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料金改定して更新日を迎えたいSaaSサービスのカスタマーサクセスが気にかけたいこと

こんにちは。またはこんばんは。
BtoB向け労務領域のヘルスケアSaaSのカスタマーサクセス邁進中のりんたろうです。

これは、勝手にバイブルにしている山田ひさのりさんの著書にあった「ヘルススコアの設計は解約したお客様を分析すること」という一文から、解約を申し出られたお客様へのヒアリング・その直前のお客様の記録から、解約の予兆を推測できないかと奮闘した活動記録です。

ベンチャーのサービスにおいて、売上や収益性の問題から、サービス内容、料金体系が大きく変わる事は起こりうるかと思います。
自分もこの数年でサービス内容、料金体系が変更になり、更新をきっかけに昔からご契約いただいているお客様に料金改定を申し出ることも複数ありました。
その結果、サービスや料金が上がっても使い続けてくれるお客様、解約になるお客様とたくさん出会ってきました。

この違いは何だろう、と疑問に思ったことが全ての始まりかもしれません。LTVの向上、というミッションで生まれたカスタマーサクセスだからこそ、解約という意思決定をされたお客様を理解することは必要だと感じていました。

おそらくこの活動記録の成果は、プロダクトによって当てはまらないプロダクトもあるのだろうと思いつつ、あるベンチャー企業の「BtoB」で「労務領域」の「ヘルスケア」のサービスの場合においての、サービス・料金改定によって継続・解約となる分岐点を見つけようとしたお話です。
全ての企業様に当てはまるわけではないと思います。

料金やサービス変更によって解約を予測したい、そんな同じような状況のカスタマーサクセスさんのヒントになればと思います。

結論:更新日の数ヶ月前通知。料金アップは上限がある

先に結論から言ってしまえば、料金改定の通知は更新日までに時間の猶予が必要で、料金のアップは現契約ベースに上限があること、でした。
具体的な数値は控えさせていただきますが、更新日を迎えて更新・解約となった企業をまとめると下記図となりました。

縦軸は更新日までの期間の長短、横軸は金額(ARR)の上がり幅の大小で、赤い点は解約、青い点は更新になった企業です。
ここから見えてくるものがありそうな図をしています。

発見1:料金アップは上限がある

わかりやすいところで言えば、図の右側です。
一定のラインから赤色=解約になっています。
このことから料金のアップには上限があり、上限ラインを超えるとお客様は解約という意思決定をすることがわかります。

発見2:更新日まで一定の猶予期間が必要である

次は散布図に引かれたラインをもとに期間を見てみます。
ラインを下回る企業は、ラインを上回る企業よりも解約になっている割合が高いことがわかりました。

このことから「更新日までに料金改定を行う場合は、期間が一定の期間が必要」との結論ではありますが、金額によってその期間は変動すると考えられます。
金額を高く提示するほどに更新日までの長い猶予期間が必要ということです。単発の低額のオプション契約であれば、お客様の稟議がすぐに通ってアップセルになったけど、毎年のリカーリングする契約やベースアップの契約は稟議がなかなか通らなかった、という事はありませんでしょうか?それに近い事象だと思っています。

更新までに余裕を持った対応など、何を当たり前のことを言っているんだと思われたかもしれません。

お客様には予算作成の時期があり、年間予算が決まっていること。

この当たり前を踏まえていないと「その条件なら契約更新はしません、他社サービスに移行します。」となってしまうのです。

発見3:お客様にとってのサクセスを満たせないなら解約となる

発見1〜2から、一定の更新日までの猶予期間・金額を適切に守っていても、解約になる場合がありました。
これらの企業様にヒアリングを行ったところ、「契約当初に決め手となった機能が利用できなくなること」が解約の理由でした。

当然と言えば当然なのですが、できることができなくなった時、お客様は解約します。
この解約を防ぐには、機能を停止する変わりのオペレーション案や代替機能を提案できることが必要でした。代替機能で更新に至っている企業様もあることから機能が利用できなくなった=即解約につながるわけではないようです。

お客様が課題と認識していることを正しく把握し、何を提供したら解決できるのかを考えて提案することがカスタマー「サクセス」ではないのでしょうか。
単純に「お客様は〇〇の業務が時間を取られている」と理解するのではなく「〇〇の業務のXXの作業が△△の理由で時間がかかってしまう」と解像度を高く理解することで、代替機能でも課題が解決できると感じてもらうことが大事との学びました。

サービスの使い方を教えるだけではカスタマーサポート、サービスを使うお客様の業務の前後背景・文脈を理解して提案することが能動的なカスタマーサクセスである、そんな気がします。
だからこそ、労務系のSaaSでは労務経験者が、採用系のSaaSでは人材業界企業出身者や人事経験者が活躍しているのかもしれません。

できるならば料金を改定した状態で更新をいただきたい場合においては、自社のサービスの更新日までの猶予と、金額をどのくらいまで上げて良いのかから考えられる、更新してくれるセーフゾーンを正しく理解することが必要という学びでした。

逆説的に考えれば、積極的にアップセルを狙う場合や新サービスの料金を設定・提供する場合にも使えると感じました。料金をいくらで設定して何日前に提案すれば、通りやすい提案になるのか、の思考にも使えるノウハウだなと思いましたので、戦略的なアップセルを試す際、新機能を提案する際には試してみたいと思います。

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