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女神の階段ーたった1分で読める1分小説ー

女神の階段を登れば、あらゆる望みが叶う。

太古の昔からそう言われていた。女神の階段とは、天まで続くほどの果てしなく長い階段だ。そこに女神が住む神殿があるらしい。

だが誰もその神殿を見たことがない。歴史上、女神の階段を登りきった人間はいないからだ。

男の夢は、女神に会うことだった。

彼の体力と頭脳は世界一であり、歴史上においても彼を超える人間はいないと賞賛された。

彼は準備に準備を重ね、女神の階段に挑んだ。登れども登れどもその果てが見えない。何度もくじけそうになったが、彼は自身を叱咤激励し、足を運び続けた。

そしてとうとう、階段を踏破した。

今にも死にそうなほどフラフラになりながら、彼は神殿にたどり着き、女神と対面した。女神は神々しく、直視できないほど美しかった。

女神が、鈴のような声を漏らした。
「よくぞ、ここまできた。褒美を与えてやろう」
「ありがとうございます」

では、と女神は一つ咳払いをすると、スッと口角を下げた。目の光と後光が消え、何か不気味な音楽が聞こえてきた。

なんだ、なんだ、と彼は仰天した。

おどろおどろしい口調で、女神が言った。
「これは私の知人から聞いた話なんですがね。仮にこの方をAさんとしときましょう。Aさんは看護師で、病院で夜勤をしてたんです……」

そこで彼は、気づいた。全員が思い違いをしていた。これは女神の階段ではない。

女神の怪談だ……。


↓7月11日発売です。冴えない文学青年・晴渡時生が、惚れた女性のためにタイムリープをするお話です。各話ごとに文豪の名作をモチーフにしています。惚れてふられる、令和の寅さんシリーズを目指しています。ぜひ読んでみてください。
コイモドリ 時をかける文学恋愛譚


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