職だから、なぜそれをとったのって考えてくれるんでしょうけど。けっこう「勢い」と「たまたま」でやっちゃった(笑)から、理由はそこまで明確じゃないんです。

こういうものがあると知って、移行制度で大学院とか行かなくてもとれると分かって。私はそんなに勉強してきた人ではないから、大学院とかいくのは難しくてハードル高いなと思ったけれど、(移行制度なら)もしかしたら私もできるかも、っていうのと…。

最初から言うと、はじめは、ちょっとは興味あったけどそれほどでもなかったんです。で、一昨年かな、友達と夢を語り合ったのがきっかけで。「こどもぴあ」ではないんですけど同じ子どもの立場で、前の職場の人で、世の中こうだったらよかったのに、みんながもっと助けてくれよ、むかつくよねみたいな話から、こんな世界を作りたいみたいな話になって。こういうのが夢だよねっていうのを語り合ったのが楽しくて、終電まで語ってたんです。

夢を持って生きる心理士

―その世界が何だったのか、語ろうよ(笑)

結局一緒ですよね、優しい世界みたいな感覚。…偏見をなくしたいとか安心して絶望できる人生とか、生き辛さが糧になるとか、そういうようなこと、そういう場所。病院とかハードル高いけど、病院に行かなくてもメンタルがもう少し癒される場所があったらいいし、病院に行けない人が行かなくても助けてもらえる場所があったらいい、そういった場所を作りたい、とか。ゲストハウスだったりシェアハウスだったり、家に帰りたくなかったらそこに泊まれて、病院に行けない人がそこに来れて、セラピーを受けたり話ができたり、おいしいもの食べてふうっとなったり、そんな場所があったらいいのにな、とか。

―それなら「島」がいいなあ(笑)

そういうところってだいたい高いじゃないですか。お金がなくても行けるようなそんな場所を作りたいな、と思って。私も、人生で夢を持ったことなんてないし、夢を誰かと語り合った経験もないし、その(友達と話した)時間がすごい幸せだったんですよね。夢を持って生きるっていうのは素敵なんじゃないかと思って。その中で、それを形にするために同じ思いの人を集めるとか、自分たちのスキルをつけるとか考えているうちに、「公認心理師」っていうものがあるらしいよ、スキルになるし、そういうのを持っていたら人を集める時に安心感あるし、ってなって。それで「公認心理師受けてみる?うちらでも受けられるんじゃね?」って。じゃ来年受けようか、って。それで勢いで。

現任者講習を受けても面白かったから、これは精神科看護師は全員勉強した方がいいな、って思って。精神って、看護学校ではあんまり習わないんですよ。みんな手探りで看護やってるから、現任者講習受けただけでもすごくよかったな、と。

正直、すごく勉強したわけではなくて、ちょっと諦めてたし、コロナで試験日も延び延びだったから。今まで勉強してきたり周りにあったりしたものが役に立ったっていうのと、偶然がすごい重なって、友達も全然勉強しなかったんですけど、二人で受かったんですよ(笑)。

― おー!

私の中では、夢を持てたことが幸せだったし、公認心理師になって何か変わったわけではないんだけれど、何かできるかもしれないなって思えて。それをもうちょっと、心理士の勉強できていないから、勉強していこうかなと思っている。その友達と語った夢から始まったもので、友達と一緒に受かれたから、一緒にいつか、何かできなくても、そういうふうに思えたことを大切にしたいなと思う。どう生かしていくのかは模索段階だけど。

メリットもあればデメリットも

― ちょっと“きりっと”したことを言いますけど、精神科医療って、心理的なものを想定しなくても成り立ってしまう。与薬して体のケアして、それで良くなってしまうことも多い。でも心理面をこんなふうに考慮するとこんないいことがありますよ、っていうメリットはいくつもあるはずなんです。治療への動機づけであったりトラウマの理解とケアであったり。

やっぱりすごく助かりますよね。薬だけだったら、やっぱり無理やりな感じになるし、実際に助けにならない場合がいっぱいあるし。慢性期で働いているから、薬だけで何とかなるんだったらとっくに退院していた人たちがいっぱい、長期の入院になっているので。やっぱり患者さんからいろいろ言われて自分も困るし、いろんな知識を身につけられたから、自分が楽になれば相手も楽になると思うし、そういうところがやっぱり助かるなって思いますね。みんな(看護師たちは)そういうのを知ったらいいのに、って思う。

でも、そう思う部分もあれば、(逆もあり)難しいですよね。勉強すればするほどそうやって見ちゃうようになったりして。専門家としてというか、客観視してしまったり分析したりとか目的をもって聞くとか、そういうふうに相手と接してしまったりして、「この人こうだからこう思っているのかな」とか勝手に想像して。本当のことなんて分からないから、かえって本当のことを聞けなかったりとか。治療のために話しちゃったりもして、話したいと思ってることをちゃんと聞けているのかなとか、自分が聞きたいことに焦点当てて聞いちゃったりとか。ああ、なんか縛られるな、と。

― だとしたら、小林さんは看護師なので、看護師さんの自分が心理学のエッセンスを取り入れて仕事する、というその前提を崩さないことだよね。(この後なぜか、「りらの中のひと」が公認心理師試験で死ぬ思いをしたことなど話しているが、詳細は省略。本当に終わったと思ったんだこれが…)

「りらの中のひと」さんはもともと臨床心理士だったから、受からなきゃいけないっていうのはプレッシャーですよね。それは大変だろうな。私は、今回落ちてもいいかって。背負っているものがないから(笑)。

― 今後の健闘をお祈り申し上げます(笑)

いやいや(笑)。でもこういうのは運命だなって思う。その辺で死んでたかもしれないけど生きているのもよかったし、偶然出会ったものを大切にしたいなって思う。

注・公認心理師試験について。一定の基準を満たした現任者は、現任者講習会の受講により国家試験の受験資格を得られる場合があります。この措置は、期間限定のものです。詳細は各自ご確認ください。

(つづく)

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