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【本の感想】夢野久作の短編に惑溺

夢野久作の本は著作権がフリーとなり、青空文庫でも読めます。
ここでは、短編のなかで幻想、ファンタジー、そしてどこか暗い何かを感じるものを、取り上げます。読んでる間、その世界に惹き込まれます。

魅力的な夢野久作作品

では見ていきます。

『ルルとミミ』

立東舎
乙女の本棚シリーズより
こちらの本は2023/06/16発売
絵も美しい…


湖というものを介在させるとこうも美しくなるのでしょうか。
見えない湖底だからこそ、幻想を感じます。
水面の下はどうなっているのか、わからないからこそ想像力をかきたてられます。

夢野久作はそこを利用して美しく描きだしています。
しかも2人を繋げる花の鎖に月の光。
他の人がついても鳴らない鐘の音。
水は2人を清め、2人を分かち、また繋げるのです。
おそろしくも美しく。
読むだけで湖面を照らす月光を感じられます。

『お菓子の大舞踏会』

Kindle Unlimitedにあります

欲張ると大変になるのです。
主人公の五郎くんは、お菓子しか食べたくない。食事すらとりたくないわけです。
そんな五郎くんの元に小包が。
お菓子がぎっしり入っています。
全て平らげた吾郎くんが見た夢は…
楽しい夢のはずがいつしか悪夢に変わっていきます。
リズムが楽しく刻まれているのに、それが苦痛になっていく様は、滑稽で怖いのです。

さて五郎くんはどうなるでしょう。
出てくるお菓子の名前にも、不思議な品のある短編です。

『月蝕』

短編の詩(なんですかね)
最初視点は作者が月の様子を、気持ちを語ります。
歌舞伎で言ったら長唄のように。
そして月が何を嫌がっているのか、読者はわかるのです。
え?やはり陰ができてしまうのは嫌なんだ、と繊細な月や気持ちに寄り添った気持ちになった途端に。
裏切られます。月に。
月の独白が始まって、ちょっぴりそのあざとさを読む私の心のどこかに穴があきます。

『ドグラマグラ』以外にも、彼がうみだした文章と世界は、今の私にも沁み込んでいくものです。
まだまだ読んでいきたい作家です。

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