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【連続note小説】日向食堂 小日向真司28歳

あおいは文枝を自分の本当の母のように慕ってくれた。
文枝がパートに出ている時に、優子を連れて勝手にアパートに上がり込んで、文枝と歳之の夕食を作ってくれたりもした。
 
文枝はそんなあおいのことを心から愛した。
男二人の家族だったから、娘ができたことが嬉しくて仕方がなかった。
二人は本当の母娘のように仲が良かった。
 
歳之もあおいのことを姉のように慕っていた。
あおいが子育てに追われていることはわかっていたから、休みの日には優子を遊びに連れて行ってやった。
それであおいは束の間の休息を取ることができた。
 
ある日、真司があおいに聞いた。
「なんで、おれのお袋をあんなに大切にしてくれるんだ」
「野暮なこと聞くね。真司君が大切にしてるからじゃない」
「・・・・・」
 
そんな矢先、文枝が再び病に倒れた。
病院の診察を受け、末期の胃癌と診断された。
まだ約束した温泉に母を連れて行っていない。
担当の医師に泣きすがって、助けてくれと嘆願した。
“きっとよくなる”、神様がいるなら、苦労続きの人をこのまま死なせるはずがない。
真司は希望を捨てなかった。


▼関連エピソードはこちら

真司が生まれてから人生を全うするまでを連載小説として描いていきます。

<続く…>

<前回のお話はこちら>

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